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中小企業で人材が育ちにくい理由を考える(H21.7月号の記事)
~競争原理・上昇志向・新卒・ライバルの欠如  管理職らしくない管理職 社長自身の問題~

 多くの中小企業経営者の方々とお話していますと、とかく人材が育たないと嘆かれることがよくあります。その原因は色々あるとは思いますが、私は中小企業に構造的な問題として、以下の点を指摘することが出来ると考えています。

1.競争原理(ライバル)の欠如

 中小企業は人事部の整備された一定規模以上の企業のような教育指導体制が確立されていないのが普通であり、直接現場で先輩から指導を受けるいわゆるOJT教育が主体となっています。そしてその指導を受ける新米従業員は中途採用がほとんどであり、また一人採用が多いのも事実です。つまり新卒入社組のような「同期」という存在がおらず、社内にライバルがいないため、適度な競争原理が働かないことが挙げられます。年齢間格差があればなおさらで、25歳の新米と50歳の職人ではライバルになりません。もちろん和気藹々と家族的に仲良くするのも大切なのですが、こと人が伸びるという観点から考えると、常に心に意識できるライバルの存在があるかないかで大きな相違があると思うのです。「あいつには負けたくない」とか「こういうときあいつならどうするだろう」とか、心にライバルを思い浮かべるとき、人間の怠惰な慣性はそれがいないときに比べて大きく後退するものです。恋をすると綺麗になる法則にも似ているでしょうか?心にいい意味で気になる存在が社内にいないことが、今一歩の努力を引き出せない原因です。つまり新卒複数採用を定期的に続けるとか、仮想ライバルの存在をイメージさせるなどの仕掛けが必要なのです。

2.上昇志向の欠如

 中小企業で働く従業員は、その会社で将来自分がどのような姿になっているかを想像できているでしょうか?もちろん良いイメージです。また「あの人のようになりたい」というような憧れの上司や先輩はいるでしょうか?ずっとこのままの状態が続くと諦めの境地で思われていないでしょうか?
 多くの中小企業では人事制度が整備されていないため、将来に対する明るい見通しが「見える化」できていないことが多いのです。今の自分の仕事はずっと今のままか、もっとレベルアップしてゆけるのか、そのためには何が求めれているのか、それにともなって待遇やポジションはどのようになってゆくのか?
 今の日本の社会状況と同じで、将来不安があるうちは今をアクティブに生きようとはしません。むしろ今あるものを出し惜しんだり、将来のために今ちょっと我慢して努力するとう気持ちが芽生えないでしょう。そうならないためには明るい未来を提示し、上昇志向を引き出す必要があります。もちろん全員が上昇できるものではありませんが、その意欲や力が潜在的にあるにもかかわらず、その環境が整備されていないためにくすぶっている人があるとすれば、大きな損失です。将来に対するキャリアプランを提示できる人事制度の整備などを仕掛けてゆく必要があります。

3.管理職らしくない管理職

 人を教育指導するのも管理職の役割の一つです。人が育つかどうかは、その上に立つ人の存在に大きく左右されます。中小企業においても役職持ちの方はたくさんいますが、その中で課長とか部長とかが、どういうことをする人かを右脳でイメージできている人は果たしてどれだけいるでしょうか?小さな会社を転職してきた従業員はその履歴において、自分自身が管理職らしい管理職と出会っていないためか、なかなか管理職が何たるものかをイメージしづらいようです。いくら理屈で説明しても、頭の中にビジュアル化されたイメージがないため、ピンと来ません。管理職に対するイメージ戦略が必要です。できれば一定期間出向して、管理職の手本となる人に就くのがいいのですが、現実的ではありません。現実的でお手軽な仕掛けとしては、雇用能力開発機構など公共機関が貸し出してくれる無償の管理職に関するビデオを借りてきて、イメージを持ってもらうのも一つの方法でしょう(大阪では梅田の新阪急ビル8Fにある)。また役職は名誉職でも既得権でもなく、特別の責任と役割があることを認識してもらう役割制度を構築して、仕掛けてゆくことも必要です。


4.人を育てることに真剣に向き合っていない社長自身

 社長が従業員の人生に真剣に向き合っているでしょうか?従業員はあなたの会社で人生の多くの時間を費やしているのです。「自分の会社で成長して欲しい」、「世間並みの良い生活をして欲しい」と願っているでしょうか?もしそうならその気持ちは敏感に相手に伝わります。言葉や表情や仕草や具体的行動を通じて。社長から見れば目の前の従業員は何十分の一の存在でも、相手からは1対1の大きな存在です。社長が思う以上に、従業員は社長に対して思いを抱きます。もっと真剣に向き合ってください。そうすれば自ずと人の心を豊かにする、「承認」「笑顔」「感謝」が出ます。また厳しいことを言う場面でも感情に任せて「怒る」のとは違い、愛のある「叱る」行動になります。
 経営者には二つの大義名分があります。一つはお客さんを幸せにすること、もう一つは自分のところの従業員を幸せにすること。 人様の人間観に口を挟むつもりは毛頭ありませんが、今一度、真剣に向き合っているかを自問自答してみるのも大切なことではないでしょうか。

 これらは私自身が社労士として独立する前10年間に300人以上の企業から10人未満の零細企業まで普通のサラリーマンとして数社の転職歴があり、また開業後多くの中小企業の労務管理をお手伝いしている中で、感じている実感なのです。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月25日 | Category: General
Posted by: nishimura
中小企業緊急雇用安定助成金にはデメリットもあることを理解しよう(H21.6月号の記事)

 本年に入りましてから、製造業を中心に「中小企業緊急雇用安定助成金」の申請が激増しております。この助成金はいわゆる構造的不況等により、生産量や売上高が一定割合で減少し、従業員を一時帰休させる必要がある場合に、その間の休業手当を助成するもので、このメルマガでも2月号でご紹介しております。この助成金の申請ラッシュは今のところ収まる見込みはなく、むしろますます増える傾向にあります。
 もちろんこの助成金を利用することで、整理解雇を行わずに、事業継続が可能になるなら、それはそれで大いにメリットになることなのですが、ここまでの経過を見ておりますと、一部に懸念される傾向があることも分かってきました。現在ご利用中の企業も今後利用を検討されている企業も、以下のようなデメリットが生じる可能性があることを、ご理解いただければと思います。

 デメリットその1
 この助成金は、従業員を休業させてその間に休業手当を支払うものですが、基本的にその休業手当は休業1日に対し、平均賃金1日あたりの金額の60%以上を支払う必要があります。そして多くの中小企業は60%から80%程度で支給していることが多いのですが、いずれにしても従業員の給与は通常の給与額から減額されることになります。また現在は残業もほとんど行われていない現状から、その手取り額は相当程度下がるのです。つまり、会社には助成金が出ますが、従業員の給料は下がったままなのです。それが1,2ヶ月のことならまだ我慢も出来るかも知れませんが、相当期間経過した場合、モチベーションを維持できるかが心配です。人間というのは一旦獲得した収入の範囲で生活するリズムがついていますから、それがいきなり数万円減額されると、何かを切り詰めて生活する苦痛を伴います。毎日ビール1本飲めたものが、2日に1本になるように、ささになことでも生活レベルを落とすのはつらいものなのです。

