外国人雇用の基礎知識(2019.3月号)


本年4月より、入国管理法が改正され、高度専門職以外の現場に、外国人労働者が入って来ます。政府は移民政策とは異なるとの説明をしていますが、実質的に単純労働の受け入れを開放し、家族帯同で永住への道を開くということは、日本という国のかたちを変容させる、大転換点になるかもしれません。この紙面ではこの是非に触れるのではなく、現実的に身近になった外国人雇用についてのルールを整理して、ご紹介したいと思います。

1.日本で働くことのできる外国人

(1)特定された業務範囲内で就労が認められる主な在留資格

「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「技能実習」など24種類。中小企業の現場で多いのは、「技術・人文知識・国際業務」と「技能実習」です。

(2)就労制限のない在留資格

「特定活動」という資格のうち、いわゆるワーキングホリデーで入国した外国人は、原則1年間の間、自由に就労することが可能です。

(3)活動制限がない在留資格

「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」

この4つの資格は、日本人と同じように働いてもらうことができます。

2.働くことのできない外国人

「文化活動」、「短期滞在」、「研修」、「家族滞在」、「留学」

但しこれらの資格でも資格外活動許可を受けていれば、単純労働への就労も可能です。その場合でも、1週28時間以内(留学生の教育機関の長期休業期間にあっては1日8時間以内)以内が限度となります。
飲食などサービス業では、留学生は非常に貴重な戦力になっています。

留学生に関しては、「大阪外国人雇用サービスセンター」において、相談業務を行っています。

3.採用する前に確認すること

必ず「残留カード」原本を見せてもらい、その中で本人であるかどうかはもとより、

(1)在留資格(前記1にある、働くことのできる資格であるか)の確認
(2)在留期間(日本に滞在可能な期間かどうか)の確認

が最低限必要です。
さらに「留学」、「文化活動」、「短期滞在」、「研修」、「家族滞在」の場合は、裏面の「資格外活動許可欄」に許可を得ているか、または「就労資格証明書」の交付を受けているかを確認する必要があります。


4.不法就労と、罰則

不法就労とは

① パスポートなどを持たずに不法に入国して就労している場合
② 就労を認められない在留資格の外国人が就労した場合
③ 自分の所持している資格では就労を認められない職業についた場合
④ 定められた在留期間を超えて在留し就労している場合
⑤ 留学生などが資格外活動の許可を受けずに就労している場合

というパターンに分けられます。

不法就労外国人を雇用した場合、雇用主に対して「不法就労助長罪」が定められており、これは外国人に不法就労をさせたり、不法就労の斡旋などを行った場合には、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という大変規模しいものです。また就労した外国人は強制退去となります。

しかし「不法就労助長罪」は、その外国人が働くと「不法就労になると知りながら」上記の行為をした場合を処罰の対象としていますので、不法就労外国人であることを知らないで雇用した場合には、処罰の対象とはなりません。ただし、不法就労であるとはっきり認識していなくても、状況からみてその可能性があるにもかかわらず、確認をせずにあえて雇用するような場合には処罰されることになります。「知らなかった」では通りません。

ですから前記3の採用前の確認が非常に重要です。


5.外国人と社会保険その他労働関係法令との関係

日本国内で就労する労働者は、国籍を問わず原則として日本人と同じように労働関係法令が適用されます。具体的には、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法など、外国人についても日本人と同様に適用されます。労働基準法では、労働条件面で国籍による差別を禁止しており、外国人であることを理由に低賃金にする等の差別は許されません。

また、労災、雇用保険、健康保険、厚生年金といった社会保険も、日本人と同様に適用されます。外国人の中には、保険料の自己負担分を嫌って加入をしたがらないというケースもありますが、適用対象となる雇用の場合には本人の意思に関わらず加入しなければなりません。

なお、社会保障協定の発効されている国(韓国、アメリカ、フィリピンなど)の外国人は、保険料の二重負担を防止するために加入すべき制度を2国間で調整しているため、5年を超えない見込みで就労する場合には、引き続き相手国の社会保障制度のみに加入し、日本の社会保障制度への加入が免除される等といった制度があります。

また、社会保障協定の発効されていない国の外国人の場合、年金を全く受けずに本国に帰ることになる場合には、保険料の掛け捨てを防止するため「脱退一時金」制度があります。帰国後に、支払った厚生年金保険料の一部を請求することができます。

6.技能実習制度とは

技能実習制度は、日本で培われた技能、技術又は知識について、開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度です。一定の指定業種の範囲内で、単純労働への受け入れが可能です。日本での受け入れ可能期間は原則3年(最長5年間)で、技能実習生は入国直後2か月間の講習期間以外は、雇用関係の下、日本人と同じ労働関係法令が適用されます。
通常は、協同組合など監理団体を通じて受け入れることになり、最近ではベトナム人の受け入れが非常に多くなっています。

技能実習に関しては、公益社団法人 国際研修協力機構(JITCO)が相談に応じています。


7.改正入国管理法とは(2019年4月)


平成31年4月より新たな在留資格「特定技能」を2段階で設けるというもので、「特定技能1号」は、「特定の分野で相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に与えられるというもので、最長5年間の技能実習を修了するか、技能と日本語能力試験に合格することとされています。
在留期間は最長で通算5年間、家族の帯同は認められません。受け入れは、人手不足が深刻化している14業種(建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業)での単純労働を含めた就労を認めるものです。

「特定技能2号」は、1号を上回る熟練した技能を持つと認められた外国人に与えられ、在留期間に上限がなく、家族の帯同も認められるというものです。

治安に対する不安、生活習慣や考え方・文化や宗教の違いにより、要らぬ紛争や軋轢が心配されています。外国人が日本人の雇用を奪うという指摘もあります。日本人の待遇が下方向へ誘導されかねないとの懸念も出ています。

移民政策を受け入れてきた欧米諸外国では、移民問題が国を二分するような大論争テーマとなり、海外には移民を排斥する政治が受ける素地があります。


いずれにしても、今までの国のかたちが大きく変わるターニングポイントとなるかもしれません。外国人にも日本の風習や文化に柔軟に対応してもらうと共に、我々も彼らと共生することが欠かせないでしょう。これからの労務管理は、ますます複雑になって行くのは確実のようです。

小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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