●社長の牽引力こそ経営パワー
 竹には節(ふし)がある。だから、とても丈夫だ。
 何年か前に、初めて中国に行ったときびっくりしたことは、10階建のビルの建築の足場でさえ、すべて竹で組んであったことだ。それほど、竹は丈夫である。
 同じように、強い組織や、創業の歴史が古い老舗と言われる会社にも、節があるものだ。
 経営組織は、最初は〈SL型経営〉から始まる。経営者は、先頭の機関車である。機関車の強力な牽引力こそが第一の節で、これが〈SL型経営〉の時代である。
 しかし成長する経営は、先頭機関車だけが牽引する組織から、自力走行と牽引力も兼ね備えたモーターを備えた電車も組み込まれた、第二の節の〈電車型経営〉に変わる。
 さらに成長と拡大を続けると、全車両が機動力を有して浮上する第三の節により、〈リニア型〉へと組織内容を変えるものである。
 以上が、成長の節をバネにして成長発展する一般的な、組織変容のパターンである。
 たとえば、セコムという大きな警備会社がある。
 セコムの創業者飯田さんは、創業当時のことを、のちに語ったものである。
 「自分で机に向かい、定規を動かし、寝ずの作業に汗を流したものです。」と。
 パナソニックの前身、松下電器を創業した松下さんも、機関車として動いた。
 自分で現場でソケットを作り、自分でソケットを自転車で売り歩き、自分で納品をして、自分で請求書を書き、自分で集金に回った。
 人を使うといっても少人数で、軍隊でいえば、せいぜい一個分隊である。

●勉強しなければ、第二の節はできない
 ところが、組織を強化拡大させる力量のある経営者は、やがて自分の分身である、出先の営業所長や支店長を育て、組織の枝葉の発展リーダーとして、活躍させるものである。
 それに対し、SL型経営のまま、ちっとも前進できない経営者の場合、二つ目の成長の節づくりが、どうもうまくいかないで、〈SL型経営〉のまま、遅々として停滞している。
 そういう経営者の、最大原因の一つは、“人使い”にあるようだ。
 破綻した住宅会社での話しを聞いたことがある。
 社長がプレカット工場(材料の切削加工工場)を見て、ある問題点を発見した。社長はそばにいる社員に、その場で注意と指示をしている。社員の直属上司である課長抜きの指示だ。
 後で、課長をつんぼ桟敷に置いたままにしないよう、社長は別途に何か考えているだろうと思ったが、じつはそのままだったらしい。
 こんな調子で、組織のコミュニケーション(風通し)が滅茶苦茶だから、この会社の業務ではしょっちゅう、「自分はいった」、「おれは聞いていない」、「自分には何の連絡もない」、「伝えたはずだ」、「なぜ前もって言わないのか」・・というゴタゴタが、絶えないようであった。
 だから環境の追い風で、支店も営業所も何個所かはできたが、結果として、利益ある支店や営業所として機能せず、会社はとうとう破綻してしまった。
 つまり、個人商店の感覚でも許される〈SL型経営〉のまま、社長が、モノの言い方さえ勉強しないから、“第二の節”を作ることができなかったのである。
 なお最初から、「おれは生涯〈SL型経営〉だ」という信念派は、別である。