~有期雇用契約者への雇用管理・賃金対策を行う必要が~
●同一労働、同一賃金 判決下る!2021年4月より法改正も決定!!(2018.9月号)

 


さる6月1日、我々労働問題にかかわる専門家が固唾を呑んで見守っていた、大きな二つの最高裁判決がありました。「ハマキョウレックス事件」と「長澤運輸事件」がそれです。正社員と有期契約社員の待遇格差を問うた裁判です。この紙面では、法学講義をしても余り意味のないことになりますから、判決文の解説は一先ず置きます。

しかし中小企業においても、有期契約社員の労務管理のあり方、特に賃金の支払い方に重大な影響が及ぶため、今、分かっている範囲で今後の労務管理や賃金の支払い方の実務について検討したいと思います。

また、先の通常国会でいわゆる「働き方改革関連法」として成立した、改正「パート有期契約労働法」で規定された同一労働同一賃金についての条文にも目配せする必要があります。これに関してはこのメルマガ記載時点では、まだ細かな政省令や通達が出ていませんので、詳細な検討はそれを待ってからとなりますが、2021年4月(大企業は2020年4月)からスタートすることは確定しています。


まだ少し時間があるとはいえ、場合によっては賃金体系の組み直しを迫られる企業もあることから、こういった作業には相当の時間がかかるため、余りのんびりと構えて居られないのです。


さてこの注目すべき二つの裁判の概要をごくごく簡単に紹介します。


■「ハマキョウレックス事件」
正社員と、60歳前の有期契約社員のドライバーの賃金格差について、労働契約法20条違反に当たるかが争われたもの。結論として、正社員には支給され、有期契約社員には支給されない多くの手当を不合理として、会社が負けた事案。

■「長澤運輸事件」
正社員と、60歳定年後の嘱託社員のドライバーの賃金格差について、労働契約法20条違反に当たるかが争われたもの。結論として、正社員には支給され、有期契約社員には支給されない手当がたくさんあったが、そんほとんどが不合理ではないとして、会社が勝った事案。


詳しい判決文は割愛し、ここでは今後の実務対策に絞ってお話しします。まず、会社の方針として、

A 正社員と有期契約社員との待遇格差を従来通り、温存したい場合と、
B 今後は有期契約社員も正社員と同じ待遇にするか、

によって実務対策は自ずと変わってきます。

Bの正社員と同等に処遇する方を選択した場合は、さらに

B-1 正社員の待遇に合わせる(有期社員の待遇を引き上げる)、
B-2 有期契約社員の待遇に合わせる(正社員の待遇を引き下げる)

という二つの選択肢がありますが、今回はこれには触れません。正社員と有期契約社員の待遇に違いを温存したい場合の対策を考えるものです。




=対策1=

◎職務の内容(責任や役割を含む)に違いを設けること

正社員と有期契約社員の待遇格差が問題となるのは、職務の内容(責任や役割を含む)が同じケースです。上記、二つの最高裁における事案も、共に職務の内容(責任や役割を含む)が同じであると認定されています。まず大切なことは、職種が同じであっても、

(1)中核的業務に違いを設けておく ※中核的業務とは、事業所の業績や成果に大きな影響を与える業務
(2)責任や役割に違いを設けておく ※責任や役割とは、決済権限や部下管理・トラブル発生時の対応・ノルマなど

表面的に同じ仕事に見えても、こういったことに違いがあれば、待遇の相違も不合理とされ難くくなります。



=対策2=

◎人材活用の仕組みに違いを設けること

正社員と有期契約社員の待遇格差が問題となるのは、人材活用の仕組みが同じケースです。これが同じであれば、会社が負ける可能性が高くなります。従ってここに違いを設けるとは例えば以下のようなことです。