 デメリットその2
 上記1と逆のケースもあります。つまり、100%補償しない限り確かに収入は減るのですが、一方で休んでいても給与補償される状態が続くことになります。世の中には額に汗して働いて、その労働対価として給料を受け取りたいという、健全な労働価値観をお持ちの方ばかりとは限りません。休んでいても給料がもらえるとなれば、またそれが慣性となる傾向が出てくるのです。休んで100%支給ならなおならです。よくあるケースですが、例えば腰痛や腱鞘炎で労災の休業請求をしていますと、いつまでも痛い痛いといって医師に証明を記載してもらい、働けるにもかかわらすいつまでも休業する従業員がいます。これと同様なことがおこり、働くモラルを下げる可能性があるということなのです。

 デメリットその3
 助成金は一種の麻薬だと思っています。これは経営者に見られる傾向なのですが、一旦助成金の甘美な味に満たされると、その後も助成金に依存しようとする経営姿勢が起こりやすいということなのです。確かに今回のように非常事態の場合は仕方ありませんし、その他の助成金でもせっかく政府が予算をつけて用意してくれている経済雇用対策を、正当に利用することを全否定しません。もともとこれらの原資には毎年経営者が収めている雇用保険料の中に、財源として組み込まれているものなのですから。しかし助成金はあくまでも不労収入です。上記2で延べた労働者が不労収入に頼る傾向が、経営者にも現れるのです。また助成金を受給するには当然その支給要件を満たす経営が必要なのですが、ひとたび甘美な収入が目の前に現れると、普段は良い経営者のはずが、品格を落とした経営者になってしまうことがあるのです。

 デメリットその4
 この助成金の対象になる休業者は基本的に雇用保険の被保険者です。しかし実際の現場では、雇用保険加入者だけとは限りません。しかし会社を休業にする場合、当然にこれらの被保険者でない人も、休業を検討することになりますが、休業手当の支払い義務はあっても、助成金の対象にはなりません。完全に持ち出しになるということです。また中小企業の場合、一定の重要人物には仕事の関係上、休業されられないことがあり、必然的にその他の軽易な業務に従事している人などに休業が偏ることがあります。つまり普通に働いて給料を得る人と、休んで給料を得る人が混在することになり、ここに軋轢が生じる素地があるのです。

 私は一刻も早く、こんな助成金を利用しなくてよいまともな社会が戻ってくることを節に希望しています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月25日 | Category: General
Posted by: nishimura
別れ際を大切にしよう~特に会社都合の場合~(H21.5月号の記事)

 ここ近年、労使紛争が激増しています。不幸にして労働組合に加入されたり、訴訟沙汰になったり深刻なケースに発展することも少なくありません。中にはやくざまがいの恫喝をもって、威圧的に迫ってくることすらあり、その度に「もう人を使うのが怖くなる」という心情を吐露される経営者もおられます。
 本当に人を使うのが難しい時代になりました。でも人を使わずして、経営を行ってゆくことはできません。どうしたらもう少しスムーズな労使関係が築けるようになり、100%紛争を回避することは不可能だとしても、その確率を減らすことができないものでしょうか。
 私がこの問題を考えるとき、大きな視点では①如何に不良社員の入社を水際で防ぐか、②今いる社員に不満が鬱積しない労務管理を如何に行うか、にかかっていると思うのです。それには以下3つのポイントがあると考えています。そのポイントとは、
1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)
2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)
3.おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること(特に雇い入れのルールを曖昧にしない)ということです。以下それぞれ解説します。

 とここまでは、前々回3月号の冒頭記事であり、上記1,2のポイント解説は既に述べました。3つ目のポイントだけ、次回以降の宿題になっておりましたので、今回はその続きです。やはり一番の要諦は採用してはいけない人を如何に的確に水際で防ぐかをシステム化することですが、この採用事務に関してはかつても度々記載してきましたのでこの項では省略します。
 また入社後の労務管理で、モチベーションを喚起・継続させる人事制度と心理的報酬が欠かせないことも言うまでも有りません。心理的報酬に関してはここ最近、中心的課題として取り上げてきたところです。人事制度に関しては、また機会を見てお話します。今回は労務管理の最後の部分、離職についてです。これを大きく分類すると以下の通りとなります。
1.辞職(本人からの退職の意思表示) 2.自然消滅(勝手に来なくなる) 3.死亡 4.定年 5.期間満了 6.合意解約(会社からの退職勧奨が多い) 7.解雇(普通解雇、整理解雇、懲戒解雇)

 この中で特に5から7における別れ際が大切です。といいますのも、労働関係のトラブル事案は私の経験上も公的統計上も、この手の離職をめぐって起こることが一番多いからです。しかもトラブルになっているときは、得てして法的な問題というよりも、「恨み」による、感情的なしこりによるものが多いのです。これは普段から鬱積してきた不満もありますからなかなか難しいものがありますが、それでも経営者は別れ際に一工夫欲しいものです。
 そこで私が常に別れ際に関して一つだけアドバイスしていることを申し上げます。そしてこれにより離職後、トラブルを拡大させることなく終了していることが多いのです。これからはいかなる事由であれ、従業員と別れるときはこのようにされてはいかがでしょうか。

1.握手する
離職日には必ず社長が立ち会い、別れ際に握手をしてください。それも片手ではいけません。両手です。こちらから両手を差し出して相手の手を握る感じです(選挙の時、議員が両手を差し出して有権者と握手するイメージ)。心理学的には接触効果といわれるもので、印象の向上につながります。
2.頭を下げる
 握手の際、相手の目を見るとともに、頭を下げましょう。「今迄ご苦労さんでした。ありがとう。」の一言を添えて。
3.今後の幸せを祈念して送り出しましょう。
「(ウチの会社では○○さんの力を充分活かせなかったかもしれないが)次の会社(今後の人生)では、もっともっといい人に出会って、幸せになってくれ。」という感じで、今後の人生の成功を祈る気持ちを伝えましょう。

 ただこれだけです。特に今の経済情勢では、退職勧奨や整理解雇も増えることが予想されます。相手に特に非がない場合は必ずそうして頂きたいし、また相手に問題がある場合でもそうです。社長にプライドが有るのは分かります。むしろ社長から見て問題のあるその従業員に、文句を言いたい気持ちも分からないではありませんが、そこはぐっと我慢です。これだけのことでその後の不毛なトラブルを回避できるとしたらそれでいいではありませんか?
 
 追記 上記の感情的配慮とともに、退職願もしくは退職合意書を必ず、残すようにしてください。これもおざなりに出来ない、別れ際の重要な手続きです。またその他検討すべきことに、1.離職日までの就業及びその間の賃金はどうするか、2.離職票の離職事由をどうするか、3.退職金等何らかの手切れ金は必要か、 4.有給休暇の残日数をどうするか等があり、個別に検討が必要な事項です。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月25日 | Category: General
Posted by: nishimura
リストラ(整理解雇)をしたいと、頭をよぎったときに・・・クリアすべきハードルがある。(H21.4月号の記事)

