◆長い経験もヘタすると、カキ殻になる
 役者の森繁久彌さんが、司馬遼太郎の「坂の上の雲」を読み、自著に書いている。
 「長い航海で、軍艦の底にへばりついたカキ殻やフジツボの殻を、ついたままにしておくと、水の抵抗で航行速度が落ちるという。だから、殻を叩き落してペンキを塗るという。
 人間の経験も一緒だな。経験は貴重だが、環境の変化をよそ目に過去の経験を押し通そうとすると、変化した環境の抵抗に遭う。捨てるべき経験と、生かす経験がある・・」
 ところでいま、「美肌一族」という化粧品がバカ売れという。一日で6万4千枚も売れたという報道もある。要するに顔面にシートマスクをかぶせ、しばらくじっとしているだけ。
 しかし「美肌一族」は、共通ブランドだから、入浴剤をはじめ内容は色々ある。
 ちなみにネット愛用族なら、「美肌一族」でご検索あれ。はじめて見た人なら、その包装デザインにびっくりする人が多いと思う。漫画ベルばらに出てきそうな、お姫様が主役なのだ。
 その主役たちのセリフを集めて、いくつか紹介してみよう。
★「そんな肌で私に勝てるとでもお思い?」★「ご存知?女の幸せはお肌に表れますのよ」★「そろそろ私に近づける頃かしら?」★「要らぬものなど燃やしておしまい!」(入浴剤)
 とにかく、過去の常識を完全に破壊した、「こんなデザインありかよ!」と言いたくなる。長い経験が邪魔した大手メーカーには、とても真似のできない商品企画だったようだ。


◆過去にこだわると、「現代」というバスにも乗り遅れる
では、“経験が前に出過ぎて、新しい環境に馴染めない人”とは、どんな人だろうか。
 1,新聞が変わると読みにくいから、同じ新聞しか読まない人。
 2,縄張り意識が強くて、他人が入ってくるのを嫌う人。
 3,過去の成功経験が、何事も発想の基準になる人。
 4,昔のことをよく覚えている割には、新しいことには関心が薄い。
 5,新しいことを学ぶより、過去の経験を押し通そうとする。
 6,人にモノを尋ねるのを嫌がる。
 7,過去の習慣を切り替えようとはしない。
 8,素直で意思が強いというより、頑固で意地が強い。
 9,活字情報は読むのが面倒くさい。
 10,話し手にはなるが、聞き手になるのはイヤ。
 世の中は変革を続けている。過去にこだわる人は、現代というバスにも乗り遅れるだろう。