(1)転勤の有無
(2)配置転換・職務転換の有無
(3)労働時間への配慮の有無
(4)人事評価によるキャリアパスの有無


(1)転勤の有無とは、有期契約社員には転勤を命じないことです。(2)配置転換・職務転換の有無とは、有期契約社員は職種や勤務場所を変更しないことです。そして(3)労働時間への配慮とは、有期契約社員には残業を命じないとか、ある程度フレキシブルな勤務シフトを認めることです。
これらを制度化したものに、「勤務地限定社員」、「職務限定社員」、「時間限定社員」などがあります。
つまり正社員は会社の人事権により、無限定に異動のリスクがあるのに対し、有期契約社員は本人の同意がない限り、異動をさせません。就業規則や雇用契約書上もこの違いを明確にしておきます。

(4)の人事評価によるキャリアパスの有無とは、賃金制度やキャリアパスが整備されていて、人事評価により評価対象となる違いがあるかどうかということで、そういった意味では今後、正社員には人事評価制度やキャリアパスを整備することが重要になってきます。



いずれにしても対策1、2に共通して言えることは、職務に内容が違うから、人材活用の仕組みが違うから、待遇に違いがあるんだと、きちんと説明できるか否かにかかっています。



=対策3=

◎正社員の手当の見直し

先の最高裁判決では、個々の手当ごとにその主旨を検討して、有期契約社員にもつけるべきかどうか、というような論旨が展開されています。個々の手当の性格は各社異なるものですが、おおよぞ以下のような傾向を指摘することができます。


    
(1)職務関連手当で格差があるのは相当厳しい、他の原資へ組み込む

先の最高裁判決の会社は共に運送業でしたが、職務関連手当は上記対策1、2にかかわらず、有期契約社員にも支給せよとの判決となっています。ここで登場した職務関連手当とは、皆勤手当、作業手当、無事故手当です。また通勤手当や給食手当も会社が負けています。

要するにこうった手当は、その手当の主旨から判断して、職務内容や人材活用の仕組みに違いがあろうがなかろうが、有期契約社員にも付けるべきとされたのです。例えば皆勤手当なら、出勤を督励する主旨ですが、そうであれば正社員であろうが、有期契約社員であろうが、出勤を督励することに違いはないはずだということです。
また通勤手当なら、通勤に費用がかかるのは正社員も有期契約社員も同じであると判断されるのです。


こういった職務関連手当は、極力廃止し、他の原資(基本給など)に組み込む方が、有期契約社員にも同じように支給せよといわれるリスクはなくなります(通勤手当に関しては、他の原資への組み込みは困難であることから、有期契約社員にも付けざるを得ません)。


これに対し、生活関連手当(家族手当や住宅手当など)は、上記対策1、2をきちんと履行すれば、不合理と判断されるリスクはかなり下がるものと考えられます。

またテクニカルなことですが、賃金規程の各手当の定義において、以下のような条文を入れておく方が、望ましいでしょう。

「○○手当は、長期雇用を前提とし、将来の中核人材としての期待する共に、優秀な人材の獲得及び定着を期待し、福利厚生を手厚くする目的で、正社員対するインセンティブとして支給する」



なお、補足として、正社員についている手当を同額で有期契約社員にも出さなければならないものではありません。例えば先の皆勤手当でいえば、有期契約社員は週30時間以下の勤務だった場合、出勤割合が正社員と違うのですから、同じ金額の皆勤手当でなくとも可能と考えます。
また通勤手当でいえば、正社員は広域採用、全国転勤があるが、有期契約社員は一定の地域限定採用となる場合、通勤にかかる費用の上限に差異があったとしても、不合理とまではいえないでしょう。要するにオール・オア・ナッシング(100か0か)はダメですが、労務管理の違いに応じた格差は許容されるものと考えます。




