~うつ病?の従業員が出た場合の対応方法~

明けましておめでとうございます。旧年中は本メルマガにお付き合い頂きまして、ありがとうございました。本年も何卒よろしくお願いいたします。
さて、今回は中小企業のメンタルへルス問題の第3回、実際にうつ病の従業員が発生した場合にどのような対応をしてゆけば良いのかについてお話します。 


1.初期対応


1)いつもと違う行動に気づく  

 これに気づくことができるのは日常的に接している管理者です。専門家でもその人がいつもと比べてどうか、ということは中々わかりません。例えば次のようなケースです。

 <いつもよりミスが多い、時間がかかっている、イライラしている、塞ぎこんでいる> 

 こういったいつもと違う兆候を感じたら、恐れず、積極的に声をかけてみましょう。 

「最近、○○さんの作った書類に目を通していると、以前だったら余り見かけなかった誤字や脱字が目立つので体調でも悪いのかと心配している。一度ゆっくり話を聞かせてもらえないか?」

 この際、重要なことは、受容・傾聴・共感マインドを持つことです。そして次のことも確認します。

「きちんと眠れていますか?」「好きなことを楽しめていますか?」

 どちらもNOならメンタルヘルス不調を疑ってかかる必要があると思われます。勿論、素人判断はできませんが、次の受診を促すステップへ進むべきかどうかの判断材料となります。そして全体として話を聴くことに注力し、聴き終わると、

「今日は話してくれてありがとう」

というような感じで一旦話を終えます。

 また、管理者に問題の原因が有る場合があり、上司に話しにくいこともありますので、そのような場合には他の相談者に振ることも検討します。他にも、日内変動に注意が必要です。うつ病の一般的な傾向として、午前中具合が悪くて、夕方ごろ調子が良くなってくるという変化が見られます。調子のよい時に話を聞くと、元々真面目、頑張りや、几帳面などの因子を持つ人が多いので、「頑張ります」 と虚勢を張ってしまうことがあります。逆に調子の悪いときに「気のせいだ、頑張れ!」は禁句です。かえって苦しめることになりかねません。頑張りたいのに頑張れない症状だからです。

 
2)受診を促す

 話を聴いた結果、メンタルヘルス不調が疑われる場合は、ためらわず、専門医への受診を勧めます。

「今の状況では仕事をすることでさらに体調が悪化しないか心配している。専門の医師に仕事をしてもよいのか意見書を出してもらいたいのだが」

 その後、会社として一定の対応が必要かどうかは、主治医の診断書を取るところからすべてが始まります。この際、療養の見込み期間も記入してもらうのが望ましいでしょう。そして専門医が医学的に問題なしと判断すれば、会社としてはそれ以上の配慮義務はないと考えます。しかしメンタルヘルス不調の診断書が提出されたら、診断書に記載されている必要療養期間は休業させる必要があります。無視して就労させてはいけません。そして会社の休職規定がどのようになっているのかを確認します。この際大事なことは、メンタル不調者に対応できる休職規定※(就業規則)が整備されていなければならないのは言うまでもありません。もし整備が不十分な場合は、今から専門家へ作成を依頼しておいた方がいいでしょう。

※休職とは・・・・・本来、私傷病など従業員側の事情により、労働が完全に提供できない場合、債務不履行として解雇できますが、いきなり解雇せず、一定の猶予期間を設け、その終期を待って復職できる状態にならないときに自動的に解約するもので、解雇の猶予措置と理解されています。労基法上は一切規制がなく、原則として会社が自由に制度設計できます。

 ここで重要なことは、ケースバイケースの対応ではなく、きちんと粛々と休職制度の上に乗せることです。これを誤ると不完全な就労をいつまでもだらだら受領しなければならなかったり、いつまでも休んでおりいつ復帰できるかわからなかったり、他の従業員から不満が溜まってきたり、後任の人事にも影響するなど対応を困難にし、終局的には解雇を検討せざるを得なくなり、問題を一層複雑化させます。

 次回は休職制度への乗せ方からお話してまいります。


文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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