●2020.4月スタート 中小企業にも迫る、時間外労働の上限規制(2019.7月号)

2019年は、生産性革命を命題とする働き方改革がスタートした年となりました。中小企業では、以下のスケジュールで順次新しいルールが始まることとなり、生き残りの為にも対応が迫られることになります。

(1)年5日の有給休暇の取得を企業に義務付け(2019.4施行)
(2)労働時間の客観的把握の義務付け(2019.4施行)
(3)フレックスタイム制の拡充(2019.4施行)
(4)高度プロフェッショナル制度の創設(2019.4施行)
(5)産業医・産業保健機能の強化(2019.4施行)
(6)勤務間インターバル制度の促進(2019.4施行 努力義務)
(7)残業時間の上限規制(2020.4施行)
(8)不合理な待遇差の解消(2021.4施行)
(9)月60時間超の残業の割増賃金率引上げ(2023.4施行)


独断ですが上記のうち、(3)のフレックスタイム制の拡充、(4)の高度プロフェッショナル制度の創設、(5)の産業医・産業保健機能の強化は中小企業ではほとんど関係がないため、それ以外の項目で対応が必要ということとなり、(1)の年5日の有給休暇に関しては、すでにこのメルマガでも触れ、対応中の企業も多いかことかと思います。


今後、順次その他のテーマにつき対応策を検討して参りたいと思いますが、今回取り上げるのは(7)の残業時間の上限規制です。
簡単に言うと、今まで青天井で残業をさせることが出来ましたが、来年の4月からは残業に罰則付きで上限が設けられるということです。

1.まずこれまでのルールを確認しましょう。


そもそも労働基準法では、原則として時間外労働を罰則付きで禁止しています。

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

罰則:6か月以下の懲役または30万円以下の罰金


よく、今回の改正が罰則付きとして説明されますが、もともと残業は禁止されており、これに反すると罰則があるのです。


但しこの罰則が、いわゆる36協定を締結することで、刑事免責される効果があります。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条(中略)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。


そしてこの36協定に記載できる残業時間が、今までは無制限に記載することが可能だったわけです(ただ限度基準が示されていたので、この基準の範囲内で記載するよう行政指導は行われていた)。


2.来年4月以降はどうなるのか

a.残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間(1年変形制の場合は月42時間、年320時間)
 月45時間は、おおよそ1日当たり2時間程度の残業に相当

b.臨時的な特別の事情があって年6回まで特別条項を使う場合でも、
・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
・月100時間未満(休日労働を含む)  を超えることは不可。
 ※月80時間は、おおよそ1日当たり4時間程度の残業に相当


ただこの理屈は非常に複雑で、これを個人ごとに管理するには、よっぽど高価な勤怠管理システムを導入しない限り、現実的には不可能です。従って、中小企業で残業させることができるリミットは、以下のように考えるべきです。


1ヶ月42時間が6回まで(1日2時間以内) 及び   1ヶ月78時間が6回まで(1日4時間以内)  

(42時間×6回)+(78時間×6回)=年間上限720時間

つまり年6回は毎月42時間がリミット、あとの年6回は毎月78時間がリミットとして管理します。

ところで、当面はこの数字を意識して管理するとしても、2023年4月からは60時間超の残業代の割増率が25%から倍の50%に跳ね上がります。

しかも現在、賃金の請求時効を2年から5年に延ばすことが検討されています。そうすると、60時間超の残業代コストはかなり上昇し、不払い額がある場合は相当膨らむリスクも高くなります。

そのように考えると、前記の78時間は60時間と読み替えて(年間では612時間)、今から管理して行った方が良いと考えています。

月42時間を6回まで、月60時間を6回まで。

これからの生き残りをかけた時間管理です。


(注)自動車運転の業務、医師、建設事業は5年間の猶予措置があります。

小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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19年08月23日 | Category: General
Posted by: nishimura
new.jpg●まだまだ改善余地がある  ハローワーク求人 (2019.6月号)