今年に入ってから金属関係の製造業を中心に雇用調整を行う企業が増えてきています。仕事がないため、従業員を休ませざるを得ず、それに対する助成金の申請も日を追って増えています。この動きは今のところ製造業が中心ですが、早く底を打たない限り、サービス業や販売業にも波及してくるでしょう。従業員を休業させて解雇を防止するのもワークシェアリングの一種であり、これによりこの危機的状況を回避できることを望みます。
 しかしまだまだ底を打たず、この状況が一時的なものではなくなってきた場合、企業は整理解雇を選択肢に考えなければならない局面が出て来るかも分かりません。そこで今回は、この整理解雇についてその留意点を述べさせていただきたいと思います。
 そもそも解雇とは何か。言うまでもなくそれは使用者からの一方的な労働契約解除の意思表示です。これについて法律は「解雇は客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)とされています。いささか分かりにくいので簡単に申しますと、「客観的に合理的理由」とは、「解雇に値する事実があって、それが第三者にも証明でき、その事実が就業規則の解雇事由となっているか」という意味です。また法後段の「社会通念上相当であると認められない場合」とは前段要件を仮に満たしたとしても、「いきなり解雇に処するには酷に過ぎないか、他に方法はないのか」といったような意味です。このような考え方は解雇権濫用法理として判例上も確立しており(日本食塩製造事件他)、解雇を不自由なものにしています。
 通常、解雇は労働者にも何らかの帰責事由があるのが普通ですが、整理解雇においては労働者に責任がないところで解雇されることから、上記の解雇権濫用法理を更に進めて、より厳しい判断基準を日本の司法は蓄積して来ました。それがいわゆる整理解雇の4要件と呼ばれるものです。その4要件とは①人員整理の必要性、②解雇回避の努力、③人選の合理性、④労使の誠実な協議、のことでこの4つのハードルをすべて飛び越えないと、その整理解雇は解雇権の濫用とされているのです(最近は少し違う考え方も登場しているがここでは割愛する)。それぞれ簡単に解説を加えましょう。

①経営上の人員整理の必要性
これは企業に経営上の危機が存在する必要があります。この危機は必ずしも倒産必至の状況までは要求されず、将来の危険に対する予防的措置という場合もあります。しかしいずれにしても、人員整理をしなければならない経営上の事由を従業員だけでなく、第三者にもきちんと説明できる事情の存在は不可欠です。
②解雇回避の努力を尽くしたこと
これは解雇する前に、他の努力をしたかが問われます。その努力とは例えば、配置転換、残業削減、新規採用の停止、昇給停止、一時金削減、希望退職の募集、経営上の経費削減などですが、これらすべてを行う必要はなく、こういったことをしてきてもなお、余剰人員を解雇せざるをえないという証明が必要なのです。
③人選の合理性
通常、整理解雇は、一部の人間を指名解雇するものであるため、その指名された人選に合理的理由があるかということです。例えば、基幹社員より臨時社員をまず検討するとか、解雇しても生活への影響が少ない者とか、あるいは出勤成績が悪い者、帰属性の薄い者などその選定に納得のできる説明ができる必要があります。
④労使の誠実な協議があったか
これは整理解雇せざるをえないやむを得ない事由を、誠実に説明義務を果たしたかということです。当たり前のことといえば当たり前ですが、この協議過程も重要な判断のモノサシになります。

このように見てくると、経営が厳しいからと安易に解雇するのは法的にも高いハードルのようです。また中小企業は大手のように経営指標から判断して、従業員の顔や家族を見ずに、ばっさりやることは出来ないのではないでしょうか。また一度経験者がいなくなると、その後回復したときに、後継者を直ぐに採用するのは至難の業でしょう。
また身を軽くしたい思いでやったことが、深刻な労使紛争に発展し、かえって時間、手間、コストと精神的負担を要することもあります。やはり慎重に考えるべきでしょう。
それでも他の従業員、得意先その他のことを考えて、生き残るためにはやはり必要であるとの高度な経営判断に基づくものならば、それはれそれで尊重いたしますが・・・・。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月24日 | Category: General
Posted by: nishimura
口下手でもいい、経営者は「一言(ひとこと)」を大切にしよう!(H21.3月号の記事)

 ここ近年、労使紛争が激増しています。不幸にして労働組合に加入されたり、訴訟沙汰になったり深刻なケースに発展することも少なくありません。中にはやくざまがいの恫喝をもって、威圧的に迫ってくることすらあり、その度に「もう人を使うのが怖くなる」という心情を吐露される経営者もおられます。
 本当に人を使うのが難しい時代になりました。でも人を使わずして、経営を行ってゆくことはできません。どうしたらもう少しスムーズな労使関係が築けるようになり、100%紛争を回避することは不可能だとしても、その確率を減らすことができないものでしょうか。
 私がこの問題を考えるとき、大きな視点では①如何に不良社員の入社を水際で防ぐか、②今いる社員に不満が鬱積しない労務管理を如何に行うか、にかかっていると思うのです。それには以下3つのポイントがあると考えています。そのポイントとは、
1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)
2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)
3.おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること(特に雇い入れのルールを曖昧にしない)ということです。以下それぞれ解説します。

1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)について

 今の労働者は、今までのように会社にも非があるけれども、自分も足りないところがあるから文句を差し控えよう、なんて謙譲の心を示す人の割合が、相対的に少なくなっています。ある労働基準監督官と話をしていても、「今の労働者には問題がある人が多いですね。他の事は棚に上げて、労働基準法上の権利だけは主張される。諌めようとするとある労働組合からは、労働基準監督署は経営者寄りだと非難を受けている始末です」とおっしゃています。
 経営者に悪意がある場合は論外として、知らずに法違反を犯し、それを知っている労働者から指摘を受けるケースがあります。今の時代は知らなかったでは許されない不寛容な時代になっています。せめて専門書とは行かなくとも実務書レベルの労働基準法に関する書物は一度お読みいただければと思います。その上で、我々社会保険労務士とか弁護士とか専門家を傍において、使いこなしてもらえれば、相当程度の紛争は未然に回避できます。自ら勉強し身近な相談相手を作ることは是非行って欲しいものです。

2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)について

 私はかねてより、労務は感情、労務は心理学と訴えてきております。これは現在働いている従業員との関係において、むしろ前述の法律よりも非常に重要な観点です。にもかかわらず、総論的に申し上げて経営者の方が苦手にしている分野ではないかと推察するのです。例えば人を褒めることの効用は誰でも聞いたことがあるはずですし、感謝する心が大事だとか、相手の話を否定せずよく聞くだとかは良好なコミュニケーションにはいいことだ!!とものの本には書いてあります。でもコーチングだとか実際やるのはちょっと難しい。だったらもっと簡単な方法はないものでしょうか。そこで思いついたのはたった一言の癖付けです。
 例えば・・・・
褒めるというのに抵抗があるなら一言         「さすがやね」「すごいわ」
ありがとうと感謝するのが気恥ずかしいなら一言  「すまん」「助かるわ」「わるいなあ」
期待を込めるのが上手く言えないなら一言     「ほな、頼むわな」
相手の人格を認めるのが苦手なら一言  (話しかけるとき)「ちょとええかな」(話を聞き終わったとき)「よし分かった」

 関西弁は非常に便利です。いかがでしょう。これくらいならすっと言えないでしょうか。すでに自然に出来る方や、これ以上のコミュニケーションを取れている方には蛇足だったかもしれませんが、もしご参考なるなら是非お試しください。その際一番良いのは心から言うことですが、せめて必死に演じる努力はしたいものです。
3つ目のポイント「おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること」については次回以降に譲りたいと思います。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月24日 | Category: General
Posted by: nishimura
中小企業緊急雇用安定助成金(H21.2月号の記事)
従業員をしばらく休業させれば、ピンチを乗り切れる可能性がある企業へ!!

