●業績の長期低迷の原因は、〈会社の体質〉にある
3年以上も“売上高や粗利益が低迷している”という場合の9割以上の会社に、「原因は“体質”にある」と指摘できる。単に商品力がどうとか、仕入や在庫管理がどうとか、営業組織がどうとかいう、マネジメントの問題
ではない、ということである。
 では体質とは何か。“意思決定権者(代表取締役)や意思決定機関(役員会)の、物の見方・考え方が歪んでいる”ということである。会社の“意思決定基盤”が問題なのだ。
 もっと簡潔にいえば、「社長とその取り巻き連に問題がある」ということである。
 さらに結論に近い言い方をすれば、社長自身の精神革命と同時に、取り巻きの連中、要するに取締役を入れ替えれば、業績は回復する可能性が高いということである。
 これが規模の大きな上場企業であれば、かつての東芝のように社長交代で済むが、オーナー経営の中小中堅の会社では、オーナーである社長に「辞めろ!」とは言えない。
 そこで、社長の意思決定に大きな影響を与えている、役員会メンバーを入れ替えろ、ということである。言い換えれば、“経営の基幹頭脳を入れ替えろ”ということである。
 一般に、経営体質が原因で業績が長く低迷する会社の特性は、つぎのとおり。
1、オーナー経営、すなわち同族経営である。
2、オーナーの意思に沿わない意見は、言えない雰囲気の会社。
3、特殊な技術や専門知識で主力製品が成り立っている。
4、当然のように、そういう分野の専門分野の人は重要視される。
 逆に、専門分野から離れた人は、あまり重要視されない。
5、経営者は一般に、純粋培養型の生真面目タイプである。

●経営意思決定に異質の血を注入せよ
 日産自動車にカルロス社長が誕生する前は、会社は、「技術の日産!」が売りだった。当時の日産では技術部門が優位で、デザインとか営業などは傍流。本流は技術だった。
 ところがカルロス社長は、こういう歪(いびつ)な考え方を改め、デザインや営業も盛り上げた。
 技術以外は格下で傍流という社内の認識の変革を求め、日陰の組織にも日を当てたのだ。
 もちろんこうした組織改革が、日産の業績回復につながった。
 組織体質が原因で業績回復の知恵が出ない会社には、昔の日産的な、取り上げるべき意見を排除する傾向が見られる。
 社長が専門畑だと、専門部門を重視するという調子なのだ。
 すると、一体どんな結果になるのか。
 社長と同じ方向に向うという者ばかりが経営意思決定に加わるから、いつまでたっても“発送の転換”には至らない。「・・は変えるべきではないか?」などと、至極真っ当な意見が出たとしても、「現在の秩序を乱す」という見方に打ち消されてしまうのである。
 だから3年以上も業績が低迷するとき社長は、「もし自分がいなくなったら、業績は回復するのではないか?」と自問する大胆さも必要である。
 ミサワホームの三沢千代治さんが、よく語っていたものだ。
「ある漁師が市場で水揚げするイワシは、じつに元気がいい。秘訣を尋くと水槽にナマズ(異質)を入れておくという。ナマズの存在に緊張して、イワシが漁港まで元気でいるそうな」
 経営意思の決定でも純血同士の議論では、野生パワーが死に絶える。たまには、異質の血を注入しないと、単なる知識の枠に収まり、不可欠にして知的で野生的な智慧は生まれない。