空前の人手不足です。このメルマガでも再々、効果的な求人方法に関して取り上げてきましたが、今回はハローワーク求人を取り上げます。古くからある無料で利用できる全国最大の求人ネットワークでありながら、まだまだ利用にあたり改善の余地があるからです。
これから申し上げることは一つ一つは、小さな秘訣かもしれませんが、できることは全部やる!!、それくらいでないとこの求人難は勝ち残れません。
以下、改善ポイントを申し上げます。



1.文字数を最大限に活用する


ハローワークの求人申込書や事業所登録シートには、マス目がある項目とない項目があります。マス目がある項目は、そのマスに沿って、文字を埋めて行くことになります。「事業内容」や「職種」がその典型欄で、「事業内容」は90文字、「職種」は28文字分のマスがあります。

これとは別にフリーで記載できるマス目のない項目があり、その典型欄は「仕事の内容」、「求人条件にかかる特記事項」、「備考」欄です。実はここで差を付けるべきであるのに、余り有効活用されていません。

これらの欄、実は意外に書き込むことができるのです。

「仕事の内容」(297文字)
「求人条件にかかる特記事項」(216文字)
「備考」(208文字)


マス目がなく、手書きでフリー記載となる上に記載欄が小さいため、どうしても文字数を多く余らせてしまっている求人票が多いのです。これは勿体ない。
リクナビにせよ、マイナビにせよ、民間の求人広告では掲載価格と文字数(枠の大きさ)は相関関係にあるため、文字数を無駄にすることは少ないのですが、ハローワークの求人票は構造上、空白の無駄が生じやすくなっています。

何を書き込んで差別化するかは、過去に触れており、ここでのテーマではないので省略しますが、基本的には情報量が多い方が有利です。きちんと最後まで書き込んで、掲示しましょう。




2.「職種」(28文字)、「仕事の内容」(297文字)が最重要。特に最初の行に注力する

今はネット(スマホ)の時代。ハローワークの求人といっても、ハローワークインターネットサービスを始め、求職者はさまざまな民間のまとめサイトに引っ掛けて、検索しているものと思われます。


ハローワークインターネットサービスの場合、仕事内容や就業場所など様々な検索から「求人情報一覧表示」を表示させ、そこから気になった情報をさらにクリックして詳細情報を見る形式になっています。

「求人情報一覧表示」には、「職種」「雇用形態/賃金(税込)」「就業時間/休日/週休二日」「産業」「沿線/就業場所」のみが、一覧として表示され、企業の特徴をアピールしたい「仕事の内容」、「求人条件にかかる特記事項」、「備考」欄はこの段階では表示されません。
一覧からさらに個別にクリックしてもらって表示されるのです。


そうすると最も注力すべき項目は「職種」です。実際この項目が一覧表の中で最も見られているというデータも有ります。先ほど28文字まで記載可能と申しましたが、この文字数すべてを一覧の段階で表示させることができます。つまりここで差別化を図らないと、詳細まで見てもらうことすらできません。
この28文字を使い切るつもりで、表現を工夫する必要があります。

またハローワーク窓口端末で出る「求人情報一覧表」の「仕事の内容」は297文字中、最初の72文字しか表示されません。ハローワークインターネットサービスだけでなく、民間のまとめサイトで表示される「職種」や「仕事の内容」は、その文字数分が全部表示されず、一部であるものがあります。従って、「職種」であれば最初の14文字、「仕事の内容」であれば出始めの72文字程度で最低限、伝えたいことを入れ、詳細をその後に入れる方が検索では優位と言えます。




3.画像情報

今の時代、文字情報だけでなく画像情報を入れるのは必須と考えるべきでしょう。ハローワークの求人票にも、画像掲載が可能です。社屋、職場風景、先輩社員、レクリエーションの様子など、多角的に画像で伝えることが可能なのです。
残念ながら、現在のシステムではハローワークインターネットサービスでは見られず、職安の窓口端末でしか開示されません。また画像情報の取り扱いもハローワークごとに異なるので、事前確認が必要です。

できればハローワークの求人票から自社のホームページへリンクさせ、もっと潤沢な情報を見える化しておくべきです。横道にそれますが、今の時代、自社のホームページに採用専用のページは必須条件です。ハローワークの求人票では表現できない事項も含め、かなりの工夫が自社のHPでは可能です。興味が沸いたらすぐに応募できるように、応募フォームも必ず付加しておきます。




