~仮説には失敗がつきまとうもの~
●仮説なきところに創造なし
 ノーベル賞を授与された中村修二さんは、例の青色ダイオードの開発に成功した四国の会社で長い間、「ゼニにもならん物ばかり作りおって・・」とか、「毎日何をやってんだ、会社の穀潰しが・・」などという陰口の中で、歯を食いしばって辛抱したあげく成功した人だ。
 この中村さんもそうだが、発明者はもちろん経営者にしても、新しい何かを創造して進歩発展への道筋をつける人の多くは、「仮説力」を隠し持っている。
 仮説力とは、「こんな方法や手段を採用すれば、より良い成果が得られるのではなかろうか?という、仮の方法・手段を取り入れ行動すること」である。仮説だから当然行動の結果を検証することになる。この検証の結果は、「う~ん、やはりダメか!」ということになる。
 この「ダメか!」が何十回も何百回も続く。中村さんの場合、この「ダメか!」が何十回どころか、500回以上だった」ということである。
 故人だが、HONDAの本田宗一郎さんも、この「ダメか!」を、いやというほど経験した人だから、本田さんの口グセは、「俺のやったことが成功というのなら、999回の失敗の揚げ句、1回成功したということだ」という言葉を残している。

●新しい道を作る者は失敗を恐れない
 昔、ミサワホームを立ち上げた三沢千代治さんが、「30にもなって、一つとして失敗経験のない人間は、危なっかしくて管理職には登用できない」と語ったが、その真意は、<そういう人間はもともと、失敗しそうなチャレンジをしない人だから>と説明していた。
 そういう人は、人の歩いた道しか歩かず、自分で道を作ろうとしない人間なのだ。
 失敗を恐れる者は、問題意識も希薄、創造意欲も希薄、そして仮説の力も希薄である。