15年06月01日
●マイナンバーがやってくる!! 100人以下中小規模事業者の実務上の留意点と対応策
●マイナンバーがやってくる!! 100人以下中小規模事業者の実務上の留意点と対応策(H27.6月号)
マイナンバーにつきましては、昨年末から年初にかけて2回にわたりお届けしましたが、最近になって政府から、かなり具体的な情報が出るようになってきました。この問題は、100人以下の企業には若干の緩和措置が認められているとはいえ、人を雇う事業所であればすべてに影響が及ぶ大きな社会制度改革なのです。
そこで今回は小規模企業が制度開始の28年1月までに、最低限行っておくべき事柄を纏めましたので、ご参考にしていただき、対策を講じていただきたいと思います。
1.アプリケーションソフト会社への確認(6月中)
給与計算や経理処理を業務ソフトを使って処理しておられるところも多いかと思います。マイナンバーが入ってくると、今までのシステムはそのまま使用することができません。何故なら社会保険や税の手続きにおいてマイナンバーを印字する必要があり、その機能がなければいちいち手書きで記入しなければなりません。
これだけなら良いのですが、もっと厄介なのが従業員から預かったマイナンバーは各手続きの法定保管年限を越えて保持することはできず、廃棄処分にしなければならないのです。例えば雇用保険の手続きなら4年、所得税の手続きなら7年といった具合ですが、いちいち退職日の異なる従業員のマイナンバーを期限管理することは物理的に不可能です。従って一定の年限が経過すれば自動的に削除されるシステム構築が欠かせません。
社会保険や税の分野は頻繁に法改正や仕様変更があるため、ベンダーとサポート契約をされているはずで、その場合は業者が無償でシステム改修を行うものと思われますが、一応、今お使いのソフトが来年以降、こういったことに対応するのかどうか、確認しておかれることが必要です。
2.住民票の確認と制度周知(6月中)
マイナンバーは、日本国内に住民票を持つ人であれば外国籍の方であっても、全国民に付番され、10月以降順次、住民票のある住所へ簡易書留にて送付されます。そして会社は扶養親族の分を含めて従業員のマイナンバーを収集して保管することとなりますが、この収集作業が相当手間取ることが予想されます。そもそも住民票の所在地と、現在住んでいる所在地が違うケースがよくありますが、この場合は要注意です。この社員の番号が収集できないことから、28年以降の事務処理に遅滞をもたらす可能性があります。
従ってまず、制度の軽い周知を兼ねて、今から、「マイナンバーの通知に伴う「住民票の再確認」お願い」などと題する通知文を発出し、直ちに住民票を変更するか、何らかの事情で変更できないなら、10月以降に届く通知カードを速やかに現住所でも回収できるような措置を取るよう、全従業員(パート・アルバイトを含む全従業員)に促すこととなります。
当事務所では、近日中にこの書式を毎月1回 書式便にてご提供する予定です。
3.番号収集通知と収集(9月)
いよいよ10月になると各個人にマイナンバーが通知され、番号を収集することとなります。その前の9月ごろに、通知カードを全従業員に持参するよう指示を出すこととなります。できればこれも文書で通知した方がよいでしょう。この書式も追ってご提供します。先ほども言いましたが、本人からだけではなく、その扶養親族の番号も必要になるため、実務的には年末調整の時期に、扶養控除等申告書の提出と共にそこに記載される家族の分を持参してもらうのが効率的かもしれません。
ただ実際上、従来の年末調整に必要な資料や情報だけでもきちんとスムーズに揃わない状況下にある場合は、かえって遅滞を来たす可能性もあることから、分けて処理した方がいい場合もあるでしょう。そのあたりは会社ごとの判断で行ってください。
また単に通知カードを回収するだけでなく、運転免許証その他の身分証により本人確認を行う必要もあり、その詳細はここでは割愛しますが、従業員への周知文書中には印刷しておくべきです。
4.最低限の安全管理措置
マイナンバーは特定個人情報として、いままでの個人情報保護法よりもかなり厳しい安全管理措置を求めており、刑事罰も強化されています。政府から出ている対策ガイドラインを見ると、かなりお金も手間もかかる対策が事も無げに例示されていますが、小規模企業の場合は最低以下の措置は来年までに取っておいてください。
