◆取締役に抜擢する条件は、他部門への関心度
 旭化成の実力トップとして、その実績ゆえに生涯を通して、社の内外から何の批判も受けずに職責を全うした人に、宮崎輝(かがやき)という人がいた。
 この人は、この部長は見どころがあると思うと、普段の会話の中で、企画部門の部長には、「うち(当社)の原価率が最近高いようだが、きみ何が原因と思うかね」と尋ねたり、経理部長には、「営業部門の問題点をきみはどう思う?」と、畑違いの分野への関心を尋ねた。
「何日間ほど時間をください。調べてご報告したいと思います」とか、「批判ではなく、日頃疑問に思っていますことは・・」などの、返事を期待したという。
 宮崎さんは生前、ダメ幹部の例を紹介していた。
ある部長に聞いたという。
「うちの損益分岐点は、少し高すぎると思うが、きみはどう思うかね」
「それでしたら、経理部長がくわしいと思いますが・・」
「こんな返事では取締役にはとてもとても」と判断し、抜擢対象から外した。
 “取締役は、特定部門の利益代表ではダメなんだ”、という宮崎さんの意見を聞くまでもなく、当たり前のことだが現実には、担当部門以外には何の関心も示さない取締役が多過ぎる。

◆部課長への抜擢法は、課題を与えレポートを出させる
 部課長に抜擢しようという場合は、ある課題を示して、「自分ならこうやって解決をします」というような、提案レポートを提出させるがいい。問題意識や能力が、モロに表れるからだ。
 普段から、気持ちがスーッとするくらい従順な者に限って、抜擢すると半年もたたずに後悔する。
 そんな人間に限って、指示待ち人間が多い。トップと社員との間にいて、決して品質のいい接着剤にはなりえない。イエスマンの幹部抜擢は、ブレーンを増やすのでなく、取り巻きを増やすだけになる。