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今年は人育ての年にしよう~個人面談のすすめ(H22.1月号の記事)

 明けましておめでとうございます。昨年はこのメルマにお付き合いいただきまして、大変ありがとうございました。本年も人事労務に関する話題や情報を毎月2回発信してまいりますので、よろしくお願いいたします。
 さて昨年は一年を通して、経済状態が非常に厳しい1年でした。現在も私共の多くのクライアントにおいて、雇用調整助成金をご利用いただいております。今年は反転するのか、それともまだ2番底があるのか、予断を許しません。今の経営は灯台のない暗黒の大海原を航行しなければならない時代です。経営者は大変です。しかし昨年最後のメルマガでも申し上げましたが、結局我々普通の経営者は、経営の王道を見失わないこと、それを灯台にするしかないと思うのです。
 そうだとすると経営者として人事労務分野で、今年は何をなさいますか?もし具体的にこうしようとの計画がなければ、今年は個人面談を行うことを目標にされてはいかがでしょうか。

1.何を面談するか

 面談する目的を明確にしましょう。目的とは「何とためにするのか」という動機付けです。そして中小経営者が従業員と個人面談する最大の目的は、「経営の意思の伝達とフィードバック」の作業だと思うのです。これを噛み砕いて申しますと、経営者はその従業員に何を期待しているのか、どうなって欲しいのかを伝え、従業員からそれに対しての反応をもらい、経営者と従業員の意思の溝を埋めてゆく作業だと思います。改まって意思表示するとき、何かきっかけがないとどうもやりにくいものです。飲みに行ったときか、もしくは個人面談のときがそのきっかけとなります。例えば当事務所の場合、営業職員には現在、次の5項目を大項目の課題として、挙げています。1知識 2役職者として(一般従業員は正確かつスピード 段取り) 3お客さん 4自己目標 5執務態度。そして各々大項目からさらに細分化した「重点的に見る視点」、「例えばこんなこと」として具体的な行動の例を挙げています。執務態度には良い社風を醸成するための10項目の行動指針が入れてあります(例えば、自分から元気よく挨拶している、注意指導には謙虚に従っている、うそをつかないなど)。
 とにかく向こう1年間または半年間、何を面談の俎上に乗せて行くのかを明確にしておきます。ここで重要なことは経営者の思いを一所懸命伝えることです。

2.どのくらいの頻度で行うか

 1年に1回だけですと、忘れます。かといってそう頻繁にもできません。適度な頃合と言うほかありませんが、できれば毎月1回、長くとも半年に1回は行いたいものです。できれば短い時間で毎月、月初とか給与支給日とか決めて行うのがいいと思います。年2回のボーナス支給のときは、特にメッセージを伝える良い機会です。ただ明細を渡す作業だけになっているのはもったいないですから、必ず行いたいものです。

3.どのくらいの時間で行うか

 これも適度な頃合と言うほかありませんが、毎月行うなら双方負担にならないように、5分や10分程度でもいいでしょう。半年に1回の総括では、少し時間を取りたいものです。

4.どのようなツールを使用すればいいのか

 面談項目、やる頻度が決まりましたら、1で決定した重点面談項目をペーパーに落とし、それを挟んで話をします。あまり分量が多くならないよう、せいぜい最大でもA3用紙1枚までに収まるようにしましょう。読み込まなければ分からない長文は避け、できるだけ簡単に記載しましょう。

5.どのように行うのか

 まず自己申告をしてもらいましょう。毎月チェックするなら、簡単な◎○△×でもいいし、5・4・3・2・1でもいいでしょう。ペーパーはあくまでも方便に過ぎません。大事なのは「経営の意思の伝達とフィードバック」です。経営者の思いが伝わっているかの確認作業です。そのためのきっかけ作りです。決して査定だけに使用することはしないようにしましょう。

 どうかこの1年が皆様にとりまして、明るい年となりますよう、お祈りいたします。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年04月07日 | Category: General
Posted by: nishimura
経営者の危うい感覚 それはトラブルのモトです(H21.12月号の記事)
~今までは通用したかもしれないけれど~

 私が社会保険労務士業を始めて来年で13年目に入ります。この間、不幸にして労使間に様々なトラブルが発生し、その都度経営者の立場でアドバイスを申し上げてきました。第三者の立場から見て、明らかに労働者に問題がある というケースもありますが、労使紛争には程度の差はあれ、労使どちらにもそれなりに帰責事由があるというのが私の実感です。
 紛争は解雇事案を筆頭に、退職勧奨、賃金不払い、労働条件の引き下げ、いじめ・いやがらせ、離職事由をめぐる紛争など様々な類型がありますが、ここでは私が経験した中で、紛争の根にある経営者の危うい感覚を申し上げたいと思います。これらの紛争は法律上の権利義務関係をめぐる民事紛争の一形態なのですが、その根っこには、そこへ至るまでに労使間の感情的な鬱積があるのが普通です。いわば不満や恨みの蓄積が権利義務と結びついたときに、紛争として表面化します。 どうか対岸の火事と考えず、一つでも思い当たる節がないか、自問自答していただければ幸いです。

