「『年金記録の遡及(そきゅう)訂正』に関する作業についてのまとめ」によれば、《委員会は、厚生年金保険法がすべての法人を適用対象としたことに着目。保険料を滞納する零細企業に対して、差し押さえなど強制的に徴収すれば倒産という事態を招く可能性もあり、改ざんした現場の職員が「保険料滞納の解消と、事業所側の倒産回避との板挟みにあった」ことを背景として明記した 》とある。

「社会保険」について、法治国家といえない状況にあるのは上記の通りである。法律はこのような実状において蓋然性の高い状況を想定しておらないで作成されており、現場職員にのみ負担を負わせるという惨い結論になっている。現場職員で、年金機構への採用に応募をしなかった者が少なくないのはこのためである。

なお、ネット上ではほぼすべて削除されているが、社会保険労務士もまた「改ざん問題」で取り上げられた者がある。経営者から「社会保険料の軽減」を求められ、役員議事録と降給確認書のようなものを作成。そして低下した給与額で届出。

一般に会社では皆がこうした事務手続きに関心をもっているわけではないのであるが、問題は実態を反映した届出からは遠いという点である。しかも年金についてはほとんど関心がなかったということを加味しても、健康保険給付については標準報酬は身近である。(なお、社会保険料が高いと不満をもつ者は、経営者に限らず、労働者も相当多いということは政策に携わる者は知っておくべき事柄である。)したがって、権利侵害行為となる。やはり、少なくとも、実際に給与・報酬を合意を取り付けて下げるしかない。労働問題も手掛ける社会保険労務士ならば‥
社会保険労務士はいつでも契約解除できるが、問題は従業員である。社会保険労務士の中では結構契約を解除したという話を聞く―守秘のためその程度の情報のみである―が、事務社員が会社を辞めるという話は少ない。よほど当人が積極的に加担しない限り、責任の度合いは低かろうが、それだけに世間の実態はまだ開示するには怖い状態であろう。

「コンクリート」の期間が長かった分、「ヒト」への関心はなおざりであった。