(1)人的な措置
マイナンバーに触れることのある事務担当者を特定の人に限定しておいてください。そしてその方から「特定個人情報の取扱いに関する誓約書」を提出させ、保管しておいてください。この誓約書の雛形も追ってご提供いたします。
(2)物理的な措置
上記で特定した事務担当者しか、マイナンバーの記載された書類や保管されたパソコンに触れることが出来ないようにしておいてください。例えば書類は事務担当者の引き出しに保管し、そこだけ施錠できるようにし、他の者が勝手に見ることができないような環境を作るということです。
(3)技術的な措置
パソコンには、ファイアウォールをかけ、ウイルス対策ソフトを入れ、常に最新版に更新し、かつウィンドウズアップデートを自動更新にし、その他JAVAやアクロバットリーダーなど基本アプリケーションを常に最新の状態に保つ、当たり前の対策で充分です。また特定した事務担当者のパソコンにはパスワードを設定して、アクセス制御をすることをお勧めします。
5.新入社員からの回収
28年1月以降に入社して来る従業員からは、入社事務の中にマイナンバーを通知してもらうことが入ってきます。これは社会保険の対象外となるアルバイトやパートも対象です。従って入社した時点で、上記の特定した事務担当者に受け渡す流れを作ることとなります。間違っても特定した事務担当者以外の者(上司など)に渡さないように徹底しておきましょう。特定した事務担当者に直接送るか渡すのが良いのですが、不在時に無造作に机の上に置いておくことのない様に、徹底しておきましょう。
6.取扱規程の作成、就業規則の改訂
できれば上記5の流れなど、マイナンバーを取扱うルールを文書化し、かつ取扱い違反に対しては懲戒処分とするなどの規定を就業規則にも盛り込みんでおきたいものです。規程の作成に関してご相談に応じますので、お気軽にお声がけください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
マイナンバーにつきましては、昨年末から年初にかけて2回にわたりお届けしましたが、最近になって政府から、かなり具体的な情報が出るようになってきました。この問題は、100人以下の企業には若干の緩和措置が認められているとはいえ、人を雇う事業所であればすべてに影響が及ぶ大きな社会制度改革なのです。
そこで今回は小規模企業が制度開始の28年1月までに、最低限行っておくべき事柄を纏めましたので、ご参考にしていただき、対策を講じていただきたいと思います。
1.アプリケーションソフト会社への確認(6月中)
給与計算や経理処理を業務ソフトを使って処理しておられるところも多いかと思います。マイナンバーが入ってくると、今までのシステムはそのまま使用することができません。何故なら社会保険や税の手続きにおいてマイナンバーを印字する必要があり、その機能がなければいちいち手書きで記入しなければなりません。
これだけなら良いのですが、もっと厄介なのが従業員から預かったマイナンバーは各手続きの法定保管年限を越えて保持することはできず、廃棄処分にしなければならないのです。例えば雇用保険の手続きなら4年、所得税の手続きなら7年といった具合ですが、いちいち退職日の異なる従業員のマイナンバーを期限管理することは物理的に不可能です。従って一定の年限が経過すれば自動的に削除されるシステム構築が欠かせません。
社会保険や税の分野は頻繁に法改正や仕様変更があるため、ベンダーとサポート契約をされているはずで、その場合は業者が無償でシステム改修を行うものと思われますが、一応、今お使いのソフトが来年以降、こういったことに対応するのかどうか、確認しておかれることが必要です。
2.住民票の確認と制度周知(6月中)
マイナンバーは、日本国内に住民票を持つ人であれば外国籍の方であっても、全国民に付番され、10月以降順次、住民票のある住所へ簡易書留にて送付されます。そして会社は扶養親族の分を含めて従業員のマイナンバーを収集して保管することとなりますが、この収集作業が相当手間取ることが予想されます。そもそも住民票の所在地と、現在住んでいる所在地が違うケースがよくありますが、この場合は要注意です。この社員の番号が収集できないことから、28年以降の事務処理に遅滞をもたらす可能性があります。