景気が本格的に悪化してきました。昨年秋までは、まだ顕著な影響はみられませんでしたが、年が明けて、急速に受注量が落ち込む企業が散見されるようになっています。そんな時、どうしても考えてしまいますのが、希望退職の募集、整理解雇などのリストラです。しかし、もし解雇を回避するために、しばらく従業員に休んでもらって賃金を減額して皆で痛みを分かち合い、交代でワークシェアすることにより乗り切れる可能性があるなら、「中小企業緊急雇用安定助成金」を活用する方策があります。この助成金は従来からある同趣旨の雇用調整助成金を昨年12月から中小企業向けに要件を大幅に緩和して、実施されているものです。

その概略は以下の通りです。
◎概要
景気変動により企業業績が悪化したために生産量が減少し、事業活動の縮小を余儀なくされた中小事業が労働者を一時的に休業させた場合に、その間に支払う休業手当の一部を助成する制度(労基法では会社都合で休業させると、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが義務となっている)

◎支給要件(1または2のいずれかを満たすこと)
1.最近3か月間の月平均生産高(売上)が前年同期に比べ減少していること(前期決算等の経常利益が赤字であることが必要)
2.同期間の生産量が5%以上減少していること(赤字であることの確認は不要)

◎支給額
休業手当に相当する額の5分の4(ただし、1名1日当たり7,730円が限度)
助成対象は雇用保険被保険者に限る

◎受給期間
原則1年以内で雇用保険被保険者数×100日までが限度

◎事前計画の届出
休業を開始する給与締め切り期間の初日までに実施計画を提出することが必要

◎その他原則的に必要なこと
1.就業規則及び賃金規程を作成していること
2.完全週休2日制でなければ変形時間労働制の協定を労基署へ届け出ていること
3.従業員をきちんと雇用保険に加入させており、労働保険料も納めていること
4.賃金台帳、出勤簿、決算書、生産高(売上高)集計票などの帳簿がきちんと整備されていること

※もちろんこれらのほかにも細かな要件があります。

なおこの助成金関連の資料のアドレスは以下の通りです。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/pdf/koyouiji.pdf
(中小企業緊急雇用安定助成金パンフレット)
http://www.worknavi.niigata-roudoukyoku.go.jp/sanjo/雇用調整助成金パンフ.pdf
(拡充前雇用調整助成金のパンフだが、大枠は同じで、具体的書き方見本など参考になる)

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月24日 | Category: General
Posted by: nishimura
大企業のリストラをまねするな!中小企業は社員を雇う品格を保持しよう。(H21.1月号の記事)

 あけましておめでとうございます。旧年中はご愛読いただきましてありがとうございました。本年も出来うる限るみなさまのお役に立てる情報を提供すべく、このメルマガを発信してゆきたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。
さて昨年は、トヨタやソニーを始めとする多くの大企業の人員削減報道がなされました。派遣や請負、期間従業員の打ち切りだけでなく、正社員にもその影響が出だしています。今年はさらに追い討ちをかけて、製造業の派遣可能期間が法定上限の3年を迎えるいわゆる2009年問題も控えており、更なる失業者が溢れることが見込まれています。
私は普段、経営者の味方を標榜する使用者側の社会保険労務士として仕事をさせていただいておりますが、昨今の人を雇うということに関する世情を見ておりますと、経営側に強い違和感を覚えざるをえません。いつから日本企業の経営者は従業員を、物品経費の一部と考えるようになったのでしょうか?
もちろん労働者側にも大きな原因があることは承知のうえでのことです。

 この問題に限らず、中小企業においても、経営者の人を雇うということに対するモラルが、劣化しているのではないかと感ずることがよくあります。例えば、経営理念を作成している会社は数多くあると思いますが、その理念に、そして社長の言葉の中に、従業員の幸せが見られないのです。批判を恐れずに直言すると、会社を経営するということの意味をとことん突き詰めれば、
1.お客さんに幸せを提供すること
2.従業員を幸せにすること 
の2点に集約され、あとは枝葉だと思うのです。非常にシンプルに考えています。大企業ならこれに株主利益が加わるのでしょうか。

 かつてホリエモンのころ、会社は誰のものか、なんて論争がありましたが、そんなこと議論するまでもなく、そこで働いている人(役員を含む)のものに決まっています。確かに会社法上はそうはなっていませんが、現実的にそうなのです。
しかしです。最近経営者とお話しすると、この従業員の幸せという視点があまり感じられなくなりました。雇った以上は責任があり、ウチの会社で幸せになってもらうという強い意志が伝わってこないのです。ウチの会社で結婚し、子供を作り、家を建て、車を買う・・・・・。そうやって世間並みに幸せになって欲しいと願う志が希薄に感ずるのです。創業者なら思い出してください。かつて初めて人を募集し、ウチの小さなオンボロ会社に果たして来てくれるだろうか、とやきもきした気持ちを。面接後、本当に出社して来てくれたときの喜びを。後継者の方もそうです。人は最初から「ある」のではないことを。

 ここ5,6年の間に個人と会社の紛争が激増しました。中小企業が労働法を完璧に守るのは困難で、それはあたかも法定速度を必ずしも守れない道路交通法のようなものです。でもそこだけ見れば、違反は違反です。それを突っ込まれると、現実世界が成り立ちません。しかし、経営者に悪気がなく、従業員の幸せを願う心があれば、表面化しない紛争もあるのです。経営者の従業員を思うその人間観は、やはり普段の言葉遣い、表情、行い、処遇に出ると思うのです。それは従業員に微妙に伝わることになるでしょう。鏡の法則です。

 大企業には大企業の論理があるのかも知れません。それは私には分かりません。でも中小企業は中小企業らしく、従業員の幸せを家族の幸せとして感じましょう。大企業のリストラをまねするな!中小企業は社員を雇う品格を保持しようではありませんか。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月19日 | Category: General
Posted by: nishimura
簡単、「あした やるべき 順番シート」を活用して、効率を少しだけアップしよう!(H20.12月号の記事)
~景気後退局面だからこそ取り組めることがある~


 景気の先行きが非常に怪しくなってきました。今まで好景気に沸いてきた東京や名古屋圏、大企業、金融機関、中国などいずれも不透明感が増しています。大阪でずっと仕事をしている者として、この不況は今に始まったことではなく、もともとずっと悪いというのが率直な実感ですが、今後これらの外部要因により、ますます厳しくなって行くと警戒する経営者が増えています。 私どもがコンサルさせていただく労務管理は、このような景気後退局面にある場合、どうしても経営上劣後におかれることが多く、経営に余裕がないと、なかなか本腰を入れて取り組みしにくい分野と言えます。
 ここ最近、私は時間外労働を削減しようという趣旨のメルマガを発信しておりますが、今回のテーマもこれに通ずるところがあり、かつ景気悪化局面だからこそ、無駄な残業代を削減して経費を圧縮し、むしろこれをチャンスとして業務効率のアップを図り、しかも簡単にできる方法はないものかを模索しました。今回ご提案するのは、「あした やるべきこと 順番シート」の活用です。
 
 これは以下のアドレスからダウンロードできます。
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5

 ご覧になっていただければ分かりますが、前日にあしたやるべき業務を列記し、優先順位をつけましょう、というただそれだけのことです。極めて簡単、無理なく継続でき、無茶苦茶成果が出るというわけではないにしても、確実にステップアップできるものと考えております。仕事が出来る人は、朝その日の業務を頭で考えるのではなく、紙に書き出して視覚化し、意識にインプットしていることが多く、それはメモ程度の紙に書き出していることもあるでしょう。はなから自己管理が出来ている人は不必要ですが、どうもそうでない人で仕事の段取りが悪い人にはいいでしょう。こういう人は自分で工夫するのが苦手ですから、このような簡単に継続できる仕掛けは有効だと思います。

 あまり過度に残業を抑制すると、残業でしか稼ぎしろがない会社の従業員には不満が溜まることがありますので、適度なバランス感覚が必要です。しかし割増賃金を支払って製品やサービスをお客様に提供したとしても、売値に割り増し分を転嫁することは出来ません。またもともと残業しなくても、処理が可能な分量であるにもかかわらず、段取りや優先度管理が悪いため、非効率な処理になっていることもあります。不況期こそ体質強化をするチャンスと捉え、簡単なことから始めて行きませんか?