=対策4=

◎格差を緩和する代償措置を考える

正社員と有期契約社員の格差を判断するとき、賃金総額ではなく、個々の手当で判断する枠組みが確立しましたが、それでも各手当間の相互の関連性も考慮されるため、ある個別の待遇が正社員を下回る場合でも、それを緩和する代償措置も検討を要します。例えば長澤運輸事件では、正社員に比べて嘱託社員には支給されない賃金項目がたくさんありましたが、正社員時代より歩合率を上げたり、年金が支給されるまで調整給が出るなど、一定の配慮がなされており、これが諸事情として重視されています。

決して定年後の社員だから、単純に賃金を切り下げても構わないとは、ならないことに注意を要します。




=対策5=

◎有期契約社員、短時間(パート)社員をできるだけ、無期化、フルタイム化する

正社員との待遇格差が問題となるのは、期間に定めのある社員、または所定労働時間が短い社員と比較した場合です(改正「パート有期契約労働法」第8条、第9条)。
つまり、無期契約と無期契約、フルタイムとフルタイム間の格差は、法改正後も対象外です。

従って、同一労働同一賃金のリスクを回避するなら、有期契約社員を無期契約に、短時間社員をフルタイム社員に転換させることも検討に値します。
また、正社員への登用制度があるのも、企業にとって有利材料の一つです。なぜなら有期契約社員や短時間社員でも、要件を満たせば正社員になれるチャンスを与えており、身分の固定化を避けることとなるからです。

小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
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18年09月03日 | Category: General
Posted by: nishimura
●遂に成立、働き方改革関連法!中小企業にも大きな影響が(2018.8月号)


さて、今年の通常国会では、数年来持ち越しとなっていた「働き方改革関連法案」が可決成立しました。この法律、いくつもの労働法の改正を一括して審議されたことから分かり難いのですが、その内容は非常に多岐にわたり、しかも中小企業にも大きな影響が及ぶ内容となっています。その一部を簡単にご紹介します。


1.時間外労働の上限規制の導入(平成32年4月1日施行予定)

 時間外労働の上限について、月45時間(年間360時間)となり、年6回までの特別条項をがある場合でも、単月100時間未満、複数月の平均は80時間かつ年間720間(いずれも休日労働を含む)の限度を設定。

 要するにいわゆる36条項の上限規制ということです。今までは法律ではなく、基準として行政指導されてきた時間外労働の上限が、罰則付きの法違反として明確になりました。これについては自動車運転業務、建設事業、医師は当分の間、適用が猶予されますが、そのほかは規模、業種に関係なく規制されることとなります。

 もっと具体的に言いますと、時間外労働を行わせることができる最大値は、

(1)年6回までは月45時間以内
(2)残り年6回の総時間外労働は450時間{720-(45×6)}となり、月平均は75時間まで。
(3)ある月で仮に90時間の残業があれば、翌月は70時間以下(複数月で平均80時時間以下しなければならないため)。


2.割増賃金率のアップによる長時間労働抑制対策(平成35年4月1日施行予定)

 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。大企業では既に8年前から施行されており、中小企業は猶予されていましたが、いよいよ中小企業にも適用されることとなりました。

 前記1において、時間外労働の最大値 に関して年6回は、月平均75時間以内と申しましたが、60時間超となると5割増となることから、単にコストアップだけでなく、給与計算事務が非常に煩雑になるため、実務的には60時間を超えない労務管理が必要になると思われます。

3.有給休暇取得促進策(平成31年4月1日施行予定)

 有給休暇のうち、5日について毎年時季を指定して付与する義務が生じます。労働者が請求していなくとも、5日は取得させなければならないのです。これに関しては来年の4月からの施行であり、対策は待ったなしです。実務的には、五月雨式の取得による業務への混乱を避けるため、グループまたは個人ごとの計画付与方式を取らざるを得ないでしょう。

 また今後は各人の有給日数や基準日の管理が今以上に必要となり、5日を付与していないことによる労使トラブル、労基署の指導調査も激増する可能性があります。


 
4.同一労働同一賃金(平成33年4月1日施行予定)

