・最高裁平成24.2.24判決<債務不履行による損害賠償請求において、代理人費用を認めた事案>

色々と調べると、不法行為による事案においては、通常 契約のない関係で、相手方の故意・過失によって「事件に巻き込まれ」、裁判となると弁護士にほぼ頼らざるを得ないため、その費用の一部を(損害の一部として)裁判所が認めた。
(なお、簡易裁判所事件では司法委員が調停委員的な役割を担っており、それなりに筋が通っておれば本人訴訟で十分である。)

一方、債務不履行による事案においては、契約関係にあり、したがってその場合等について約定化され折込済みであることから、「事件に巻き込まれた」のはそうであるとしても、そこまで保護する必要性はないとされている。

以上はかなり昔の理屈でそれが司法関係者間で綿々と受け継がれているわけであるが、そこに、債務不履行においても代理人費用を相手方に負担させるという冒頭表記の判決が出た。不法行為によるものとほぼ同様の立証が要求されたものであったから、と。
これには、時効の問題が絡んでおり、債務(安全配慮)不履行事案といえども実質は不法行為であるという点が汲まれているようである。特殊な取扱いという見解がある。

敗訴者負担がより支持されれば、一部とはいわず6割強となれば司法の世界は様変わりするだろう。アメリカでは訴訟保険が普及しており、企業側に嘘みたいな額の賠償を下すこともありえる。(刑事罰で寿命をはるかに超える懲役期間もありえるが、あれには保険はないはず)。やはり文化的な背景の違いといえばもう終わりであるにせよ、司法福祉としては成り立ちそうに思われる。文化面でいえば、訴訟においても、社会保険労務士が行う助成金の成功報酬的思考が広まりつつある。着手金は定額発生するが、報酬は入ってくる額のうち何%を払うというものである。払う側であれば報酬は発生しない(尤もそんなことは商売としてありえないので、訴訟以外の報酬で賄われるというかたちである)。

・ところで、「代理人」というスタイルがやや揺れてはいやしないだろうか。雇用契約というのはもともと具体的な内容をきっちりさせず、長い年月かけてプラスとマイナスとをチャラにするという発想が強い。良いときも悪いときもある、というもはや人生句に近い。そのため「代理」するというのも違和感があり、本人申請の下「補佐」することがより適切といえなくもない。代理人であるが、実質は補佐人というべきだろう。あるいは広義の社内調停役か。