●生活スタイルを革新する人は、経営も革新する
 新商品の開発などの経営革新は、何も製造業だけに必要なのではない。
 販売業(卸、小売り)も、“十年一日のごとし”という惰性は、いずれ危機に見舞われる。
 販売業の場合、どんな売り方をするかを“業態”というが、まず自社の業態を顧みる必要がある。たとえば、「ここ10年間で、大きく変えた業態は何ですか」と尋かれて、「ええと!」と考え込むようでは、業態の革新や転換は何もやっていない、ということであろう。
 取扱い商品が同じで、このような業態革新なしの場合、多くの場合業績はじり貧だ。
 商店街にあるバッグ専門店を見せていただいたが、客用のトイレがない。
客の99%は女性である。生理学的な説明は省くが、尿意を感じてから我慢できる時間は、男性よりとても短い。
 近所には、公衆トイレも、トイレが自由に使える百貨店もない。
 そこで、幸い場所もあったから、客用トイレを作った。一輪挿しも置いた。
 その上で店頭に、「トイレ、ご自由にどうぞ」という掲示をした。
 その後の店長の記録によると、月に平均して10人前後が利用するという。
 うち8人ほどが店内を見て回り、半分の5人が、なんらかの買い物をするという。
 年間に換算すると、購入客60人ほどの開拓という結果につながったのである。
 この場合肝心なことは、トイレを作るという作業より前に、「トイレの在処を捜しながら歩く女性は、トイレのある店を喜ぶだろう」と、気付く共感性が大事なのである。
 共感性の高い経営者はまた、自分自身の生活習慣も、十年一日のごとくではなく、節目節目で習慣革新をしているものである。
 ビジネス(商売)とは競争である。競合会社より優位をキープしておく必要がある。環境が悪くなったとき、脱落するのは競争劣位な会社から崩れるからである。
 ビジネス(商売)とは、“特徴を売る取引”と解釈する人は、一般にいい商売をする。特徴のない商売は、必ず特徴を売り物にする後発に、市場を侵食される。
 ところで貴社の商売の特徴は、何か即座に言えますか?