 短時間労働者(パート)、有期雇用労働者、派遣労働者について、正規社員との不合理な格差を禁止するもので、短時間労働者には従来から均等待遇(同じにすること)、及び均衡待遇(違いはあって良いが、不合理は違いは認められないこと)の理念に基づく法律がありましたが、有期雇用労働者や派遣労働者にも適用範囲が拡大されます。

 特に有期契約労働者につきましては、本年6月1日に最高裁判所で二つの大きな判決が同時に出ました(ハマキョウレックス事件、長澤運輸事件)。今後の労務管理、特に賃金体系の設計に大きな影響が考えられることから、また別に紙面を割いて、ご紹介申し上げると共に、対策を検討して行きたいと思います。

ただ、このメルマガを執筆している現在におきましては、いずれも細かな政省令、指針、通達はまだ出ておらず、今後の動向に注意が必要です。


いずれにしましても、これまでこういった労働問題は、人事総務部門のこととされてきましたが、これからは経営課題になりつつあることを認識する必要があるようです。

風向きは完全に変わりました。梶は大きく切られたのです。特に残業が多い会社は、世間から退場を迫られているのかもしれません。

弊所でも、こういった経営課題に、少しでもお役に立つべく、ご提案をして参りたいと思います。


小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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18年08月03日 | Category: General
Posted by: nishimura
●年次有給休暇について その2 (H30.7月号)


皆様こんにちは、西村社会保険労務士事務所の坂口です。前回は年次有給休暇の付与要件や付与日数等をご説明させて頂きましたが、第2回目は実務的な内容、多いご相談、今後の法改正等をご紹介させて頂きます。


○年次有給休暇の半日付与

年次有給休暇の付与については暦日単位が原則であるので、半日単位で請求してきても、応じる義務はないのですが、会社が認めた場合について半日単位で付与する分には差し支えありません。最近は半日単位を認める会社が多くなっております。


○年次有給休暇の時間単位付与(時間単位年休)

・労使協定(届出不要)を締結すれば、年に5日を限度として、時間単位で年次有給休暇を付与することができます。労使協定に定める内容は
ア.時間単位年休の対象労働者の範囲 
イ.時間単位年休の日数
ウ.時間単位年休1日の時間数 
エ.1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数となります。

・時間単位年休に支払われる賃金額

時間単位年休1時間分の賃金額は、
ア.平均賃金
イ.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
ウ.健康保険の標準報酬日額(労使協定が必要)をその日の所定労働時間数で割った額になります。


ア~ウのいずれにするかは、日単位による取得の場合と同様にし、就業規則に定めることが必要です。

・時季変更権
時間単位年休も年次有給休暇ですので、事業の正常な運営を妨げる場合は使用者による時季変更権が認められます。ただし、日単位での請求を時間単位に変えることや、時間単位での請求を日単位に変えることはできません。


○年次有給休暇の計画的付与

労使協定(届出不要)により年次有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、有給休暇の日数のうち※5日を超える部分を、下記のような方法で取得させることができます。

・事業場全体の休業による一斉付与
・班別の交替制付与
・年次有給休暇付与計画表による個人別付与等

※5日を超える部分とは⇒20日年次有給休暇を有している場合 20日-5日=15日 この15日が計画付与できる日数となります。


よって例えば事業場全体の休業による一斉付与の場合で、年次有給休暇がない労働者や少ない労働者については特別休暇や年次有給休暇の日数を増やすことが望ましいですが、そのような措置を取らない場合は、欠勤扱いするのではなく少なくとも休業手当(平均賃金の6割以上)の支払いが必要になります。