1.給料を自由に減額できるという感覚

 経営が苦しいから給料は当然に下げても構わないとか、その月の総支給額を見て今月は多いと思えば事後的に調整するとか、個別の同意や理解を得ることなく勝手に従業員の給料を操作するというものです。

2.給与明細を自由に変更できるという感覚

 1とは違い、総支給額自体を引き下げるということではありませんが、基本給や手当の内訳構成を勝手に変更するというものです。これも不信感の温床となります。

3.社会保険料を引き下げても良いという感覚

 社会保険料の企業負担は確かに重いものです。できたら何とか軽くしたい気持ちは分かります。しかし実際の報酬額を申告せず、低い額で申告し、負担を抑えようとするのは常識論ではなく、もはや犯罪です。今問題になっている「消された年金」の一形態です。

4.有給休暇は当社にはない、又は○日しかないという感覚

 使用者が労務管理上嫌がられる最たるものに、有給休暇があります。有給休暇が濫用されるかどうかは社風にもよるのですが、これについての私の考え方はかつてH19.11月号にて述べておりますのでここでは割愛しますが、「うちには最初からそんなものない!」と公言する感覚は非常に危険と言わざるを得ません。また○日までなら認めるというのも同様です。

5.就業規則を無視する感覚

 就業規則(特に賃金規程)を無視して、使用者の裁量を優先させる場合も危険のタネです。就業規則には「皆勤手当は無欠勤時に支給する」と記載があるにもかかわらず、今回は遅刻があったからカットしとくというような感覚です。書いてあるルールと実際のルールがあっていない場合は、現状に合わせればいいのですが、最初から軽く考えて無視するのは後々禍根を残すことになります。

6.公私混同する感覚

 労働契約の本質使用従属関係です。使用者は自らの管理下において指揮命令する権限を持っています。そして基本的に従業員はその命令に従わなければなりません。しかしそれはあくまでも業務に関してであり、私生活上の全人格まで売り渡しているわけではありません。たとえ関連会社の業務でも直接雇用関係のない会社の業務に従事させる場合においては「すまないな」くらいの遠慮が必要ですが、個人的な引越しの手伝いとかは問題外です。


7.権力の行使を拡大させる感覚

 6で言いましたように、労働契約は使用従属関係です。したがって使用者が従業員にパワーを行使するのは当たり前です。しかしそれは適切に行使する必要があります。パワハラと呼ばれる事案は、このパワーの行使が人格否定に使われたときに紛争として顕在化します。使用者には人事権がありますが、生身の「人」と事物を表す「事」という言葉が組み合わさって、「人事」になっていることを忘れてはなりません。つまり事に焦点を当てずに人に焦点を当て過ぎると相手に恨みを買うだけになるのです。

8.人をモノ扱いにする感覚

 7の人格否定の話に通ずるのですが、この厳しいデフレ経済化における価格競争を勝ち抜くために、間違った人件費カットをしていないでしょうか。勿論どうしようもない従業員も一部にいることは事実ですが、そのほとんどは平均的人物です。その人にも人生があります。大切に育てた親御さんがいます。その人に生計を共にしている配偶者がいます。その人に育てられている子供がいます。生身の人間を経理上の経費として見ている感覚も危険なタネです。

9.労働法を守ると会社が潰れるという感覚

 労働基準法や社会保険諸法令は道路交通法のようなもので、生活に密着した法律ですが、なかなかそのすべてを遵守するのは難しいものです。すべての車が法定速度以内で走ってないようなものでしょう。しかしだからと言って最初から守らなくいいとか、守る気がないというのは話が別です。よく法律論の話をすると、「そんなことしていたら会社が潰れる」と伝家の宝刀のように言われるケースがありますが、本当に潰れるのでしょうか。言い訳にしていないでしょうか?。

10.ばれなければOKという感覚

 最近品格という言葉がはやっていますが、経営にも品格なるものがあるような気がするのです。何をやってもばれなければOKという感覚。儲かりさえすればいいという感覚。これもトラブルの温床になります。従業員は経営者の姿を見ています。完全無欠な聖人君子を誰も求めていませんが、自ずと信頼できる経営者かどうかを判断しています。

11.ヒステリーな感覚

 これは感覚というより性格的なものかもしれませんが、経営者がヒステリーを起こすと従業員は絶対についてきません。自分の思い通りにならないとき、ミスしたとき、忙しいとき、虫の居所が悪いときなどにその傾向があります。一事が万事。ヒステリーをおこされた従業員はその悪い印象をずっと脳裏に刻んでいます。