4.避けたいNGワード

「求人条件にかかる特記事項」、「備考」欄を有効に活用すべきであることを先述しましたが、ここを有効に活用せず、文字数を余らせると、ハローワークの職員が勝手に以下のような文言を書き込むことがあります。

「応募にはハローワークの紹介状が必要です」


これはよく書き込まれる文言です。

これに対応できる求職者とは、いったいどんな人でしょうか?おそらく現在失業中で、直接窓口端末をたたいて検索をしている応募者でしょう。しかし今はネット検索の時代。在職中で、スマホで検索している求職者は、この文言で諦めないでしょうか?
確実な実証はありませんが、この文言で応募が減ることはあっても、増える見込みは皆無でしょう。むしろ邪魔です。


「ハローワークからのおしらせ」

全く不要です。まれに「求人票は契約内容ではないので、応募条件は契約書で確認して欲しい」趣旨の文言がこのお知らせとして挿入されることもありますが、大きなお世話です。あたかも相違があることを予測させるような余計な文言です




5.地図を馬鹿にしない

ハローワークの求人票で唯一、手書きのまま掲示される個所があります。それは地図です。勿論、印刷されたものを貼り付けても構いませんが、手書きで出す場合は注意を要します。
皆さんは手書きで書かれた履歴書で応募を受け付けることがあるかと思いますが、その文字が汚い、雑、見にくいとしたら、それだけで採用意欲が減退しませんか?
応募者もそのような地図が記載されていれば、その企業へのイメージが下がることとなりかねません。たかが地図、侮るべからずです。



6.週末登録のすすめ

原則、新規求人は上位表示され、ネットでも検索され易いのですが、日々、新規求人が登録されるため、どんどん順位が後退して行くこととなります。但し、運よく金曜日に登録された求人票は、月曜日に新規求人が登録されるまでの土・日・月の間、上位表示されることとなり、訴求効果が上がります。

ただ大阪などの都市部では求人数が多いため、こちらの思惑通りに金曜日に持ち込んでもその日に登録されないことがありますので、確認が必要です。



7.リクエスト求人、企業説明会の利用


求職者情報一覧の中から、気になる求職者へ直接アプローチできるシステムです。またハローワークでは無料の企業面接会ブースを設置しているところもあります。いずれも所轄のハローワークでご確認ください。



8.あながち馬鹿にできないハローワーク職員との人脈


ネットの時代になったとはいえ、馬鹿にできないのが対面による人脈の構築です。誰と構築するかといえば、それはハローワークの紹介部門の職員です。顔なじみになり、人間関係を構築しておくと、優先的に紹介を回してくれることがあります。
定期的に足を運び、関係を構築しておくことは決して無駄にはなりません。



小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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19年05月30日 | Category: General
Posted by: nishimura
人手不足の採用難で、判断ハードルが下がり気味・・・

~採用が厳しくとも、妥協不可の3点セットを忘れないようにしよう(2019.5月号)

平成の世が終焉を迎えた今、バブル景気で沸騰していた平成元年を上回る人手不足状態が続いています。2018年の年間での有効求人倍率は、バブル景気最高潮の平成2年を超えています(2019年2月現在1.63倍)。

また失業率も完全雇用に近い2%台という低水準で推移しています(2019.2月現在2.3%。3%未満は完全雇用状態とされている)。


特定の業界においては人材募集が極めて厳しい状況下にあり、求人を打っても応募すらないことも多いでしょう。

そういったこともあって、ややもすれば最近、採用のハードルが下がり気味になっているのが少々気がかりです。応募がなく、求人を急いでいる状況下では、焦りから、どうしても目が曇りがちになります。