従ってまず、制度の軽い周知を兼ねて、今から、「マイナンバーの通知に伴う「住民票の再確認」お願い」などと題する通知文を発出し、直ちに住民票を変更するか、何らかの事情で変更できないなら、10月以降に届く通知カードを速やかに現住所でも回収できるような措置を取るよう、全従業員(パート・アルバイトを含む全従業員)に促すこととなります。
当事務所では、近日中にこの書式を毎月1回 書式便にてご提供する予定です。
3.番号収集通知と収集(9月)
いよいよ10月になると各個人にマイナンバーが通知され、番号を収集することとなります。その前の9月ごろに、通知カードを全従業員に持参するよう指示を出すこととなります。できればこれも文書で通知した方がよいでしょう。この書式も追ってご提供します。先ほども言いましたが、本人からだけではなく、その扶養親族の番号も必要になるため、実務的には年末調整の時期に、扶養控除等申告書の提出と共にそこに記載される家族の分を持参してもらうのが効率的かもしれません。
ただ実際上、従来の年末調整に必要な資料や情報だけでもきちんとスムーズに揃わない状況下にある場合は、かえって遅滞を来たす可能性もあることから、分けて処理した方がいい場合もあるでしょう。そのあたりは会社ごとの判断で行ってください。
また単に通知カードを回収するだけでなく、運転免許証その他の身分証により本人確認を行う必要もあり、その詳細はここでは割愛しますが、従業員への周知文書中には印刷しておくべきです。
4.最低限の安全管理措置
マイナンバーは特定個人情報として、いままでの個人情報保護法よりもかなり厳しい安全管理措置を求めており、刑事罰も強化されています。政府から出ている対策ガイドラインを見ると、かなりお金も手間もかかる対策が事も無げに例示されていますが、小規模企業の場合は最低以下の措置は来年までに取っておいてください。
(1)人的な措置
マイナンバーに触れることのある事務担当者を特定の人に限定しておいてください。そしてその方から「特定個人情報の取扱いに関する誓約書」を提出させ、保管しておいてください。この誓約書の雛形も追ってご提供いたします。
(2)物理的な措置
上記で特定した事務担当者しか、マイナンバーの記載された書類や保管されたパソコンに触れることが出来ないようにしておいてください。例えば書類は事務担当者の引き出しに保管し、そこだけ施錠できるようにし、他の者が勝手に見ることができないような環境を作るということです。
(3)技術的な措置
パソコンには、ファイアウォールをかけ、ウイルス対策ソフトを入れ、常に最新版に更新し、かつウィンドウズアップデートを自動更新にし、その他JAVAやアクロバットリーダーなど基本アプリケーションを常に最新の状態に保つ、当たり前の対策で充分です。また特定した事務担当者のパソコンにはパスワードを設定して、アクセス制御をすることをお勧めします。
5.新入社員からの回収
28年1月以降に入社して来る従業員からは、入社事務の中にマイナンバーを通知してもらうことが入ってきます。これは社会保険の対象外となるアルバイトやパートも対象です。従って入社した時点で、上記の特定した事務担当者に受け渡す流れを作ることとなります。間違っても特定した事務担当者以外の者(上司など)に渡さないように徹底しておきましょう。特定した事務担当者に直接送るか渡すのが良いのですが、不在時に無造作に机の上に置いておくことのない様に、徹底しておきましょう。
6.取扱規程の作成、就業規則の改訂
できれば上記5の流れなど、マイナンバーを取扱うルールを文書化し、かつ取扱い違反に対しては懲戒処分とするなどの規定を就業規則にも盛り込みんでおきたいものです。規程の作成に関してご相談に応じますので、お気軽にお声がけください。
小規模企業の賃金制度を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
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