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月19日 | Category: General
Posted by: nishimura
タイムカードは小切手と同じ、だから管理を厳格にしよう(H20.11月号の記事)

 相変わらず長時間労働が常態化している会社があります。労働基準監督署は毎年、年度方針として、長時間労働による健康障害を防止することを基本方針に掲げており、20年度においても「長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害防止対策の推進」と標題で、最重点項目のトップに挙げています。
よく世間でサービス残業の摘発に関する新聞報道がなされますが、先般発表された厚生労働省の統計によると、その未払い額は企業平均では1,577万円、労働者平均では15万円となっています。http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1024-1.html
 これらはいわゆる長時間労働を抑制するためには、ただ単に「時間を減らせ」と口だけで音頭を取っても効果が薄いので、残業代とセットになれば痛みが相当伴うことから、方便として行われている側面があります。

 ここからが本題です。タイムカードを労働者の自主性に任せてガチャガチャと打刻させるのは、あたかも白紙の小切手を従業員に委ねているようなものです。あとで打刻されている入社から退社までの時間分を請求されても、会社はほとんど反証できません。つまり出るところへ出れば、打刻時間帯分を1分単位で支払うはめになりかねないのです。本来タイムカードは入社退社の時刻でなく、始業終業の時刻を管理するものですが、現実的には会社へ入った時刻と会社を出た時刻で打刻されていることがほとんどではないでしょうか。

 ただ始業時に、全員が業務開始時刻に押すのは無理です。これは仕方がありません。しかし終わりの時刻は退社時刻ではなく、きちんと業務終了時刻で押してもらいましょう。また無駄な残業が常態化している場合は、事業所内に「残業削減ポスター」を貼り、タイムカードの傍にはだらだら押しをしないように喚起する「張り紙」をしましょう。どうしても会社の指示によらない残業を行う場合は、事前に「申請書」を出さして、本当に必要な残業なのかどうか監督者が管理しましょう。雛形は以下のアドレスからダウンロードできます。
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5
対象文書名  (ノー残業デーポスター)(残業削減ポスター)(タイムカード打刻のお願い)(時間外・休日・深夜勤務届出書)(時間外申請書 1ヶ月方式)


 少なくとも会社が主体的に長時間残業を黙認していない社風を醸成することが肝要です。また特に現場作業員などは残業しなければ給料が上がらない仕組みのため、長く働いて給料を稼ぐ習慣が体質に染み込んでいることがあります。例えば毎日2時間残業する人に、「2時間分残業がなくても払うから、早く帰るようにしてくれ」と言うと、今まで定時で終了していなかった仕事を定時で完了させることがあります。これなどは正に8時間で本来出来る仕事を10時間でこなすリズムになっている証です。しかし従業員の自主残業は、法律上も実はおかしなことなのです。なぜなら労基法では使用者に原則時間外労働を禁止し、就業規則や労働契約書に残業命令の根拠があり、事前に労基署へ時間外労働の限度範囲を届け出て(36協定)、はじめて可能であり、しかもその対価には最低25%(休日は35%)の割り増しを義務付け、刑罰も担保されているのです。つまりもともと使用者が手続きを踏んだ上で命ぜられるものであり、勝手残業はありえません。それはあたかも使用者が注文していない商品の代金が、後から代引きで請求されるようなものです。

 以下、残業による少々怖い話を列記しておきます。
1.冒頭のように労基署へ申告されると、2年間に遡って差額分を支払わされる。その額が一人平均15万円ですと、×人数分・・・・
2.1ヶ月80時間を超える残業が常態化していると、脳心臓疾患で倒れたとき、業務が有力な原因とみなされ、労災請求となり調査を受けるはめになる・・・・
3.2の場合で労災だけで終わればまだしも、家族などから民事上の不法行為もしくは安全配慮義務違反を問われ、訴訟になることも。その金額は億単位もある・・・・
4.旦那の帰りが遅いと、本人とは問題なくても奥さんに慢性的に不満がたまっており、転職を勧めたり、会社にモンスター的クレームをつけてくる・・・・
5.労働条件が劣悪だということで、問題のある合同労組(ユニオン)に駆け込み、半ばやくざまがいの交渉が始まる・・・・

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月19日 | Category: General
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承認カードでモチベーションをアップしよう(H20.10月号の記事)

 経営者に質問です。「従業員のやる気を維持、継続させるには、何が必要でしょうか?」
いい給料?休みの多さ?快適な職場環境?・・・・・・

 いずれもブーです。これに関して従来から二つの確立された実証理論があります。まず一つはハーツバーグという臨床心理学者が唱えた二要因理論です。
ある特定の要因が満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるというのではなくて、「満足」に関わる要因と「不満足」に関わる要因は別のものであると考えられています。
 満足に関わるのは、「達成すること」「承認されること」「仕事そのもの」「責任」「昇進」など。これらが満たされると満足感を覚えるが、欠けていても職務不満足を引き起こすわけではありません。これらは「動機付け要因」と呼ばれます。
 一方、不満足に関わるのは「会社の政策と管理方式」「監督」「給与」「対人関係」「作業条件」など。これらが不足すると職務不満足を引き起こしますが、満たされたからといっても満足感に繋がるわけではないとされています。単に不満足を予防する意味しか持たないという意味で「衛生要因」と呼ばれます。

 またアメリカの心理学者マズローは欲求理論を唱えました。これは人間の行動を引き起こす欲求は次の五つの階層を持つとした理論で、人間はこの順番でモチベーションが高まるとしました。
   1)生存の欲求(食欲、睡眠など生命の維持に関する欲求で労務管理で言うと生活できる賃金など)
   2)安全の欲求(危険や不安から逃れたい、衣服や住居など生命に関するものを安定的に維持したいという欲求で労務で言うと安定した雇用など)
   3)社会的欲求(帰属の欲求ともいい、集団に所属し仲間からの愛情を求める欲求)
   4)自尊欲求(承認の欲求ともいい、他人から尊敬されたいとか、人の注目を得たいという欲求で、名声や地位を求める出世欲もこの欲求の一つ)
   5)自己実現欲求(各人が自分を高めていこうとする欲求のことで、潜在的な自分の可能性の探求や自己の成長、発展を求める欲求)
 人間は第1段階の生存の欲求が満たされると、より高次元の段階の欲求(第2~第4)を求めるようになり、最終的には第5段階の自己実現の欲求を求めるようになるとしています。


 これらの考え方を中小企業も応用すべきです。むしろ労務資源を持たない中小企業ほど従業員のモチベーションの維持、向上のために利用すべきでしょう。そこで提案です。
「承認カード」で従業員を素直に認めちゃいましょう。具体的には以下のアドレスに「いいとこ発見 お知らせカード」がダウンロードできるようにしてあります。これは誰かが他の社員のいい行動や振る舞いなどを感じたら、このカードに記入して貼り出すようにするものです。これでいいとこを発見したら、直ぐに承認しちゃいましょう。

