耐震改修の現状 
 大地震の切迫性が言われ、耐震診断と耐震改修工事が戸建住宅でも進んでいるようです。
 官庁や大企業のように建築構造の知見を有する技術者が耐震改修に携わる場合には、一応、問題なく耐震診断と耐震改修工事が進むと考えることが出来ます。
 一方、戸建住宅の場合どうでしょうか?
建築構造的な知見がありませんから、自治体の勧めを機に、業者に診断を頼み、耐震改修工事を行っています。
その工事費用は、相当の金額となります。
 しかし、本当に耐震強度は必要なレベルまで向上したのでしょうか?
このような、性能アップについての説明がないまま工事が進んでいる状況は、国・都道府県・自治体が後押しする「悪徳リフォーム工事」と言っても過言でない?現状と言えます。

性能保証の為の基盤整備が必要 
 大地震にも耐える性能確保が改修工事の目的です。
その目的達成の為には、耐震診断から耐震改修工事までの全過程について、次の整備が必要となります。
ところが、実際はコメントの通り、整備がないまま、不安な状況にあります。
イ、耐震診断技術の確立    
確立したこととなっていますが、「あんな診断方法で大丈夫?」と疑問を持つのは、私一人ではないようです。
ロ、技術者の養成    
建築士の資格があれば、半日の座学で「耐震診断のプロ」になります。
ハ、耐震改修設計技術の確立
診断結果に基づき、どのように改修するかの設計技術に至っては、一部の自治体が施工例を示すのみで、とても設計と言うレベルにありません。
ニ、工事業者の育成
工事業者の耐震改修工事についての知見が充分か否か全く不明です。
自治体も業界も必要な啓蒙を行っているか分かりません。
ホ、検査・検証技術・制度の確立
工事が終了した場合、「外観検査」と共に「性能確認検査」が必要です。
検査方法がないわけですから、性能検査は全くされてないと言えます。
提言 
1)国・自治体は、国民に耐震改修を呼びかける前に、耐震改修に必要な上記イーホの基盤整備を先ず進めることを提言します。
 
2)耐震診断の結果得た現状の耐震診断レベルと耐震改修工事によって達成しようとする耐震レベルを「(仮称)耐震改修診断設計書」として、耐震改修工事を行おうとする国民に交付するよう業者への指導を強化することを国・自治体に求めます。
 
3)耐震改修工事に対し、補助金・助成金制度を設け、あるいは、税制での優遇を図ることは、結構な施策と考えます。
その一方、耐震改修工事の性能保証がないことは疑問です。
何らかの形で国・自治体が関与する方法で、業者が耐震改修工事を行った国民に耐震性能を保証すること及び保証を裏付ける保証書を提出するよう指導することを国・自治体に求めます。