大企業のリストラをまねするな!中小企業は社員を雇う品格を保持しよう。(H21.1月号の記事)

 あけましておめでとうございます。旧年中はご愛読いただきましてありがとうございました。本年も出来うる限るみなさまのお役に立てる情報を提供すべく、このメルマガを発信してゆきたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。
さて昨年は、トヨタやソニーを始めとする多くの大企業の人員削減報道がなされました。派遣や請負、期間従業員の打ち切りだけでなく、正社員にもその影響が出だしています。今年はさらに追い討ちをかけて、製造業の派遣可能期間が法定上限の3年を迎えるいわゆる2009年問題も控えており、更なる失業者が溢れることが見込まれています。
私は普段、経営者の味方を標榜する使用者側の社会保険労務士として仕事をさせていただいておりますが、昨今の人を雇うということに関する世情を見ておりますと、経営側に強い違和感を覚えざるをえません。いつから日本企業の経営者は従業員を、物品経費の一部と考えるようになったのでしょうか?
もちろん労働者側にも大きな原因があることは承知のうえでのことです。

 この問題に限らず、中小企業においても、経営者の人を雇うということに対するモラルが、劣化しているのではないかと感ずることがよくあります。例えば、経営理念を作成している会社は数多くあると思いますが、その理念に、そして社長の言葉の中に、従業員の幸せが見られないのです。批判を恐れずに直言すると、会社を経営するということの意味をとことん突き詰めれば、
1.お客さんに幸せを提供すること
2.従業員を幸せにすること 
の2点に集約され、あとは枝葉だと思うのです。非常にシンプルに考えています。大企業ならこれに株主利益が加わるのでしょうか。

 かつてホリエモンのころ、会社は誰のものか、なんて論争がありましたが、そんなこと議論するまでもなく、そこで働いている人(役員を含む)のものに決まっています。確かに会社法上はそうはなっていませんが、現実的にそうなのです。
しかしです。最近経営者とお話しすると、この従業員の幸せという視点があまり感じられなくなりました。雇った以上は責任があり、ウチの会社で幸せになってもらうという強い意志が伝わってこないのです。ウチの会社で結婚し、子供を作り、家を建て、車を買う・・・・・。そうやって世間並みに幸せになって欲しいと願う志が希薄に感ずるのです。創業者なら思い出してください。かつて初めて人を募集し、ウチの小さなオンボロ会社に果たして来てくれるだろうか、とやきもきした気持ちを。面接後、本当に出社して来てくれたときの喜びを。後継者の方もそうです。人は最初から「ある」のではないことを。

 ここ5,6年の間に個人と会社の紛争が激増しました。中小企業が労働法を完璧に守るのは困難で、それはあたかも法定速度を必ずしも守れない道路交通法のようなものです。でもそこだけ見れば、違反は違反です。それを突っ込まれると、現実世界が成り立ちません。しかし、経営者に悪気がなく、従業員の幸せを願う心があれば、表面化しない紛争もあるのです。経営者の従業員を思うその人間観は、やはり普段の言葉遣い、表情、行い、処遇に出ると思うのです。それは従業員に微妙に伝わることになるでしょう。鏡の法則です。

 大企業には大企業の論理があるのかも知れません。それは私には分かりません。でも中小企業は中小企業らしく、従業員の幸せを家族の幸せとして感じましょう。大企業のリストラをまねするな!中小企業は社員を雇う品格を保持しようではありませんか。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com