いくら厳しいからといっても、最低、以下の3つの要素については、事前にきちんと確認しておくようにしましょう。いわば妥協不可の3点セットです。

1.健康状態
2.退職事由
3.出産・育児・介護・看護の有無

以下順に解説します。

1.健康状態

何よりも最優先で確認すべき事項です。労働契約の本旨は非常にシンプルで、

使用者の義務は賃金を支払うこと、
労働者の義務は労務を提供することです。


この等価関係で成り立つ契約です。そして使用者の義務である賃金の支払いは、遅らせたりカットしたりすることはできません。これは契約論以前に労働者を保護するためにある労基法弟24条違反になるからです。

一方、労働者から提供される労働力ですが、これも本来、不完全なものであってはいけません。まずは健康な状態で労務を提供する義務があります。これを規律する実定法は存在しませんが、契約の解釈上、または付随義務として当然の帰結といえます。


つまり労働力とは、能力や技術や知識や経験を期待する前に、完全な労働力を提供する必要があり、これはすなわち健康体で労働に従事する意を含みます。健康な状態で働くことは当たり前ですよね。


しかし、採用時において健康状態を労働者の方から、開示申告する義務まではありません。個人的には信義則上、労務に支障が出る状況があれば、事前に申告すべきとは思うのですが、申告しなかったからと言って、責めを負うものではないのです。この情報は、使用者の方から積極的に取りに行かないといけないのです。


例えば・・
・長時間同じ姿勢を繰り返す業務や重量物を扱う業務なら、腰痛は大丈夫か?
・自動車運転や、危険物を扱う業務では、パニックや意識障害を起こすような持病はないか?
・業務遂行に支障が出る薬物投与は受けていないか?


特に最近では精神疾患で困惑することが多発しており、健康診断結果のみでは分からないことが多くなっているのです(先の例もそうです)。

但し健康情報は非常にセンシティブな情報であり、無原則に行えるものではなく、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針」(厚生労働省 30.9.7公示第1号)において、取得や管理に関するガイドラインが示されています。

この解説はさておき、ここで私が申し上げたいのは、民間企業においては採用活動の自由が保障されており、そのための合理的な範囲内での情報収集は認められており、不完全な労働をあえて受領しなければならない義務まではない、ということなのです(但し障がい者は傷病者と違い、一定規模の企業には法定雇用率が定められている)。


まずは健康な状態で労働が提供できるのかどうかを確認しましょう。


2.退職事由


実際に私のクライアントであった事例をご紹介します。

労働者 甲野太良(仮称)。ある業界で転職を繰り返しており、職務経歴書からは相当の技術が想像される方がでした。場合によっては即、責任者を任せられるような経歴です。即戦力が欲しいA社としては、期待をこめて採用しました。ところがこの人物、採用してみると極めて素行が不良で、問題発言や行動を繰り返す始末。たまりかねて解雇を告げると、待ってました、とばかりに労基署やあっせん機関への申し立て、訴訟と手際よくA社を攻撃してきました。後で分かったことですが、この人物、今までから行政機関の窓口でも度が過ぎた申告を繰り返す人物として有名な、いわば常習者だったのです。


もし、甲野太郎の退職事由が分かっていれば、果たして採用していたでしょうか?


他にもクライアントさんから、「彼(彼女)は前の会社でも、同じことをやってきてたようだ」とのお話を伺うことがよくあります。
 
先述の通り、企業には営業活動の自由があり、採用の自由もその中に含まれます。同様の行為を繰り返す蓋然性が高いと判断したならば、それを採用しない自由もあるのです。

一応申しておきますが、過去に問題行動があったとしてもそれはあくまでも過去の事案であり、今後将来に向かって真面目に"更正?"してくれる可能性もあり、一概に排除することに異論がある方もおられるかもしれません。しかし、採用後に課せられる使用者の労働法上の様々な義務の重さや経営環境の厳しさを比較考量するとき、そういった方を積極的に採用しなければならない理由はないはずです。

やはり退職事由も重大な関心をもって面接時に確認すべき事項と考えています。

3.出産・育児・介護・看護の有無


これは採用後、すぐに長期間にわたって職場を離脱する可能性があるかを探るものです。出産・育児・介護・看護に関しては、育児介護休業法ほか関連法により、労働者の権利として認められ、保護されているものであり、世の中の流れもこういったことに対して寛容に受容していかなければならないことは理解できます。

