四国は徳島市内の、小さなうどん屋さんに入った。
外から見ての予想どおり、人柄の優しそうな婦人が迎えてくれた。
壁に掲げてあるお品書きを見て注文し、しばしの待ち時間。
そのとき、気がついた。店に突き出たような座敷に、かわいい三毛猫が寝そべっている。
よく見ると、少し様子が違う。
なんと首輪をつけられ、紐で柱につながれている。
注文のうどんが出てきたとき、話しかけてみた。
「かわいい猫ですが、首輪がついてますねえ・・」
すると婦人は、こんな話を聞かせてくれた。
「私どもは、猫を自由にしておきたいけれど、お客さまがみな、猫を好きとは限りません。嫌いなお客さまもおられ、衛生的にもよくないという方もおられますから・・」
このとき、「あの会社とは違うなあ!」と思った。

あの会社とは、ある工具問屋。事務所の中にダンボール箱が置いてあり、社長の愛犬を飼っているのだ。
自分の愛犬は、客の愛犬とでも思っていたのか。
顧客の立場で考えるという点では、徳島のうどん屋さんの婦人が、はるかに顧客意識が優れている。
社長の性格はトイレに現れるのか、借りたトイレの男性便器は、白い色が黄色に変色して、異臭は事務所にまで漂っていた。
もしかしたら、もうツブれたのではなかろうか。