ダウンロード → http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月17日 | Category: General
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能力不足、勤務態度不良で解雇したと思ったとき (H20.9月号の記事)

昔から能力不足とか執務態度が悪いとかで従業員を解雇したいとの相談を良く受けます。法的には以下の2点を検討する必要があります。
1.労働基準法上の解雇手続きを踏んでいるか
2.民事上の解雇権の行使が濫用に当たらないかどうか

1.労働基準法では解雇の場合、30日以前の予告か、30日分の解雇予告手当の支払か、その両方の折半(10日前に予告して20日分の予告手当の支給など)を求めています。つまり労基署段階ではこの手続きを踏んでいれば、問題はありません。ちなみに予告手当は給与とは別で支払うことが望ましいですが、給与明細に入れるときは非課税になります。科目は退職金勘定になります。

2.ただ手続き上は上記の通りとしても、民事上有効かどうかは別問題です。いわゆる能力不足や勤務態度不良による解雇は予測可能性が困難です。一般論としては、企業の規模や職務内容、採用理由(特に職種限定採用か、管理職採用か)、勤務成績や態度の不良の程度(解雇をもって臨まなければ為らないほどか)、回数(繰り返し起こしているか)、改善の余地(指導すれば何とか為るか)、指導教育の程度(何度も警告、教育したか)、他の労働者との均衡(同様事案で不問にしている人はないか)など、総合的に判断されることとなります。

 後ほど解雇の効力をめぐって紛争に至った場合を想定して、こういった事由で解雇に発展する場合、いかに会社が常に指導、注意、警告を行なってきたかを書証で残しておくことが肝要です。例えば初めのうちは口頭による注意から始まり、改善しないときは指導書や勧告書なる文書で記録を残します。それでも従わない又は改善しない場合は更に踏み込んで始末書、減給、出勤停止等の段階をおった制裁処分により、解雇する前に様子をみます。そしてなおダメなときに初めて解雇できるくらいの辛抱が求められるのです。また制裁罰を課すときは、就業規則にその根拠規程がないとできません。


これらは、解雇に本人が納得せず、民事訴訟に及んだ場合の話です。

また法律論だけでなく以下の点も、会社が内々に考慮しておくことがいいでしょう。
1.有給休暇の残日数をどうするか(交渉によっては買い上げもある)
2.雇用保険の受給資格はあるか(自己都合で1年、解雇で6ヶ月)
3.離職票は普通解雇扱いにするのか懲戒になるのか(退職合意書を取って本人の為にすぐもらえるように解雇扱いすることも)
4.退職金は考慮するのか(所謂手切れ金)
5.仮に解雇としても合意解約の形で文書が取れるのか(後々の為に安心)


 ここからは法律論ではなく感情論です。
同じ解雇でもモノは言い様、うそも方便。できるだけ本人の感情に配慮すべきです。例えば本人のことを慮るようにして、「今までの勤務状況をみているとこのままウチの会社で続けるのは難しいんじゃないか。このままでは、○○さんを会社は評価できないし、つまりこれ以上重要なポジションで仕事を任せることもなければ、給料も上がらない。ボーナスの査定も低くなる。支給しないこともあるだろう。恐らく同僚や後輩にも抜かれ、プライドを傷つけられることになるだろう。まだまだ今ならやり直しは効くと思う。残念ながらウチの会社では浮かばれなかったが、きっと広い世の中、○○さんがもっと輝いて自己実現できるところがあるだろう。今のうちにお互いきれいな形で分かれた方がお互いの為になるのではないか。じっくりよく考えてみてはどうか」なんて感じで、歩み寄り、合意解約に持ってゆければ、後顧の憂えなしです。条件を出せば応じる場合は、出すのも一計でしょう。
とにかくモノは言い様です。
 
 くれぐれも安易な解雇で無用なトラブルを起こさないことです。出来が悪くても、雇った責任があるのですから。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月17日 | Category: General
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試用期間の基準を明確にしよう(H20.8月号の記事)

 多くの会社で試用期間が設けられています。これを明確に定義した法令はありませんが、一般的には「採用にあたり一定の期間内におけるその者の勤務状況によって人物、性格、能力、経験等についてその者が真に正式従業員とするにふさわしいかどうかをテストする」ものとされています(労働用語辞典)。そしてそれは1ヶ月から6ヶ月程度の範囲でなされ、3ヶ月としているところがい多いようです。 またこの試用期間中は正式採用した後よりも民事上広い解雇権が認められ、労働基準法上も14日以内の場合は解雇予告も予告手当の支払いも必要ないとされています。つまり本採用前に、使用者には広い許容範囲の権利が認められているのです。
 しかし実務の現場では、この試用期間が漫然とやり過ごされていることが多いように思います。つまり本採用されるためには会社として何を重視し、それが満たされないと会社が判断したときは、本採用へ移行しないという基準が、労使共に明確になっていないことが多いのです。 これではいくら会社が試用期間と言っても、応募者はテストされている期間と認識せず、結局本採用されている状況と変わらないこととなってしまいます。そこで雇用契約書を交わすときに、きちっと試用期間の意味について説明し、次のように明示してはいかがでしょうか。これは当事務所で行ってるサンプルです。

試用期間:平成○年○月から平成○年○月○日
本採用移行するための条件:試用期間中の執務態度(特に協調性と従順性及び別紙「守るべき5か条」)を勘案して判断する。本採用するときは再度労働条件を見直す。

別紙 守るべき5か条

1.分からないことは聞く。
分からないことは多分こうだろうと勝手に推測してやるのではなく、遠慮なしに尋ねること。

2.見直し。
一度作成したもの、入力したものでも、間違いがないか必ず見直しすること。

3.メモする。
忘れるかもしれない、覚えられないかもしれないことはメモして書きとどめておくこと。

4.報告
お客さんの所で何かあったとき、特に悪いことがあったときは必ず報告すること。

5.周りの皆と協調する
小さな職場では周りとの協調的な執務態度がとても大切。和を乱す、自分勝手は厳禁。


 このようにしておくと、少なくともこういったことがテストされていることが分かり、意識付けにもなりますし、使用者としてもこれを重点的に指導してゆくこととなります。
 ただ一つ勘違いがないようにお願いしたいのは、試用期間と期間契約とは法的性格が異なります。試用期間が満了しても期間契約でないため、その期日をもって自動的に契約終了はできません。本採用へ移行しない場合は、本人との合意がない限り、改めて解雇予告するか予告手当が別途必要です。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月17日 | Category: General
Posted by: nishimura
外勤仕事がある会社は、残業代が要らない、「みなし労働時間制」を適用しよう!!(H20.7月号の記事)