しかしここで私が想定しているのは、日本の大部分を占める中小企業、とりわけ小規模企業です。中小企業庁が発表している中小企業白書2017年版によると、企業規模と従業員数の関係は以下の通りとなっています。


大企業の労働者    0.3%
中規模企業の労働者  14.6%
小規模事業者     85.1% ※小規模事業者とは、製造業で20人以下、卸小売・サービス業で5人以下の規模を言う。

つまり世の中の99%以上が中小企業であり、20人以下で経営する事業所が85%もあるのです。


出産・育児・介護・看護に優しい社会の理念は充分に理解できますが、実際問題として小規模企業において長期離脱者が出ると、かえって周りの労働者の負担が増大し、業務に著しい支障が出かねない現実を無視できないのです。長年企業に貢献している社員なら何とか継続してもらえるような工夫を施す余地はありますが、入社して直ぐに離脱するなら、他の人を優先的に採用する選択肢があったはずです。

ここまで申し上げたことに関し、いちいち面接時に口頭にてお聞きするのはし難い事柄ですし、聞き漏れも生じやすいことから、私共ではシートを使って自己申告してもらう方式をご提案しています。面接時に応募者本人にアンケートのような形式で記入してもらうものですが、強制にならないように留意して説明します。

例えば、

「私共では面接にお越しいただいた方全員に、この申告書にご記入いただくようお願いいたしております。これは採用後に何らかの配慮事項があるのかを事前に確認するもので、あなたの健康状態や退職事由などを尋ねているものです。内容にセンシティブな事項も含まれていることから、ご記入は任意にお任せしております。もし何らかの事情でお書きいただき難いようでしたら、空欄でも結構です。宜しければご協力ください」

このようにご説明すると、ほとんどの方は記入してくれます。記載内容を採否の判定にどう活かすかは企業の判断です。また万が一書いてくれなかった方をどう判断するかも企業の自由です(私共ではこのシートもご提供しています)。


求人情勢が厳しいと、どうしてもハードルを下げざるを得ません。しかしこの3点セットの確認は必ず行っておくことが、その後のリスクやトラブルを回避する最低限の予防策だと考えています。またリスク回避のための採用判定方法はは他にもありますが、ここでは最低限のことを記しており、かつリスク回避が目的であり、有能人材の判定は考慮から除外していることを念のため、付言しておきます。

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19年05月08日 | Category: General
Posted by: nishimura
●働き方改革のウラにある真の目的を甘く見ると大変なことになるかも?
~これは労務問題ではなく、生き残りをかけた経営問題として認識しよう(2019.4月号)~


2019年は「働き方改革元年」となる年です。本年4月を皮切りに、毎年のように人事労務の分野で大きな法律改正が控えています。


2019.4月  有給休暇5日付与義務
2020.4月  時間外労働の罰則つき、上限規制
2021.4月  同一労働同一賃金の本格的開始
2023.4月  月60時間超の残業の割増賃金50%に引上げ

※施行年月はいずれも中小企業のものです。


これらを単に、労務問題と捉えては、先行きを見誤ることになると考えています。これらに対応できるかどうかで生き残る企業とこぼれて行く企業が明確になるため、生き残りをかけた振るい分けが始まったと認識すべきなのです。


ご存知のように日本の労働人口は急速に減り始めています。2008年に総人口1億2,808万人を記録したのをピークに、総労働人口はどんどん減り続けているのです。
15歳から64歳までの生産年齢人口も2015年には7,728万人(総人口の60.8%)だったものが、2065年には4,529万人(51.4%)まで減ることが予想されており、働き手は総人口の約半分にまで下がるのです。これは中位推計の数字であり、もし政策が失敗した最悪の低位推計ではもっと悲惨な結果となってしまいます。


そうすると今の豊かさを維持して行くことは到底困難となり、貧しい国ニッポンとなってしまいかねません。そこで必要なのが、この働き方改革であり、この真の意味は、労働生産性を上げることなのです。


労働生産性とは・・・・

労働生産性=アウトプット(付加価値額)÷労働投入量(労働人数、または総労働時間)

(日本はOECD加盟国36か国のなかでも、20位と低調であり、先進国の中では最下位である)


