取締役等の責任を追及する訴え、すなわち株主代表訴訟については、新会社法では制度の合理化が図られました。

1 株主代表訴訟を提起することができない場合を明確化しました。訴えが当該株主や第三者の不正な利益を図ったり、会社に損害を加えることを目的とする場合には、株主は提訴請求をすることができないものとしました。商法ではこのような規定を欠いていたため、訴権の濫用等の一般条項によって訴えを排斥していました。しかし、一般条項の適用は、適用範囲が不明確であるため、従来訴権の濫用とされていたものの一部について明文化したのです。勿論、これ以外の濫用的な訴えについて、訴権の濫用の法理を排斥するものではありません。

2 株式交換や株式移転等による原告適格がなくなることの見直しが行われました。例えば、従来、原告株主が株式交換により完全親会社の株主になった場合には、原告適格を失う虞がありました。原告適格を喪失すれば、門前払いの判決が下り、それまでの訴訟活動が水泡に帰してしまうのです。そこで、株式交換や株式移転等により原告株主が完全親会社の株主になった場合でも、訴訟を追行することができることを明記しました。

3 株主から取締役等に対する提訴請求を受けたにもかかわらず、会社が取締役等に対して責任追及の訴えを提起しない場合には、当該株主等から請求があれば、遅滞なく、訴えを提起しない理由を書面等により通知しなければならないという規定を新設しました。これは、訴えを提起しないこととした会社の判断過程の開示請求を認めることにより、取締役等のなれ合いで提訴しないような事態が生じないように牽制するとともに、株主等が代表訴訟を遂行する上で必要な訴訟資料を収集することを可能にするものです。

 今回はこの辺で。

07年04月03日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
 当事務所では、会社設立の登記が終われば、もうおしまいというわけではありません。

 会社が成立すると、まず税務署、都道府県税事務所、市区町村役所に(東京は2箇所)、「法人設立届書」を提出しなければなりません。次に、(1)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、(2)青色申告の承認申請書、(3)給与支払事務所の開設届出書、も提出する必要があります。(1)は、源泉徴収したものは翌月10日までに税務署に支払うのが原則なのですが、それでは大変なので、半年に1回支払えば済むようにするためのものです。(2)は、創業当初赤字でも5年以内は繰り越せるというもので、申請しておく方が有利です。(3)は、給与を支払う従業員を雇うのであれば、当然必要となります。ここまでは、当事務所でも代行いたします。これ以上の会計記帳、決算書の作成、確定申告書の作成等の税務関係は、当事務所が提携している税理士の方をご紹介いたします。

 会社が成立して、次に必要となる届出は、労働保険(労災・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)の新規適用届です。法人の場合、労働者(従業員)を1人でも雇えば、労働保険・社会保険ともに強制適用事業所となりますから、双方ともに届出る必要があります。現在、労働保険には加入していながら、社会保険には加入していない法人が少なからずあり、厚生労働省も加入を呼びかけているところです。当事務所では勿論これらの届出を代行いたします。

 さらに、就業規則の作成や、退職金制度をどのようにするかとか、賃金形態を含めた人事労務管理に関するサポートも致します。これで、事業主様は経営に専念できるというわけです。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。

07年03月31日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
07年03月27日

会計参与

 会計参与制度は、新会社法で新設されました。会社債権者や株主にとって、会社の会計が正確に処理され、公開されるということは、必要不可欠なことです。そこで、企業の会計分野をチェックして企業としての健全性を確保するための機関として、株主総会の決議で選任される会計参与を設けました。

 企業会計には専門的知識が必要なため、会計参与になるためには、公認会計士・監査法人か税理士・税理士法人でなければなりません。適正な会計チェックという観点から、会計参与は、株式会社又は子会社の取締役、監査役、支配人等の使用人を兼ねることができません。

 会計参与の基本的な職務は、取締役と「共同」して、計算書類を作成することです。「共同して作成する」ということですから、取締役と会計参与との一致した意見に基づかなければ、計算書類を作成することができないことになります。取締役と会計参与の意見が対立すると、計算書類の作成ができなくなるのです。

 このように、共同して計算書類を作成し、さらに取締役とは別に計算書類を保存・開示する職務を担うことによって、取締役による計算書類の虚偽記載や改ざんを抑止し、計算書類の記載の正確さに対する信頼を高めることができるのです。

 しかし、この制度はうまく機能するだろうか。私の知り合いの税理士の方に、「会計参与になってくれという誘いが来たときは、どうしますか。」と尋ねたところ、引き受けたくないという返事でした。それは、会計参与は、社外取締役と同様に、会社及び第三者に対して責任を負うからなのです。会社に対する責任については、株主代表訴訟の対象にもなるのです。これらの責任は、任務懈怠ないし悪意又は重大な過失があったときの損害賠償責任ですから、任務懈怠や悪意・重過失がなければ責任を負いません。税理士さんに期待を寄せるものです。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。