12.パート、試用期間は労働者でないという感覚
 
 これも社会保険の適用や解雇などの場面でよく遭遇する事案です。経営者の中には正社員だけが常用雇用の従業員と考えておられることがしばしばあります。確かに社会保険の適用対象にならない勤務形態のパートはいますし、試用期間は解雇権が比較的広いなどの相違はありますが、雇った以上はどのような形態であれ、会社の従業員です。パートだから、試用期間中だからといって、無原則に経営者の裁量権が認められるわけではありません。


13.小さな約束なんて大したことないという感覚

 経営者から見れば、従業員は10分の1であり50分の1の存在かもしれません。しかし従業員から見れば常に1対1の関係であることを忘れてはならないと思うのです。そしてこの感覚は小さな約束の場面でよく見られます。経営者からみれば些細な約束ごとでも、相手はよく覚えています。紛争後によく分かることですが、そんな些細なことで、と思われることが遠因となっているケースが多いのです。


14.従業員はバカだという感覚

 これは経営者の人間観に帰する事柄かも知れません。たしかに退路を断って仕事に打ち込む経営者から見れば、ほとんどの平均的な人は物足りなく映るかもしれません。しかし経営者とサラリーマンの背負っているリスクの大きさが全然違うため、その溝は簡単に埋まりません。それよりも、我が社に働きに来ている人間に対しては、雇った以上責任があるのだから、お客様の幸せの次に従業員を幸せを本気で考えていれば、誤解を恐れずに言えば、多少の労働法違反があっても、大問題には発展しません。お客様から頂いた利益で経営者と従業員がWIN・WINの関係になりたい思いを出すのです。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
10年04月07日 | Category: General
Posted by: nishimura
新型インフルエンザに関連して労働者を休業させる場合のQ&A(H21.11月号の記事)

~労働基準法上の標記問題に関する賃金支払についてQ&A方式の通達が出ました~

 これから新型インフルエンザの本格的流行が懸念されています。このメルマガでも本年9月号において、感染予防を中心とした内容で発信させていただきましたが、労務管理上その休業に関しての賃金支払問題について、明確な通達がでておりませんでしたが、このたび下記の通り、一定の解釈が出ましたので、お知らせいたします。

以下厚労省の見解です。

 感染拡大防止の観点からは、感染又は感染の疑いがある場合には、保健所の要請等に従い外出を自粛することその他感染拡大防止に努めることが重要ですが、その際、欠勤中の賃金の取扱については、労使で十分に話し合っていただき、労使が協力して、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えていただくようお願いします。

 新型インフルエンザに関連して労働者を休業させる場合、上記のとおり労使が協力して体制を整えていただくことが望まれますが、法律上、賃金の支払の必要性の有無等については、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものですが、一般的には以下ように考えられます。
 ※なお、以下は現時点の状況を基にしており、今後の新型インフルエンザの流行状況等に応じて保健所の要請等が変更される可能性がありますのでご留意ください。(平成21年9月時点)

Q1.労働者が新型インフルエンザに感染したため休業させる場合は、会社は労働基準法第26条に定める休業手当を支払う必要がありますか。

新型インフルエンザに感染しており、医師等による指導により労働者が休業する場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。医師や保健所による指導や協力要請の範囲を超えて(外出自粛期間経過後など)休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

Q2.労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合は、会社は休業手当を支払う必要がありますか。

新型インフルエンザかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱えば足りるものであり、病気休暇制度を活用すること等が考えられます。一方、例えば熱が37度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

Q3.労働者が感染者と近くで仕事をしていたため休業させる場合は、会社は休業手当を支払う必要がありますか。

新型インフルエンザに感染している者の近くにおり、濃厚接触者であることなどにより保健所による協力要請等により労働者を休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。保健所による協力要請の範囲を超えて休業させる場合や、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

Q4.労働者の家族が感染したためその労働者を休業させる場合は、会社は休業手当を支払う必要がありますか。

家族が新型インフルエンザに感染している労働者について、濃厚接触者であることなどにより保健所による協力要請等により労働者を休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。協力要請等の範囲を超えて休業させる場合や、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

なお、Q1~Q4で休業手当を支払う必要がないとされる場合においても、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討する等休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となることがあります。

Q5.新型インフルエンザに感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取扱いは、労働基準法上問題はありませんか。病気休暇を取得したこととする場合はどうですか。

年次有給休暇は原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものですので、使用者が一方的に取得させることはできません。事業場で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、事業場の就業規則等の規定に照らし適切に取り扱ってください。


以上が、このたびの厚労省通達です。どうぞご参考にして下さい。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年04月07日 | Category: General
Posted by: nishimura