今後有給休暇取得の義務化(下段 今後の法改正参照)が施行されれば、有給休暇の計画的付与を採用する会社は増々増えてくるかと思われます。


○多いご相談としては3つのケース

1.退職の際にまとめて取得申請してくるケース

このケースは申出してくるタイミングにもよりますが、会社としては拒否することは出来ず、対策としては以下の方法が考えられます。

・退職間際であれば引継もあるので引継を完了してから消化するように依頼する方法
・引継業務が残っているならば引継業務を完了するまで出勤してもらう旨を依頼し、逆算して退職日までで有給が消化しきれない場合は、退職日を変更して頂くか、退職日以降の消化出来ない有給については買い取る形で話をする。

※先ほど申出してくるタイミングにもよると言いましたが、労働者から退職の意思表示があり、その退職を人事権者が承諾すればその退職日以降は有給の消化は当然出来ませんので申出があっても拒否することが出来ます。
つまりは退職日が確定した後で退職日の撤回や退職日以降の分について申出してきても拒否出来るということです。ただしあくまで人事権のある方が承認した場合になりますので、人事権がない方が承認しても拒否は出来ません。
またそのような労働者の場合は有給消化について拒否が出来ても感情的になりそれ以外の部分(例えば残業代など)で主張してくるケースがあるかと思われます。


2.頻繁に取得する人とそうでない人の差が激しい

有給は権利ですので、これといった対処法はなく頻繁に取得する方につき拒否や抑制することは出来ませんが、一つの方法として「有給休暇取得のお願い」(HPに書式雛形あり)といった文書を社内掲示や回覧することは可能かと思われます。また一定の期間を区切って有給休暇を取得しなかった労働者につき表彰し金一封を出す会社もあります。


3.当日、事後に有給休暇を申請してくるケース

年休取得にあたって当日や事後に申請してくる労働者について、判例では年休の時季指定の期限について就業規則に定めた「原則として前々日の勤務時間終了時までに請求すること」という規定内容が年次有給休暇に違反するものではなく、合理的内容である限り有効であるとしています。
つまりは前々日とする定めは、時季変更権の行使についての判断の時間的余裕を与え、代替要員の確保を容易にし、時季変更権の行使をなるべく行わないように配慮するようにしたものであるから有効であるとしたものです。

また会社の時季変更権については、時間的余裕がない状態で年休取得の請求があった場合は、その時季変更が事後に行われたとしても適法とされています。だからといって代替要員の確保等なんら配慮、努力がない場合は時季変更権の行使は許されないかと思われます。

また長期での年休休暇の取得については、長期であればあるほど代替要員の確保等困難であり、事業の正常な運営を妨げる要因になることから、会社との調整をせずに行った長期での年休休暇についてはある程度時季変更権の裁量の余地があるかと考えられます。

よって現実的な対応として事後申請は原則拒否、ただし傷病等の事由によりやむを得ないと会社が判断したときは例外規定を設け、その際は医療機関のレシートなどの証明を求める形にする。
当日申請の場合は有給休暇は暦日単位が原則より、当日申請も事後申請になりますので上記判例にもあるように就業規則上の申請期間が合理的な期間である限り拒否しても違法にはならないかと思われますし、また代替要員の確保等が困難なので時期変更権の行使も可能かと思われます。
ただ合理的な期間後の申請、当日申請であっても拒否、時季変更権が不当と判断される可能性もあるので、事後申請と同様で個別具体的な諸事情(当日申請が疾病等で止むを得ない場合等)を勘案し総合的にその有給取得の可否を決めていくことになります。

○Q&A

Q1 定年退職者を引続き嘱託として同一事業所で雇用する場合の勤続年数は?
A1 実質的に労働関係が継続しているものと認めれら、勤続年数は通算するものとなります。つまりは定年により有給休暇はリセットにならないものとなります。パートタイマー等を本採用として引続き雇用する場合も同様です。

Q2 在籍出向の場合は?
A2 在籍出向の場合の出向労働者については出向元、出向先双方と労働契約関係が存することになり、この両者を統合したものが当該労働者の労働関係ということになるので、出向元における勤務期間を通算した勤続年数に応じた年次有給休暇を付与しなければなりません。
※移籍出向の場合は出向元の契約は継続されませんので勤続年数は通算されません。

