~バブル期を超える求人難時代の到来!!~
●如何にして求人広告の応募効果をアップさせるかを考える  その1 (2018.3月号)


求人情勢が逼迫しています。リーマンショックの2009年8月を底として以降、一貫して右肩上がりで上昇し続けてきた有効求人倍率も、2017年12月には1.59倍となり、バブル期のピークであった1990年7月の1.46倍を超えました。労働録人口はこの動きに反比例して、既に右肩下がりで減少し続けています。

今後の景気動向と共に、AIがどの程度人間の仕事を代替できるか、或いは外国人労働者への門戸どこまで開放するのかにより、不確定要素はありますが、いずれにしても求人難の基調は当分の間、続くものと思われます。


そこでこれから以下3回にわたり、求人広告(紙媒体、ネット媒体を問わない)において、如何に応募数を増やすか?ということに焦点を当てて、考えてみたいと思います。


今後の予定
第1回 コンプライアンスや労務管理に自信のある企業向き 求人広告の出し方
第2回 “グリコのおまけ”を侮らないこと
第3回 キャリア志向の人物を求めたいとき
第4回 柔軟な勤務シフトが可能な企業向き 求人広告の出し方




第1回 コンプライアンスや労務管理に自信にある企業向き 求人広告の出し方
~当たり前の労務管理をきちんと応募者に伝えるよう~



当たり前の労務管理をきちんと応募者に伝えるとは?

応募者が求人広告を見る目には、二つの視点があり、一つは現在同時に出稿されている企業との比較という視点、もう一つは自分がかつて勤めた企業との比較という視点です。盲点なのは、この二つ目の過去との比較とう視点です。

中小企業の求人募集は中途採用が主流です。中途採用ということは、応募者の多くは過去に数社の会社勤務を経験していることになります。そしてその転職動機には前職の労働条件や労務管理に不満があって転職する層が少なからずいるのです。そして世間では、意外?にも、当たり前の労務管理が行われていない実態が多くあり、労働者はそういった現実を経験しています。例えば…、


○限度を超えて長時間労働になっている・・・・・。
○残業代が出ない・・・・・。
○正社員にすら健康診断を行っていない、ましてやパートなど・・・・・。
○労働条件は社長の意のままで、勝手に変更されることも。契約を交わすという発想がない・・・・。
○そもそも有給休暇など、うちの会社にはないと言われた・・・・・・。
○社会保険は認められた者だけしか入れない・・・・・・。
○休憩時間がまともに取れない・・・。


こういった思いを持っている求職者層がかなりいると推測できます。彼らが以下の募集要項を見たとき、どう思うでしょうか?

時間:9時~18時(休憩1H)     →本当に1時間休めるの?本当に18時が定時、本当は何時までかかるの?
賃金:月給25万円          →残業代は別に支払ってもらえるの?これは残業を含んでいるの?
休日:日曜日、会社指定土曜日    →シフトがころころ変わるのでは?ちゃんと決まった日に休めるの?
休暇:有給休暇、慶弔休暇      →有給休暇って書いてあるだけじゃない?
待遇:各種社会保険完備       →試用期間中も入れてくれるの?



残念ながらこれが多くの中小企業の労務管理の実態なのです。ですから特別魅力的で有利な労働条件を提示できなくとも、こういった疑問に丁寧に答えられるだけでも武器となり得るのです。中小企業で特別有利な労働条件を提示できることの方が少ないはずですから、当たり前の労務管理ができている会社は、そのことをきちんとアピールするのです。「ここは労務管理をちゃんとしている会社」ということがアピールできれば、それだけで他社より相対的に有利になります。この当たり前の労務管理は、自社では気づきにくいので、外部からチェックしてもらうのが良いでしょう。


ポイントは、応募要項を無味乾燥に並べるだけでなく、それらにひと言説明を加えること(以下記載例の※印の部分)なのですが、以下、いくつか具体例をあげて説明します。



■労働時間に関すること


1.残業が少ない会社の場合
(記載例1) 9時~18時  ※残業はありません。18時きっかりに帰社できます。
(記載例2) 9時~18時  ※平均残業時間1ヵ月30時間(36協定内であり、長時間残業はありません)

2.休憩時間はきちんと休める会社の場合
(記載例) 休憩時間12時から13時 ※休憩時間はきちんと自由に過ごすことができます。仮眠、マンガOK!

3.早出がない会社の場合
(記載例)  9時~18時  ※9時前にお入りいただければ結構です。早出はありません。


■休日休暇に関すること

1.休日出勤はない会社の場合  
(記載例) 日曜祝日、隔週土曜日 夏季年末年始(年間休日105日) ※会社休日に出勤をお願いすることはありません。


2.有給休暇を取れる会社の場合
(記載例1) 有給休暇あり ※有給休暇は法定日数を自由に取得すること可
(記載例2) 有給休暇あり ※有給休暇取得率50%超。パートも取得可。短時間パートも比例付与あり。


■賃金に関すること

1.残業代はきちんと支払う会社の場合
(記載例1) 月25万円  ※18時を過ぎた場合は、きちんと残業代お支払いします。
(記載例2) 月25万円  ※基本給に残業代は含まれていません。別途支給します。


■社会保険に関すること

1.入社初日(試用期間中)から加入する会社の場合
(記載例) 各種社会保険(労災・雇用・健保・厚生年金)完備  ※社会保険は入社初日からご加入頂けます。


■その他

1.就業規則は開示している会社の場合
(記載例) 就業規則完備  ※就業規則は全社員に公開しています。

2.労働契約は文書で交わす会社の場合
(記載例) 労働契約書完備  ※労働条件は、きちんと文書で交わしますから安心です。

3.健康診断はしている会社の場合
(記載例) 健康診断あり  ※健康診断は毎年7月に実施。全員(パートも)が受診できます。


3.分煙禁煙
(記載例) ※事務所内は全面禁煙です。喫煙者は専用スペースあります。

4.服装(特に女性)
(記載例1) 制服貸与(無償)  ※毎日服装で悩むことはありません。
(記載例2) ※ジーパン、Tシャツ以外なら服装自由。個性を発揮できます。 


■できれば表に出したい数字に関すること

1.勤続年数(10年以上なら定着性の良い会社として安心)
2.男女の割合(女性割合が多い場合)
3.平均残業時間(36協定以内の時間なら可)
4.有給取得率(平均が45%くらいなので、それ以上であれば有利)
5.年収平均(ボーナスや平均残業代を加算して 初任給で400万円以上あれば有利)
6.昇給額・率(平均1.5% 4000円位なので、これ以上であれば有利)


■キャッチフレーズ

(記載例)
私どもは小さな会社ですが、自社の労務管理は、きちんと行っております。
大したことはできませんが、愚直なまでに「ちゃんとすること」を心がけています。
年間105日は休めて、休憩時間もしっかり取り、残業は一切ありません。仮に残業があってもきちんと割増賃金は支払いますし、有給も取れます。
就業規則も開示、労働条件は文書で交わします。研修や勉強会もよく行っていますし、社員の健康にも充分配慮しています。
とにかく真面目で誠実な社風の会社だと思っております。



当たり前の労務管理を当たり前に行っている企業は、こういったことも検討してみてください。蛇足ながら、こういったことは広告プランナー任せに求人を出すと絶対に出てこないアプローチです。必ず、主体的にアピールして、記載してもらう必要があります。


小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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