要するにいかに少ない投入量で、付加価値を得るかが問われることとなります。


つまり簡単に言うと、人口が減ってい行く日本が豊かさを維持するためには、一人あたり、または1時間あたりの粗利を上げること。これが今、至上命題として求められているのです。

そのように考えると、有給休暇を強制付与するとか、残業規制が厳しくなるとか、それ自体は枝葉末節な話です。こういったいわば経営者から見て厳しい規制は、これに順応することで、付加価値を落とさずに無限定な長時間体質から脱却し、生産効率をアップさせ、体質改善できた企業を残そうとしているのです。体質改善できた企業に生き残ってもらい、雇用を吸収させたいのです。
これについていけない企業は、そう遠くない将来、この世の中から退場を迫られることになりかねません。


有給休暇を付与すれば、稼働日数が減りますよね。残業規制が厳しくなれば、労働時間は短くなります。しかし、しかしです。だからと言って、多くの経営者は、企業規模や利益を小さくして良いとは考えないでしょう。少なくなった時間の範囲で、何とか凌ぐ方策を考えるはずです。そこで知恵を絞り、イノベーションが生まれ、結果として労働生産性がアップして、強い体質に生まれ変わる。そういった変化を促されているのです。


24時間戦えますか?の昭和的働き方は次代には通用しません。行政機関はもとより、求職者、在籍社員、取引業者から三下り半を突き付けられないように、働き方改革は労働問題ではなく、生き残りをかけた経営問題と認識して真剣に取り組む必要がありそうです。

少なくとも西村事務所ではこの問題に真剣に取り組む企業を応援し続けます。

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19年05月08日 | Category: General
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外国人雇用の基礎知識(2019.3月号)


本年4月より、入国管理法が改正され、高度専門職以外の現場に、外国人労働者が入って来ます。政府は移民政策とは異なるとの説明をしていますが、実質的に単純労働の受け入れを開放し、家族帯同で永住への道を開くということは、日本という国のかたちを変容させる、大転換点になるかもしれません。この紙面ではこの是非に触れるのではなく、現実的に身近になった外国人雇用についてのルールを整理して、ご紹介したいと思います。

1.日本で働くことのできる外国人

(1)特定された業務範囲内で就労が認められる主な在留資格

「高度専門職」、「経営・管理」、「法律・会計業務」、「医療」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」、「技能実習」など24種類。中小企業の現場で多いのは、「技術・人文知識・国際業務」と「技能実習」です。

(2)就労制限のない在留資格

「特定活動」という資格のうち、いわゆるワーキングホリデーで入国した外国人は、原則1年間の間、自由に就労することが可能です。

(3)活動制限がない在留資格

「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」

この4つの資格は、日本人と同じように働いてもらうことができます。

2.働くことのできない外国人

「文化活動」、「短期滞在」、「研修」、「家族滞在」、「留学」

但しこれらの資格でも資格外活動許可を受けていれば、単純労働への就労も可能です。その場合でも、1週28時間以内(留学生の教育機関の長期休業期間にあっては1日8時間以内)以内が限度となります。
飲食などサービス業では、留学生は非常に貴重な戦力になっています。

留学生に関しては、「大阪外国人雇用サービスセンター」において、相談業務を行っています。

3.採用する前に確認すること

必ず「残留カード」原本を見せてもらい、その中で本人であるかどうかはもとより、

(1)在留資格(前記1にある、働くことのできる資格であるか)の確認
(2)在留期間(日本に滞在可能な期間かどうか)の確認

が最低限必要です。
さらに「留学」、「文化活動」、「短期滞在」、「研修」、「家族滞在」の場合は、裏面の「資格外活動許可欄」に許可を得ているか、または「就労資格証明書」の交付を受けているかを確認する必要があります。


4.不法就労と、罰則

不法就労とは

① パスポートなどを持たずに不法に入国して就労している場合
② 就労を認められない在留資格の外国人が就労した場合
③ 自分の所持している資格では就労を認められない職業についた場合
④ 定められた在留期間を超えて在留し就労している場合
⑤ 留学生などが資格外活動の許可を受けずに就労している場合

