1 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部

 を撤回することができます。

  ただ、撤回される遺言と撤回後の遺言は同一の方式であることを要しな

 いので、例えば、公正証書でされた遺言を自筆証書遺言をもって撤回す

 ることも可能です。



  また、前の遺言と後の遺言が抵触するときは、その抵触する部分につい

 ては、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。遺言者の最終

 意思を実現するために撤回を擬制するわけです。



  さらに遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分につい

 ては、遺言を撤回したものとみなされます。



2 遺言が撤回されると、遺言は初めからなかったと同様の結果になる。



  では、撤回行為がさらに撤回され、またはそれが効力を失った場合には、

 先に撤回された遺言が復活するかが問題となります。



  この点、民法は、復活しないという主義を採用しています。通常の場合の

 遺言者の意思に適するであろうし、反対の効果を望む者には改めて遺言の

 作成を要求した方が、遺言者の真意を明確にするからです。



  ただし、第1の遺言を第2の遺言によって撤回した遺言者が、さらに第3の

 遺言によって第2の遺言を撤回した場合に、第3の遺言書の記載に照らし、

 遺言者の意思が第1の遺言の復活を希望することが明らかなときは、遺言

 者の真意を尊重して、第1の遺言の効力の復活を認める判例があることに

 注意を要します。



3 遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができません。遺言は

 遺言者の最終の意思を実現しようとするものであるから、遺言は自由に撤回

 できるものとしておかなければならないからです。



  したがって、仮に、推定相続人との間で遺言の撤回をしない旨を約束したと

 しても、それに拘束されることなく、遺言者は遺言を撤回することができます。