 営業など外勤活動において、会社がその労働時間を正確に把握できないときは、裁量労働制の一種である「みなし労働時間制」を適用することができます。この場合は、社内で行った業務を含めて、所定労働時間の労働とすることができ、残業代は発生しません。所定労働時間とは9時から18時とか、その会社で定めている正規の時間帯のことです。例えば、所定労働時間が8時間で午前中は事業場内で業務に従事し、午後から事業場外で業務に従事した場合、午後からの労働時間の算定が困難なためにその日全体としての労働時間の算定ができないのであれば、みなし労働時間制の適用ができ、原則として、その日は事業場内で業務に従事した時間を含めて全体として所定労働時間の8時間を労働したことになるというもので、始業終業時刻の前後にはみ出した時間が有っても、特段の指示でもない限り、8時間だけの労働になります。あくまでも使用者の具体的な指揮監督が及ばないことが重要で、例えば次のようなケースは該当しません。
①グループ活動において、労働時間を管理する人がその中にいる場合
②携帯電話などで逐一、会社から指示を受けている場合
③外出前に訪問場所や時間を予定し、その通りに帰ってくる場合
 つまり外出すると、従業員の自由裁量が確保されていることが必要です。また残業代が要らない「みなし」の場合は、通常その外勤活動が所定労働時間の7時間とか8時間程度でこなせる必要があり、普通にやっても明らかに10時間はかかるとかいう場合には、基本的に残業代が必要になります。
 この「みなす」という意味は非常に重たく、法律効果を固定させることを意味し、仮に18時終業の会社でタイムカードが毎日1時間オーバーで印字されていても、その各1時間分について残業代は発生しません。あくまでも18時までの労働で固定させるのです。このあたりが事実によって効果が覆る「推定」規定と異なるところです。
 従業員の自由裁量のある外勤職(ある程度の統制は可)のある会社は、この規定を上手に活用しましょう。具体的にはこうです。
①就業規則を整備し、みなし労働時間の規定を入れる。
②求人募集の段階で1行入れる。   ※みなし労働時間制の適用有りと。
③面接時にその意味をきちんと説明する。 例えば、当社営業はみなし労働時間制といって、一旦外へ出ると細かな指示命令はない代わりに、多少遅くなっても9時から18時の労働となり、残業代は付きませんと。
④雇用契約書をきちんと交わし、時間の欄に以下のように記載し、再度③の説明を行う。 時間:9時から18時(実働8時間) ※営業職はみなし労働時間制を適用し、前記時間帯を超えても、特段の指示のない場合は9時から18時の労働とみなす。

 また出来ることなら、営業手当などによって慰労する手当を付け、就業規則(賃金規程)に「営業手当は通常の時間を超えて労働することに対する定額時間外手当の性格として支給する」というような説明をしておく方が、なお良いと思われます。ただ品格に欠ける経営者は要注意です。いたずらに濫用し、かえってトラブルを招くだけだからです。



(参考)  労働基準法 第38条の2(事業場外労働)

 第三十八条の二  労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時問を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場においては、当該業務に関しては命令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。(以下略)

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月16日 | Category: General
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名ばかり管理職とはいかなるものか?(H20.6月号の記事)

★マクド裁判 
 さる1月28日に日本マクドナルドの店長が労働基準法上の管理監督者にあたるかどうかの判断が東京地裁から下されました。結論から申し上げると、マクドの店長は管理監督者に当らないとして、残業代の支払い(約750万円)を命じました。これはあくまでも訴訟を起こした1名の店長に対するものです。このニュースはテレビ、新聞が一斉にかつ大々的に報じたため、かなりセンセーショナルなインパクトを与えたようです。
 しかしこの裁判ではいわゆる管理監督者に対して、新しい判断の枠組みを示したものではなく、従来からある通達や判例法理の範囲から逸脱するものではありません。そして今回もそうですが、この手の紛争は会社側がほとんど敗れているのです(マクド裁判は現在控訴中で確定していませんが)。つまり残業代を払わなくていい管理者のハードルは極めて高いのです。一般的に誤解のある、管理職=残業代の要らない管理監督者という単純な図式ではありません。

文責 社会保険労務士 西村 聡
★管理監督者とは何か
 ここで改めて残業代の要らない管理者の判断基準をおさらいしておきましょう。大雑把に言って、以下の3要件をすべて満たす必要があります。
①一つ目の要件 経営者と一体的な立場にあるかどうか
 これはさらに以下の2要素に分解することができ、いずれかをクリアする必要があります。
 (1)経営の意思決定業務への関与(例えば経営方針、計画への参与など)
 (2)労務管理上の重要な権限(例えば基幹社員の採用、考課など)
 要するに会社全体にとって重要な権限や役割を有している必要があり、一部署に留まるとか、仕事内容が一般社員と大差がない状態では認められていません。
②二つ目の要件 勤務時間に自由裁量があるかどうか
 一般社員と同じようにタイムカードを打って、朝から晩まで拘束されており、出退勤に自由がない状態では困難です。
③三つ目の要件 管理者としてふさわしい待遇が講じられているかどうか
 例えば基本給水準が明らかに高い、役職手当が高額など。残業のある下位の従業員の年収を下回るようだとアウトで、相当上回っている必要があります。

★ものは考えよう
 従来私は、大手企業ですらほとんど認められない管理監督者が、中小企業で認められるのは極めて困難と考えていました。実際、先の判断基準からも分かるように、「役員と部長の違いは何なの?」と問いたくなるようなハードルです。特に1番目の要件は極めて高く見えます。
多くの拠点を有する大手企業の管理職がその守備範囲を超えて、経営者と共に会社全体に権限を及ぼすなどということは普通ありえません。しかし中小企業の場合はどうでしょうか。組織単位も小さく、しかも社長に近い位置関係で仕事をしているのが普通です。つまりむしろ大手企業の方が物理的に困難なシチュエーションであって、中小企業は社長の考え方、任せ方一つで単なる管理職を名実共に管理監督職にするのは大企業よりも近道かもしれません。ただ組織が小さい分だけ対象者の数も絞られることにはなりますが。
 
★ちょっとだけ具体策を考えよう
 経営者が「俺はこいつを管理監督者として処遇する」とまず腹を決めたら、このように実行しましょう。
①経営計画書を作成している会社は、その作成に管理者も巻き込みましょう。経営者の方針を伝えるだけでなく、自ら案を出させて作成に関与させることです。
 そして社長と共に経営会議に参加し、進捗状況や手直しなど発言する機会を与え、単に社長が演説するのを聞いているようなことは避けましょう。
②管理職はタイムカードを廃止しましょう。やることをやっていたら、所定労働時間をキチンと来ることを評価のモノサシにすることはやめましょう。完全月給制にして欠勤や遅刻があっても日割りはやめましょう。時間で仕事をする人間ではなく、中味(成果や役割)で仕事をする特別な責任があることを懇々と説明しましょう。
③一般社員がそこそこ残業しても、収入が逆転しないような役職手当を考えましょう。出来たら役職制度の整備と就業規則上の役職手当の整備は必要のように思われます。

 ただ仮に法律上の管理監督者には当らなくとも、管理職の旗を降ろすわけではありません。何のために管理職に任命しているのか、ただ単に残業代を逃れたいためだけなのか、経営者は今一度自問自答する必要があるかもしれません。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月16日 | Category: General
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労働者は働くことで権利だけでなく、義務もあることを認識しよう(H20.5月号の記事)
●労働者保護法もいいが、労働者義務法の検討も必要な時代になった
~労働者は働くことで権利だけでなく、義務もあることを認識しよう~

 本年3月1日より労働契約法が施行されたことを2月のメルマガで書きました。今までの労働基準法が刑罰を持って国家が介入してくる強制力を持つのに対して、労働契約法は民事上、使用者に実定法上の新たな義務を課した労働者保護法といえます。
例えば解雇をむやみにしてはいけない(第16条)とか、仕事で安全や健康が害されることにないように配慮する義務があること(第5条)や、労働条件を一方的に不利益変更できないこと(第9条)や、むやみに懲戒はできない(第15条)などなどです。これらの考え方は目新しいものではなく、今までの労働裁判の判例の蓄積により定着してきたもので、従来から出るところへ出れば拘束される考えだったのですが、これが一部とはいえ、実定法に明記された影響は大きいと考えざるをえません。
しかし、労働契約法には第3条(労働契約の原則)に以下の記載があります。

