◆“後ろ風が吹かなくなると、異論なき会社は傾き始める
 異論なき組織とは、つぎのような組織のことだ。
(1)経営トップの方針や政策に対して、「ハイ」と言う人間はいるが、「しかし・・」という異論や意見、あるいは提言をする者がいない組織。
(2)異論を唱える者がいると、トップから冷遇されるか、排斥される。

◆“異論”で強い会社になったホンダ
 異論といえば、象徴的なエピソードに、社長時代の本田宗一郎さんと、技術陣のリーダーだった久米是志(ただし)さんの、壮絶といってもいい対立が思い起こされる。
 本田さんは、ホンダのオートバイ一筋の枠を取り払い、いよいよ四輪車の開発に乗り出すとき、「空冷エンジンで、将来に残る物を作るんだ」という執念に燃えていた。
 ところが技術陣を代表して、「空冷では、会社を潰す大失敗を招く」といって、徹底して反対したのが、いま紹介した久米さんであった。
 ところがやがて、久米さんは本田技研の社長になった。
 久米の会社を思う情熱と決意、反対した久米を認め受け入れた本田さんの度量。
 リッカー(ミシン)という会社は、いまは存在しない。この会社が破綻したとき、ある経済誌は、「みんなで渡れば・・方式で、役員全員で会社を潰した」と揶揄したが、リッカーに久米のような人材は、いなかったということだ。
 何もリッカーだけではない。リッカーのような塵材(人材にあらず)の患部(幹部にあらず)は、いろんな会社に見ることができる。また、そういう会社の場合例外なく、幹部とはイエスマンが当たり前、という意識の持ち主がトップだから、なんともナンセンスの一語に尽きる。