Q3 短期契約労働者の契約を更新して、事実上6か月以上使用している場合は?
A3 契約更新は単なる形式にとどまり、実質的に労働関係が継続しているものと認められる場合は継続勤務に該当する形となります。つまりは期間契約であっても実質空白期間もなく更新しているような場合は継続勤務とみなされるということです。

Q4 年次有給休暇の買い取りは?年次有給休暇が定める法の日数よりも多く付与した場合は?
A4 年次有給休暇の買い取りは本来の趣旨である「休むこと」を妨げるこことなるため、禁止されています。ただ退職により残ってしまった行使できなくなった日数、法定日数を超えて与えられている有給休暇については買い上げをしても違反にはならず、その金額の決め方も特段定めはございません。

Q5 年次有給休暇の時効は?
A5 年次有給休暇の時効は2年と労基法115条で定められています。
この起算日については労基法では特段の定めがありませんので、年休の付与日から時効が進行するという考え(時効は権利を行使することができるときから進行するより)でいくと、例えば入社日に5日、残りの5日については6ヶ月経過後の法定どうり付与した場合には入社時に付与された5日については入社日、残りの5日については6ヶ月経過後が時効の起算日(そこから2年)ということになります。


○今後の法改正 

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」にて、有給休暇5日の取得義務化が今国会で成立しました。施行日は平成31年4月1日です。

また債権法改正後の新民法(債権者が権利を行使することができると知った時から5年間又は権利を行使できる時から10年間)との関係では、債権法改正に連動したかたちで、労働者保護を目的とする労基法115条(時効2年)のほうが労働者にとって不利な時効を定めていることになるとのことから、労基法115条の見直しに向けた検討がおこなわれております。つまりは「残業代請求の時効」「年次有給休暇の時効」の2年が5年へ見直しされる可能性があります。

年次有給休暇に限れば最高40日(20日×2年)とこれまで言っていたのが、勤続年数にもよりますが最高100日(20日×5年)蓄積されているといったことも出てくるかもしれません。そうなれば管理上も今まで以上に煩雑になり、また退職時に一括請求ともなれば大変なことになります。
年次有給休暇については取得率(50%以下)が日本は低いと叫ばれております。中小企業においてはギリギリの人数で日々業務をこなしており、1人欠けても日常業務に支障がでますし、補充しようと募集をかけても応募が少ないのが現状です。大手企業と同じように取得させるのは業種、企業規模、仕組みからして困難です。

ただ今後の働き方改革の動向、労働力人口の減少、時代の流れをみても中小企業だからといって言い訳のできないが状況になんてきており、難しい問題ではありますが、一緒に考え対応していければと思っております。



(文責 社会保険労務士 坂口 将)
18年08月03日 | Category: General
Posted by: nishimura
●年次有給休暇について その1 (H30.6月号)


皆様こんにちは、西村社会保険労務士事務所の坂口です。今回のメルマガは坂口が担当させていただきます。

さて労務相談も10年前と現在ではその内容が変わってきたことは以前お伝えさせて頂きましたが、相変わらず多いのが有給休暇に関してのご相談です。今回は2回に分けて年次有給休暇の付与要件、付与日数等につき、多いご質問、ご相談、対応例、今後の法改正等の動向をご紹介させて頂ければと思います。



○付与要件

1.6ヶ月継続勤務した労働者
→全労働日(注1)の8割以上出勤(注2)したこと

2.1年6ヶ月以上継続勤務した労働者
→6ヶ月経過日から1年ごとに区分した各期間の初日の前日が属する期間において全労働日の8割以上出勤したこと(注3)