労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。(4項)
労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。(5項)

 つまり法文全体では労働者保護法であっても、ここでは労使ともに労働契約においては権利と義務があり、権利があるからといっていたずらに濫用することがあってはならないと戒めているのです。つまり使用者だけへの義務ではなく、労働者にもそれなりに働くことによって様々な義務があるのでが、残念ながらここではそれに全く触れていません。私が中小企業の労務顧問をさせていただいている様々な場面で、労使関係は必ずしも使用者ばかりが強い立場とは言えないことがあります。また親のしつけをまともに受けずに社会に出てくる労働者の激増と、情報源であり発信源ともなるインターネットという強力なツールによって自らの権利主張を濫用的に可能にさせることとなっています。
 これからの時代、使用者に一方的な義務を課すばかりでなく、労働者の方にも働くことへの義務を提示する必要があると考えるものです。このままでは勤勉で礼儀正しく、誠実な労働を提供してきた日本の社会風土が崩壊し、モラルハザードをおこすことを危惧せざるを得ません。それを立法化するのがいいのかは議論の余地がありますが、すくなくとも訓示の必要性は高まってきていると思うのです。さすれば労働者には労働契約によって、どのような義務が付随的に課されることになるのでしょうか?

 労働問題の大家である安西愈弁護士の分類に編集を加えると、以下のようなものがあります。
①完全な労務提供義務:不完全な労務にたいしては受領を拒否できる
②業務命令に従う義務:指示命令違反は黙認しない
③法令順守義務:違法、不当行為の禁止
④誠実義務:信義誠実を重んじる、背信行為はしない
⑤職場秩序維持義務:服務規律は守らなければならない
⑥人事権に従う義務:人事考課、異動、昇格、賞与などは使用者の専権事項
⑦業務の促進義務:能率向上、創意工夫、改善への努力や企業発展への協力
⑧忠実勤務義務:きちんと毎日仕事に来るのは当たり前
⑨善管注意義務:その立場の人なら当たり前に気をつけなければならないこと
⑩職務専念義務:勤務中の私用、離脱の禁止
⑪信用保持義務:会社や社員の信用名誉を傷つけない
⑫守秘義務:企業秘密、個人情報を漏洩してはならない
⑬内部告発ルール(公益通報者保護法)の遵守義務:いたずらに行政やマスコミに垂れ込めばいいというものでもない
⑭兼業禁止義務:兼業するときは許可が必要
⑮安全作業・自己保全義務:安全や健康管理は自己管理も大切

 このように労働契約によって、労働者へも実に様々な義務が発生するのです。有給を取るのは権利である、がしかし、やることをやらないで消化してはいないか?会社を辞めるのは勿論自由だ。でもそのいきなりの辞め方に問題はないか?指導や注意をしただけなのに、人格攻撃をしたかのような反応。勘違いもはなはだしい。仕事上の指導は素直に聞くべきだ。などなど、きりがない。勿論そういう人は一部の人ですが、この一部の確率が中小企業でもどんどん高まっているのが現実です。政府が労働者に甘く、経営者に厳しい労働政策を取り続けるなら、我々は可能な限りで自己防衛することを考えていかなければなりません。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月16日 | Category: General
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大した労務資源を持てない中小企業だからこそ、気をつけたい心の労務管理(H20.月号の記事)

 中小企業の労務環境は大企業と比べて、非常に劣るものがあります。ただ給料水準だけでなく、人事制度面、福利厚生面、教育・能力開発面、施設整備面など多岐に渉ります。これらお金や時間、労力が必要なものは、とても太刀打ちできません。これらは確かに重要なファクターではあるのですが、一方で労務は人間関係、もっと言えば感情や心理学の世界で動いています。ここがポイントなのです。
 そこでサラリーマン経験もある私が、その当時から現在に至るまで色々な所で感じたことを、一部ご紹介します。


1.顔を向けて話そう

 部下が質問してきたら、必ず部下のほうへ顔と体を向けましょう。パソコンを入力しながらとか、機械に目を落としたまま目を合わさずに、背中越しで話を聞くのは避けるべきです。分からないから分かろうとして、ミスをしたくないからミスをしないように聞いたのに、そのような態度だと邪険にされた印象が残り、今後聞こうとする意欲を削ぐこととなるでしょう。どうしても忙しいなら、今はどうしてもダメな旨をちゃんと言い、改めて上司から問いかけましょう。

2.忙しいは禁句にしよう

 部下が仕事のことで尋ねてきたとき、「今は、忙しい!」とやるのは考えものです。得てして無意識に言ってしまう慣用句ですが、結構言われたほうは傷つきます。周りに誰か居る前で言われると尚更です。「忙」という字は、心を亡くすと書きます。忙しい!と言ったあなたには、周りから見て嫌なオーラを出しています。

3.小さな約束はちゃんと守ろう

 部下 「社長、手袋がぼろぼろで新しいものと交換したいのですが、在庫がありません」
 社長 「分かった、分かった。入れておくわ」
 しかし1週間たってもぼろぼろのまま。このような些細な約束が守られないと、社員の不満が鬱積していきます。社長にとっては何気ないことでも、向こうは必ず覚えているものです。

4.言行を一致させよう

 部下に「メモを取れ」と命じている光景を見ます。しかし私がかなり細かいお話をしているにもかかわらず、手ぶらでお聞きになる方があります。本当に頭だけで覚えられるのでしょうか。「だらしないかっこすな」という人もあります。でもその人は第2ボタンまで開けて、ノーネクタイでサンダル履き。これでは言葉に説得力がありません。立派な言葉に納得するのではなく、言葉の背景で納得するのです。

5.ありがとうと言おう。

 褒めて育てるという言い方をよくします。でも実際に部下と接していると、結構褒めにくいものです。何故だかよく分からないけれど、言いそびれてしまうこともあります。しかし「ありがとう」「助かった」「ごめんな」「さすが」「○○さんのおかげや」ならどうでしょうか。これだけでも下の者の受け止め方はかなり違います。「おいしい」と言わずに当たり前のように晩ご飯を食べていたら、ある日突然熟年離婚なんていう人間関係に似ていると思うのです。

6.夢を語ろう

 中小企業の一般的な傾向として、同族オーナー会社、働く場所は一つ、いつも同じ顔ということがあります。これはつまり一旦その場所で、その人の下で働くことになれば、退職しない限りずっとその人の下で一緒ということを意味するのです。仕事も今のまま、役割も今のまま、人間関係も今のまま、給料も今のまま・・・・。
この状態が一生ずっと続くのかと悲観した瞬間にモチベーションは一気に下がります。せめて夢を語り、今はこの状態でも、近い将来は違うんだという明るい夢を語りましょう。

7.期待をかけよう

 よく「ウチにはろくなやつがおらん」と聞きます。確かにこりゃひどいと思う社員がいるのも事実ですが、それは下位20%の人罪です。ほとんどは普通レベルの人です。最初から上位20%の人は来ません。間の60%の中の上中下の問題なのです。普通の人は相手の気持ちに反応して返してくるものです。悪人扱いにすると、普通の人が悪人を演じます。その逆もあるのです。鏡の法則です。相手のパフォーマンスが低いのは、まず自分のコミュニケーションの反応が出ていると考えましょう。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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