●ついに成立、労働契約法 平成20年3月1日施行
〜対応を迫られる就業規則〜

 永年の懸案となっておりました労働契約法がさる平成19年12月5日に公布となり、施行は3月1日と決まりました。当初議論されていた労働契約全般に起こりうる様々な事件(採用内定、試用期間、配置転換、転籍、休職、昇進昇格、損害賠償、解雇など)を網羅的に織り込む内容からはかなり後退した感が否めませんが、労働関係において極めて重要な法律が出来たことは間違いありません。
 この法律の成立の背景として、人間模様が極めて濃厚に出る労働契約関係において、従来の刑罰法規である労働基準法では民事的な約束事にまで対応できない現実があります。また激変する社会環境の変化は、今まで想定していない多様な雇用形態(派遣、裁量社員、テレワークなど)を生み、労働組合が衰退傾向の中で、IT技術の発展による過大な情報と権利意識の高まりにより、個別労使紛争が激増している背景などがあります。しかし採用やセクハラ、離職、労働条件変更などの事案は、刑事罰のある労働基準法に馴染まない民事上の紛争であり、これを最終的に解決するのは裁判所において蓄積されてきたいわゆる判例法理という雲をつかむような基準であり、実定法に体系的に記載のないことから結論の予測可能性が極めて低いという大問題がありました。
今回の新法はこれらに関して、全面的に応えるものではありませんが、今後更に議論を重ねて整備されてゆく一里塚になるでしょう。そんな中でも私が一番注目している条項は労働契約法の第7条です。

第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させている場合には、労働契約の内容は、その就業規則によるものとする(以下略)。

 これは従来から最高裁で確立されている就業規則の法的性格を法律の中に明記したものです。そもそも就業規則とは、法的にいかなる性格のものなのでしょうか。昭和43年 最高裁 12月25日判決の「秋北バス事件」は、「就業規則は当該事業所での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質を認めるに至っているものと解すべきであるから、当該事業所の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、またこれに対して個別的に同意を与えたかを問わず、当然にその適用を受けるものというべきである」と判旨しているのです。
つまり1.就業規則は会社の法律として効果がある
   2.その内容は個別の同意を必要としない
   3.従業員は就業規則に包括的かつ統一的に拘束される ということです。
ということは、その内容が法令や公序良俗に反しない限り、経営者サイドで主体的に作成することができ、労使紛争や社内トラブルを未然に防ぐ訓示的役割を果たすと共に、万が一訴訟になったときもその根拠規程がしっかりしているかどうかで、形勢は随分と違うのです。
 しかし労働契約法は第9条及び10条でこのようにも明記しています。
第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない(以下略)。
第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする(以下略)。
 これは従来から確立している労働条件の不利益変更法理を明文化したものです。この意味は
1.就業規則を不利益に変更する場合、個別に労働者の同意がいる。
2.同意なく不利益変更するときは、第10条にある細かな判断基準をクリアしなければならない。 ということです。
 不利益変更というのは必ずしも賃金の引き下げのような直截的なものだけでなく、いわば労働者にとって厳しいルールの規定を新設することも該当します。
私が散見する限り、非常に甘い就業規則で運用している会社が間々あります。是非、これを機会に「最初から厳しい目」の就業規則をトラブル対処の礎として、整備しておかれることをお勧めするものです。

                                             (文責 社会保険労務士 西村 聡)
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