 今回はこの辺で。

07年03月27日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
 株式会社設立は、発起人による定款の作成で始まります。定款に必ず記載しなければならない事項は、(1)目的、(2)商号、(3)本店の所在地、(4)設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、(5)発起人の氏名又は名称及び住所、の5つだけです。これらは絶対的記載事項といって、この中の一つでも記載してなかったり、記載内容が法律に違反するときには、定款そのものが無効となります。しかし、実際には、何十条もの記載がある定款が通常です。

 それは、絶対的記載事項以外に、定款に必ずしも記載する必要はないが、定款に記載しなければ効力を生じない相対的記載事項があるからなのです。また、絶対的記載事項・相対的記載事項以外のことでも、公序良俗や株式会社の本質に反しない事項は、定款変更手続が厳格なため法的安定性を求めて定款に記載することが普通なのです(任意的記載事項)。

 新会社法は、この相対的記載事項を大幅に増やし、定款自治を拡大しています。このことは、株式会社における定款の重要性を意味しています。例えば、株式会社の機関設計を見てみましょう。株式会社の必置機関は、株主総会と取締役のみです。これは、全部株式譲渡制限会社(非公開会社)は、大規模公開会社をその本質とする株式会社より、むしろ小規模閉鎖的な有限会社に近い実態を有しているため、会社法で株式会社と有限会社を一体化するに当たり、有限会社においてのみ認められていた機関設計を認めることにしたものです。そして、取締役会、監査役、会計参与などは定款に定めることによって置くことができるようにしました。

 それでは、取締役しかいない会社と取締役会も設置している会社とを見てみましょう。株主総会の権限の大小もさることながら、一般人としては、前者はワンマン経営のイメージがあるのに対し、後者は取締役が3人以上の合議により業務執行の意思決定を行っているため、適正な経営のイメージが概してあります。また、取締役会設置会社は監査役を置かなければなりませんが、取締役会を設置していない会社でも、監査役か会計参与(取締役と共同して計算書類を作成する会計のプロ)を設置していたとしたらどうでしょう。会計処理をチャンとやっている会社として、会社に対する社会的信用が増すでしょう。もっとも、形だけの監査役や会計参与では困りますが。

 このように定款自治が拡大したということは、定款を見れば、この会社はどのような会社なのか、どのような理念をもって、どのような経営を行おうとしているのか、が分かるということです。ここに定款の重要性があります。実際、登記事項ではない重要事項が定款記載事項とされていることもあり、銀行の融資実務においても、定款の重要性が再認識されているようです。

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 今回はこの辺で。 

07年03月26日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
07年03月24日

出資と融資

 株式会社を設立しようとするときに、自分一人で資金を賄えるのであれば問題はない。しかし、どうしても資金が足りないとき、出資してもらうべきか、それとも融資を受けるべきか、悩まれると思います。

 融資の場合、融資をした銀行や国民生活金融公庫は単なる消費貸借の債権者に過ぎないのに対し、出資の場合、出資者は株式会社の構成員(株主)となるという決定的違いがあります。

 そのため、融資の場合には、借金を返済してしまえばそれで終わりですが、出資の場合には、その出資者の株式を取得しない限り、株主としての権利を行使してきますから、会社を設立してワンマン経営をして行こうと思っていても、他に出資者がいたら中々思うように行かない場合が生じてきます。

 そうです。その出資者がたとえ取締役として業務執行に携わっていなくても、株式会社の組織・運営・管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる株主総会において、議決権を行使してくるのです。株主総会の決議要件には、定款に別段の定めがなければ、(1)普通決議(株主の議決権の過半数が出席しその過半数で決議)、(2)特別決議(株主の議決権の過半数が出席しその3分の2以上で議決)、(3)特殊決議1(株主の半数以上でかつ当該株主の議決権の3分の2以上で決議)、(4)特殊決議2(総株主の半数以上でかつ総株主の議決権の4分の3以上の決議)、の4つがあります。何か分かりにくいかもしれませんが、(4)は非公開会社が株主平等の原則と異なる定めを定款で定めた時の、その定款変更決議の場合ですから、ここでは置いておきましょう。

 そこで、過半数と3分の2以上がキーポイントになるわけですが、特に重要事項を決議するのに必要な3分の2以上が意味を持ってきます。つまり、他の出資者が3分の1を超える議決権を有していれば、重要事項を単独で議決できないことになります。

 このことから言えば、会社を設立して自由に経営をしたい事業主の方が、資金が足りないため他の人に出資を頼む場合には、出資比率が3分の1を超えないようにしなければなりません。でないと、自由な経営が出来なくなる虞があります。銀行等の金融機関は、融資はしても出資はしませんから、設立してから融資を受けましょう。

 メールによるご相談は、m-sgo@gaia.eonet.ne.jpまでお気軽にどうぞ(無料)。

 今回はこの辺で。

07年03月24日 | Category: 会社設立
Posted by: marutahoumuj
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