(注1)全労働日とは

労働契約上、労働義務の課せられている日をいい、具体的には就業規則等で労働日として定められた日のことで、一般的には6ヶ月(又は1年ごとに区分した期間)の総歴日数から所定の休日を除いた日がこれに該当します。
ただし次の各日については、全労働日に含まれません。
・所定休日に出勤した日
・使用者の責に帰すべき事由による休業日
・正当な争議行為により労務の提供が全くされなかった日


(注2)出勤したものとみなされる期間

次の期間は、付与要件とされる8割以上の出勤の算定においては出勤したものとして取扱われます。
・業身上負傷し、又は疾病にかかり療養の為に休業した期間
・育児介護休業法の規定による育児休業又は介護休業をした期間
・産前産後の女性が労基法第65条(産前産後休業)の規定によって休業した期間
・年次有給休暇を取得した日
◎最近は中小企業においても育児休業の取得者が増えてきており、その際出勤率の算定にあたって育児休業、産前産後休業中も出勤したものとして取扱われることに驚かれる経営者の方が多いです。


(注3)
付与日数を勤続年数ごとに表にしたものが以下になります。(通常の労働者)

    6ヶ月     1.5年     2.5年     3.5年    4.5年    5.5年
(8割以上)|(8割未満) |(8割以上) |(8割以上)  |(8割未満) |(8割以上) | 
    10日      0日      12日 14日     0日     18日
    



○付与日数について

1.通常の労働者の付与日数

勤続年数    6ヶ月  1年6ヶ月  2年6ヶ月  3年6ヶ月  4年6ヶ月  5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
日  数 10日   11日 12日   14日 16日   18日  20日

2.週所定労働時間が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数

所定労働日数 1年間の所定労働日数           勤 続 年 数
  0.5年  1.5年  2.5年  3.5年  4.5年  5.5年  6.5年以上
4日      169~216日         7日   8日   9日   10日  12日   13日  15日
3日      121~168日         5日   6日   6日   8日   9日   10日  11日
2日      73~120日          3日   4日   4日   5日   6日   6日   7日
1日     48~72日          1日   2日   2日   2日   3日   3日   3日  



○労働者の時季指定権

使用者は、労働者が請求する時季に年次有給休暇を与えなければならない。



○使用者の時季変更権

請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合についてのみ
→他の時季に変更することができる。

つまりは使用者として労働者からの年次有給休暇ついての請求において行使できるのは、時季変更権しかなく、その時季変更権においても事業の正常な運営を妨げる場合についてのみ行使できるものであって、事業の規模、業種、業務の繁忙期、請求日数、請求の時期などを元にして総合的に判断する形になりますが、単純に忙しいからや、人員不足だからといった理由では時季変更権の行使は難しく、年次有給休暇を取得させる為の代替要員の確保を行ったか、その為の時間的余裕が会社側にあったかなどから総合的に判断されるものであり、また当然年次有給休暇の取得理由は使用者の干渉を許さないものであり、どのように利用するかは労働者の自由であり、利用目的によって拒否することや条件付きで認めることは認められません。
 


○年次有給休暇の賃金

有給休暇期間の賃金の支払い方としては次の3つの方法のいずれかで支払わなければなりません。

原則
就業規則その他これに準ずるものの定めによる場合
1.平均賃金
2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
3.健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額(労使協定で定めた場合)

通常は2がほとんどではありますが、パートなどにおいて毎日の所定労働時間が異なるような場合は1の平均賃金を採用する旨規定し、運用する場合があります。

以下次号

(文責 社会保険労務士 坂口 将)
18年05月31日 | Category: General
Posted by: nishimura
~バブル期を超える求人難時代の到来!!~

●如何にして求人広告の応募効果をアップさせるかを考える  その3 (2018.5月号)



グリコの“おまけ”で差を付けよう!!



このシリーズの3回目です。今回はグリコの“おまけ”を侮るべからす、として仮説を立てて見たいと思います。
皆様は、グリコの“おまけ”、ご存知ですよね。子どものころ、夢中になった人もあるのではないでしょうか?商品自体の内容はそんなに大したものでなくとも、“おまけ”があるとなんだか嬉しくてついつい買ってしまうという経験は誰にでもあるのではないでしょうか?


