死刑は、国家により人の命を奪う刑罰であるため、廃止すべきではないかが激しく論争されている。

 大谷教授によれば、死刑存廃論の論点は、(1)国家は犯罪者の生命を奪う権限を認められているか(法哲学的観点)、(2)死刑に犯罪を抑止する一般予防機能があるか(刑事政策的論点)、(3)死刑は憲法36条にいう「残虐な刑罰」に当たるか(憲法的論点)、(4)誤判の可能性がある以上、取り返しのきかない死刑を宣告することは適正手続きに反しないか(適正手続き的論点)に集約される。

 死刑廃止論者は、このうちの全部もしくは一部を肯定して、死刑を廃止すべきであるとする。

 しかし、死刑は憲法36条にいう「残虐な刑罰」に当たらないとするのが、最高裁の判例であるし、否認事件でなければ誤判の可能性は極めて低い。また、死刑には犯罪抑止の威嚇力があることも否定できないと思われるし、凶悪な犯罪者は、生命剥奪によって社会から完全に隔離する必要性もある。

 そして、何よりも、人を殺すなど凶悪な犯罪者に対しては、死刑をもって臨むべきであるというのが、国民感情の多くを占めていると思われる。

 このことからすれば、死刑廃止は時期尚早であると考える。