社内規程は会社の法律 法律をきちんと執行して望ましい姿へ政策的に誘導しよう(H25.11月号)


アベノミクスが好調です。その政策の基本は第一の矢として、まず長きにわたるデフレから脱却させるために大胆な金融政策を実施し、第二の矢として公共事業を復活するなど積極的な財政政策により実体経済を刺激し、第三の矢である成長戦略によって再び稼げる日本に復活させようとするものです。

私は経済評論家ではありませんので、アベノミクスの功罪を表するのがここでの目的ではなく、アベノミクスを通じて企業経営を考えたいと思うのです。



政府は第三の矢、つまり日本を再び稼げる国へ復活させるために、様々な政策を打とうとしています。そしてその政策とは元をたどれば法律のことなのです。つまり政府が「こういう国にしたい」と思った時、それを政策として実施できる基盤が法律なのです。逆に言えば根拠となる法律がなければ「こうしたい」という思いを実現することができません。

このように法律には一定の意思をもって、望ましいと思われる方向へ企業や国民を誘導する効果があるのです。その根拠法があるからこそ(特に真面目な日本人は)その法律に自らの活動を準拠させ、その結果として「望ましい姿」へ変貌を遂げて行くこととなるのです。

この変化は劇的な時もあるかもしれませんが、緩慢に変化することのほうが多く、そのプロセス中においては実感しにくいのですが、時間がたち、振り返って過去を見たとき、変化が起きていることをはっきり認識できるのです。

例えば、需要を喚起するため、賃金を上昇させることを意図したとします。そうすると「賃金アップを図った企業に対して税金を安くしますよ」という税制の法律を作ってメッセージを出し、実際に給与アップへ誘導しようとします。

例えば、外国の投資をもっと積極的に呼び込みたいと意図したとします。そうすると「規制を緩和しますから進出してください」という特区を作る法律によってメッセージを出し、投資を呼び込もうとします。

つまりある意思をもった法律が、きちんと執行されて初めてその効果が発生し、変化が起こってゆくということです。



これを企業に置き換えましょう。企業にも就業規則をはじめ、様々な社内規程があるはずです(社内規程を総称して就業規則と呼ぶ)。これは企業にとって取りも直さず法律に当たります。蛇足ですが最高裁判所もこのように言っています。


「就業規則は当該事業所内での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認められるに至っているものと解すべきであるから、当該事業所の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきである。」
(秋北バス事件 最高裁 昭和43年12月25日)


40年前の判決ですが、現在もその考え方は維持されています。就業規則は法的規範になるのです。そして個別労働者の同意を得なくとも、周知されていれば当然に適用を受けるものなのです。法律って、そんなものです。知らないから許されるということでもなく、私は気に入らないから従わないということもありません。



しかし・・・・。

しかしです。折角、就業規則を作ってもそれがきちんと執行されているでしょうか?法律を作った会社の意思が従業員に伝わっているでしょうか?そして会社が望ましいと思う方向へ誘導できているでしょうか?

それがなければ、折角、法律を作っても、絵に描いた餅です。政策効果が全く上がらないこととなります。


例えば・・・・

◎従業員に社会人として企業人としてモラルを身に着けて欲しいと意図したとします。そうすると「服務規律規程」を作成します。

◎従業員にも会社業務の向上のために、どんどんアイデアを出してもらういたいと意図したとします。そうすると「提案制度」という規程を作成します。

◎従業員に業務に必要な公的資格の取得をどんどん取得して欲しいと意図したとします。そうすると「資格奨励制度」という規程を作成します。

◎やる気のある従業員には自ら役職者に立候補してもらいたいと意図したとします。そうすると「役職者任命規程」という規程を作成します。


こういったことはいくらでも規程化(法律化)できます。でも作っただけなら絵に描いた餅です。その先が大事です。こいった政策をきちんと周知し執行して、望ましい企業風土へ誘導してゆきましょう。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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