これを求人広告で考えた場合、商品内容自体とは、給与や休日に当たり、給与が高く、休みが多いに越したことはありません。でも現実には、そう簡単には行かず、結局似たり寄ったりの給与や休日が並ぶのです。

そこでグリコの“おまけ”の登場です。

つまり、コアな商品(募集条件)で差が付けられなければ、“おまけ”で勝負してみるのです。少なくとも同じ内容の商品が並んでいるとき、皆さんなら“おまけ”付きの商品と付いてない商品のどちらを選ばれますか?

分かりやすくするために、単純な募集条件で比較します。その他の項目以外は、A社、B社共に全く同じです。

A社                    B社

職種 製造工                職種 製造工
時間 8時から17時             時間 8時から17時
休日 日、祝、月2回            休日 日、祝、月2回
場所 大阪市平野駅から歩5分        場所 大阪市平野駅から歩5分
                      その他 貸付金制度(住宅、教育等)、教育メンター(専属指導係)制度


これは確率論です。おそらく、条件が同じなら求職者も、“おまけ”付きのB社をまず選ぶのではないでしょうか?


ここで“おまけ”とは、職種、給与、労働時間、休日休暇、立地以外の項目のことで、具体的には以下のようなものです。

◎お金、プレゼントに関すること◎

財形貯蓄制度   私的年金制度(確定給付年金、 個人確定拠出年金iDeCo)  自社積み立て制度  ストックオプション制度  従業員持株会
団体生命保険   個人表彰制度   貸付金制度(住宅、教育等)  誕生日祝い金  結婚記念祝  永年勤続祝  慶弔見舞金  入社準備金など


◎教育支援に関すること◎

外部研修(費用は会社負担) 資格取得援助金(補助金)  海外研修(留学)制度   自己啓発援助制度  社内自主勉強会(任意) 
教育メンター(専属指導係)制度など


◎法定休暇以外のもの◎

有給休暇(入社時から10日付与日) 長期リフレッシュ休暇  バースデー休暇  学校行事休暇  会社創立記念日休日など  


◎福利厚生的なもの◎

提携託児所の保育料40%割引  保育所完備(24時間体制) 借上社宅制度  社員食堂あり  食事補助  社員割引制度  労災上積み補償制度  制服貸与  服装自由(ジーパン・Tシャツ可)  現物支給多数あり(お酒、お米、お菓子) 商品券(割引券)  契約保養所あり

◎人事制度に関すること◎

正社員登用あり キャリアパスあり  転勤なし  5年未満無期転換OK   社内ベンチャー制度  マタニティタイム制度  独立支援制度

◎仕事以外の活動に関すること◎

社員旅行(家族同伴可)  海外旅行(昨年ハワイ) 各種レクリエーション(運動会、ソフトボール大会等) ボランティア週間
社内クラブ活動(フットサル部、野球部、ゴルフ同好会)


◎そのほか◎

記念日花束プレゼント  キャンピングカー貸出制度   テニスコート有   法人契約スポーツ施設無料利用   リゾートクラブ法人会員
野球観戦・サッカー観戦  マイカー通勤可(駐車場あり)  ガソリン代支給  

これらを参考にして、ぴったり同じとはいかないまでも、ウチでもこんなこともやっている!というこのがあれば、どんどん出して戴きたいと思います。


これらは決して決定的な動機となるモノでないかもしれません。しかし同じような募集条件が並んだとき、おまけがある方が有利なはずですし、少なくともおまけが付いているから嫌だ、と考える求職者はいないでしょう。そうであれば、隠れている“おまけ”は全部出すべきです。

隠れている“おまけ”はありませんか?


小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com

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18年05月01日 | Category: General
Posted by: nishimura
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