テレビ番組を何気なく聞いていると、「派遣切り」特集が多くなっている。もはや労働問題とはいえず、政治問題として扱われている。しかし、労働問題としての適切な解釈を経ているのかというと、そうも思えない。

まず労働問題としては、次の記事による解決が適切である。

派遣解雇で和解解決金 期間満了までの賃金も支払う

派遣労働者の雇用主は派遣会社であるから、派遣先(とりあえずメーカーとする)が派遣会社との「派遣契約」を解除した場合には、派遣会社が期間満了までの雇用責任を果さなければならない。
「派遣契約」は業務契約であり、いつでも解除することができる。解除する場合、相手への損害賠償が発生する。したがって、契約解除により派遣会社に対して損害賠償しなければならない。
では、派遣会社は損害賠償請求を派遣先に対して行使しているのかどうか。少なくとも、契約解除後の派遣会社が負担すべき賃金は発生しているはずなのだ。
こうした労働問題における解決に関して、テレビでは今まで聞いたがない。

ということは、やはりテレビでのコメンテイター等は「派遣契約」として認めておらず、あからさまな労働者供給事業としてハナから議論していることになる。あるいは、派遣会社をハナから否認していることになる。
そこでメーカーの国際競争力の問題であるとかいう議論に一足飛びに走ってしまっている。
「派遣契約」を無視した議論の展開先に、派遣法改正が出ているようなのだが、それは空中楼閣に等しい。これではいくら改正したところで、実態は同じである。
派遣会社の法人格を否認したままでいいのか。トンネル会社のままでいいのか。
派遣会社を安全地帯に置いたままでいこうとしている動きがあるのかも知れないが、あまりにも雇用主としての影が薄すぎるというものである。あるいは、ハナから責任を取る能力に欠けるものとして議論の対象にしていないかである。この辺をテレビ報道で聴きたいと願う。
なお、派遣契約解除後は、一般に近いかたちでの解雇原則の適用となる。これへの処方規定を具体的に労働契約法等の改正で明記しておくべきなのだろう。