~社長一人の力は限界。殻を破れるかは、管理職の出来で決まる~
●小規模企業の管理職研修のあり方を考える その4(H27.10月号)



このシリーズの最終回です。第1回目では「小規模企業の管理職に自主性を期待してはいけない、自然発火はしないので強制的に追い込んで行く仕組みが必要」と申しました。2回目では「小規模企業の管理職は{急ぎで重要}な仕事に忙殺されている。全業務の2割は{急がないが重要}な仕事に時間を振り向けないといけない」と申しました。3回目では「管理職には3大ミッションと2大要素が求められる、管理職としてのあるべき姿」に言及しました。


今回はこれらの考え方を踏まえて、上手に強制してゆく仕組みについて考えたいと思います。具体的な手順は以下の通りです。




1.社長が個別の管理職に対して「こうして欲しい、こうなって欲しいとの思い」を書き出す


まず、2回目で申し上げた業務分析を参考にします。以下4つのマトリックスを思い出してください。
管理職に大事なのは、この右上2ゾーン部分の「急がないが重要」な仕事です。ここに時間を割き、継続化(習慣化)させる必要があります。この右上欄にどんな仕事が入りますか?

[緊急]       [さほど緊急でない]
____________________________
1ゾーン   | 2ゾーン          [重要]
(火消し仕事)  |(投資、予防、育成、開発、
         | 計画、育成等の仕事)
_________|__________________
3ゾーン    | 4ゾーン        [さほど
(お付き合い仕事)|(消費の仕事)        重要でない]
_________|__________________



 2ゾーンに入る仕事は、3回目で申し上げた管理職としてのあるべき論を参考にして考えてください(下記参照)。社長が管理職としてこうあるべきと考える理想形でも結構です。

[あるべき姿]
   | ギャップ
   |→→→→→→→→→〔問  題]→→→→〔原  因]→→→→〔対  策]
   |
〔現   状]





2.社長の「思い」を紙に書いて伝える


1においてその管理職にやって欲しいことが決まったら、その中から6ヶ月間で取り組んでもらう事項を選択し、「役職者任命辞令」に落とし込み、その思いを伝えます。


__________________________________________

役職者任命辞令(例)

木村 一郎 殿

貴方を平成27年10月1日付けをもって、部長職に任じます。


【ミッション】
部長職として従来の業務に加えて、以下の役割を命じます。
1.所属部下の業務効率を改善し、時間外労働を削減すること。
2.部下の○○さんを主任職にするべく重点的に指導教育し、あなたの知識技術を伝承すること。
3.

【待遇】
上記ミッションに対する役職手当(部長手当)として金●●円を平成27年10月分給与より、支給します。

■役職は既得権ではありません。期待成果の検証は1年後の平成28年9月に行い、その時点で昇降格を含めて、次期の処遇を再検討します。
■上記ミッションの範囲で、社長の権限の一部を委嘱します。今後の活躍に期待にしておりますので、期待に反しないよう頑張ってください。

平成27年9月25日
株式会社未来製作所    
代表取締役 山田 太郎  
_______________________________
私、木村 一郎は上記趣旨を理解し、ミッションを遂行します。
平成27年9月28日    氏名 木村 一郎    印
_______________________________




3.「自分行動改善計画」を管理職に作ってもらう


2において大枠のミッションを伝えたら、それを達成するためにどう取り組むのか具体策を管理職に出してもらい、それを毎週かつ毎月チェックする「自分行動改善計画」(省略)に落とし込みでもらいます。「自分行動改善計画」シートは理屈は簡単ですが、このテキスト文書では表現できないため概要だけ申しますと、要するに社長が与えたミッションを具体化する「具体的な行動」を10項目記入し、毎週自己チェックを行い、毎月社長に提出するレポートのようなものです。


例えば上記1に対するミッション達成のための一つの項目として、

●前日16時から17時の間に、翌日の工程表をまとめる

という、行動を出して来たとしたら、前1週間のその行動を状況を、翌月曜日に○×チェックし、月末に100点満点で全体の遂行状況を自己判定し、社長に提出させます。

ここでのポイントは、必ず「具体的な行動」を、日常の中に「あらかじめ」組み込むことで、習慣化を促すことです。何故なら、スキルとは「潜在的能力」と、「日々の習慣行動」に他ならないからですが、「潜在的能力」にアぷローチするのは困難です。「日々の習慣行動」は制御できます。まず、表(オモテ)に出ている「日々の習慣行動」を強制化して、望ましい姿へ変えてゆくのです。




4.「自分行動改善計画」に社長がコメントを返す

毎月、「自分行動改善計画」シートが提出されてきたら、その進捗状況を見ながら、毎月、ひと言コメントを返しましょう。口頭でも結構ですが、できれば赤ペンで「良くやっている、頑張れ」とか、励ましを忘れずにコメントするのがミソです。勿論その上で、足りない部分があれば指摘してください。要するにほったらかしにしないということです。社長の本気度が試されます。



5.6ヶ月間の総括をする


4により、毎月やり取りをした結果を、6ヶ月後に一旦締めて、社長と管理職双方が総括します。そして60点合格しなかった項目がある場合、またはやり残したことがある場合は、また2に戻って再挑戦します。また習慣化したことにより卒業認定できた項目は次回からはずし、新たに1から始めます。



弊社では、この管理職研修の制度設計についてサポートいたします。

小規模企業の賃金制度を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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