●“計数”はビジネスの合い言葉だが?

 “計数はビジネスの合い言葉”と言われる。当り前のことである。
 ところが計数を、特に営業活動によって生じる数字を過信すると、その数字をもたらした原因を解明しないで、問題の核心を見過ごしたまま、先へ進みがちである。
 営業関連の計数には、営業活動と密接不離なものが多い。たとえば、「売上目標」という数字がある。それも、「対前年同月比」もあれば、「対前月比」もある。
 ところがY営業所の目標達成率が、仮に85%とすれば、目標より15%も下回る。
 すると、司会者や上司による先導の上、こんな論議に時間を割く会社がある。
 「Y営業所を除く全営業所の平均達成率は96%だが、その平均値よりも下回る……」
 「この平均値割り込みが、もう3ヶ月も続いている。全社目標の足を引っ張っている……」
 「当社は長い間、目標との誤差率は一桁以内だ。二桁の狂いは問題だ……」
 「これだけ狂っては、目標が目標にならないのでは?……」
 「この調子では、来月も非常に心配される……」
 こういう論議をよく見てみると、「なぜ、そういう結果になったのか」という、数字をもたらした“原因の特定と分析”が、そっちのけにされていることがわかる。
 こういう会議は俗に、“数字ごっこ”とも呼ばれるが、こういう数字ごっこに陥る組織には、しばしば会議の主導者に、計数かぶれの人がいるものである。

 会議に用いられる営業資料にしても、簡単にいえば、数字、数字、数字のオンパレードが多いのである。そしてみんなの意識には、カンと度胸と経験という古いやり方ではなく、数字を駆使して、非常に科学的な会議を採り入れている……という自負めいたものさえあるものだ。

 ではなぜ、営業現場の問題特定や分析を遠巻きにして、“数字ごっこ”で、効果につながらない時間を浪費するのかというと、会議の主導者(社長の場合が多い)が、現場の実態を知らないケースが多い。

 さて、“数字ごっこ”という、一見科学的な似而非(エセ)会議をしないためには、いろんな手の打ち方があるが、ここでは〈売上目標〉の設定について、留意事項を述べてみたい。

 〈売上目標〉を金額で示したならば、次に大事なことは、〈主要達成手段〉も並記する(させる)ことである。(目標達成手段として優先順位の高いものから、三つの要点を添えること。)