というパターンに分けられます。

不法就労外国人を雇用した場合、雇用主に対して「不法就労助長罪」が定められており、これは外国人に不法就労をさせたり、不法就労の斡旋などを行った場合には、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という大変規模しいものです。また就労した外国人は強制退去となります。

しかし「不法就労助長罪」は、その外国人が働くと「不法就労になると知りながら」上記の行為をした場合を処罰の対象としていますので、不法就労外国人であることを知らないで雇用した場合には、処罰の対象とはなりません。ただし、不法就労であるとはっきり認識していなくても、状況からみてその可能性があるにもかかわらず、確認をせずにあえて雇用するような場合には処罰されることになります。「知らなかった」では通りません。

ですから前記3の採用前の確認が非常に重要です。


5.外国人と社会保険その他労働関係法令との関係

日本国内で就労する労働者は、国籍を問わず原則として日本人と同じように労働関係法令が適用されます。具体的には、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法など、外国人についても日本人と同様に適用されます。労働基準法では、労働条件面で国籍による差別を禁止しており、外国人であることを理由に低賃金にする等の差別は許されません。

また、労災、雇用保険、健康保険、厚生年金といった社会保険も、日本人と同様に適用されます。外国人の中には、保険料の自己負担分を嫌って加入をしたがらないというケースもありますが、適用対象となる雇用の場合には本人の意思に関わらず加入しなければなりません。

なお、社会保障協定の発効されている国(韓国、アメリカ、フィリピンなど)の外国人は、保険料の二重負担を防止するために加入すべき制度を2国間で調整しているため、5年を超えない見込みで就労する場合には、引き続き相手国の社会保障制度のみに加入し、日本の社会保障制度への加入が免除される等といった制度があります。

また、社会保障協定の発効されていない国の外国人の場合、年金を全く受けずに本国に帰ることになる場合には、保険料の掛け捨てを防止するため「脱退一時金」制度があります。帰国後に、支払った厚生年金保険料の一部を請求することができます。

6.技能実習制度とは

技能実習制度は、日本で培われた技能、技術又は知識について、開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度です。一定の指定業種の範囲内で、単純労働への受け入れが可能です。日本での受け入れ可能期間は原則3年(最長5年間)で、技能実習生は入国直後2か月間の講習期間以外は、雇用関係の下、日本人と同じ労働関係法令が適用されます。
通常は、協同組合など監理団体を通じて受け入れることになり、最近ではベトナム人の受け入れが非常に多くなっています。

技能実習に関しては、公益社団法人 国際研修協力機構(JITCO)が相談に応じています。


7.改正入国管理法とは(2019年4月)


平成31年4月より新たな在留資格「特定技能」を2段階で設けるというもので、「特定技能1号」は、「特定の分野で相当程度の知識または経験を要する技能」を持つ外国人に与えられるというもので、最長5年間の技能実習を修了するか、技能と日本語能力試験に合格することとされています。
在留期間は最長で通算5年間、家族の帯同は認められません。受け入れは、人手不足が深刻化している14業種(建設業、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、介護、ビルクリーニング、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業)での単純労働を含めた就労を認めるものです。

「特定技能2号」は、1号を上回る熟練した技能を持つと認められた外国人に与えられ、在留期間に上限がなく、家族の帯同も認められるというものです。

治安に対する不安、生活習慣や考え方・文化や宗教の違いにより、要らぬ紛争や軋轢が心配されています。外国人が日本人の雇用を奪うという指摘もあります。日本人の待遇が下方向へ誘導されかねないとの懸念も出ています。

移民政策を受け入れてきた欧米諸外国では、移民問題が国を二分するような大論争テーマとなり、海外には移民を排斥する政治が受ける素地があります。


いずれにしても、今までの国のかたちが大きく変わるターニングポイントとなるかもしれません。外国人にも日本の風習や文化に柔軟に対応してもらうと共に、我々も彼らと共生することが欠かせないでしょう。これからの労務管理は、ますます複雑になって行くのは確実のようです。

小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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19年05月08日 | Category: General
Posted by: nishimura
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