迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その2(2019.9月号)


前回において、「均等待遇」と「均衡待遇」という概念があることを触れました。

これは一般の方々には非常に分かりにくい概念ですが、ごくごく簡単に申しますと、

●均等待遇とは・・・・「ある要素」が正社員とパート・有期雇用労働者で同じなら、待遇も同じにしなければならない(パート・有期雇用労働者法第9条)

◎均衡待遇とは・・・・「ある要素」に違いがある場合、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇に相違があっても良いが、不合理な差異であってはいけない(パート・有期雇用労働者法第8条)


という風に解説しました。そして「ある要素」が今後の対策を立案する上において非常に重要なものになるとも言いましたが、今回はこのことについてお話しします。



この「ある要素」とは以下の3つのことをいいます。


 A 職務の内容
 B 職務の内容・配置の変更の範囲
 C その他の事情


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※A「職務の内容」とは、単に同じ職種ということだけではなく、その業務に伴う責任や役割の程度も問われる
※B「職務の内容・配置の変更の範囲」とは、転勤や昇進の有無、職種(責任や役割を含む)の変更の有無があるかないかということ(将来的な見込みでも可)
※C「その他の事情」とは、主に以下のものをいう。
  1 他の待遇とのバランス
  2 定年後の再雇用    
  3 労使協議の在り方  
  4 正社員登用の有無  
  5 成果・能力・経験・役割の違い
  6 合理的な慣行
  7 残業の有無
  8 所定労働時間の違い 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そして前記、●均等待遇(平等にすること)とは・・・でいう、「ある要素」が正社員とパート・有期雇用労働者で同じなら、待遇も同じにしなければならないとは、

上記「Aの職務の内容」と「Bの職務の内容・配置の変更の範囲」がどちらも同じであって、「Cのその他の事情」がなければ、正社員とあらゆる待遇を同じにしなければならないということです。



また前記、◎均衡待遇(違いに応じた処遇にすること)とは・・・でいう、「ある要素」に違いがある場合、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇に相違があっても良いが、不合理な差異であってはいけないとは、

上記「Aの職務の内容」と「Bの職務の内容・配置の変更の範囲」のいずれかが異なる場合、またはAB両方が異なっても「Cのその他の事情」がなければ、正社員と不合理な差を付けることは許されないということです。

ややこしい話ですが、平等にしなければならない均等と違い、均衡の方は、不合理な差がダメなのであって、差自体が否定されるのではなく、合理性は求められません。簡単に言い換えれば、合法(合理的)でなくとも、違法(不合理)でなければ良いわけで、つまりグレーはセーフということなのです。





この考えを図示すると以下の通りです。


   A職務の内容    B職務の内容・配置の変更の範囲    Cその他の事情
===============================================================
1   同じ          同じ               なし     ⇒   均等待遇(差別的取り扱い禁止)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2   同じ          異なる              ―      ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3   異なる         同じ               ―      ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4   異なる         異なる             (なし)    ⇒   均衡待遇(不合理な待遇差の禁止)

                                                              ↑ パート・有期雇用労働法の規制の対象
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  
5   同じ          異なる              あり     ⇒   待遇差は違法ではない可能性あり   ↓ パート・有期雇用労働法の規制の対象外
6   異なる         同じ               あり     ⇒   待遇差は違法ではない可能性あり
7   異なる         異なる              あり     ⇒   待遇差は違法ではない
     



上表1から4はいずれも今回のパート・有期雇用労働法の規制の対象となり、均等にしても、均衡にしても、いずれにしても何らかの持ち出しが必要となります。

つまり、非正規社員(有期、短時間の方)の待遇を引き上げて、正社員と同じ待遇にするか、近づける必要があるわけです。法の目的にも合致し、王道コースといえるでしょう。


しかしこのいわば王道コースを取り難い中小企業の場合は、まず上表の5、6、7の考え方を労務管理に反映させて運用することを具体的に検討してゆくこととなるのです。


以下次号。


小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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19年09月02日 | Category: General
Posted by: nishimura
●迫りくる同一労働、同一賃金!!その対策を考える  その1(2019.8月号)

いわゆる同一労働同一賃金を規定した、改正「パート・有期雇用労働者法」の施行が迫ってきています。大企業では来年2020年の4月から、中小企業でも再来年の2021年4月からスタートとなります。大企業と中小企業の区分は以下の通りで、資本金か労働者数のどちらかが以下の基準を下回れば中小企業となります。

             資本金         労働者数(企業単位)

小売業        5,000万円以下  または   50人以下
サービス業      5,000万円以下  または  100人以下
卸売業        1億円以下    または  100人以下
その他の業種     3億円以下    または  300人以下
(製造・建設・運輸など)  


実は全く新しい法律ができるのではなく、従来からあるパート労働法を修正して施行されるのですが、パートタイマーか有期契約労働者を雇用する企業は、規模を問わず非常に大きな影響が及ぶこととなる上に、方針の決定、検証や制度設計その他の事前準備にかなりの時間を要することになるため、しばらくの間シリーズにてこの問題を考えて行きたいと思います。


少し退屈かもしれませんが、まず法律条文の該当部分を確認しておきましょう。



■根拠法の確認

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(略して パート・有期雇用労働者法)

(不合理な待遇の禁止)

第八条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。


(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)

第九条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。


(賃金)

第十条 事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間・有期雇用労働者(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者を除く。次条第二項及び第十二条において同じ。)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案し、その賃金(通勤手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。※1)を決定するように努めるものとする。


(教育訓練)

第十一条 事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容同一短時間・有期雇用労働者(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者を除く。以下この項において同じ。)が既に当該職務に必要な能力を有している場合その他の厚生労働省令で定める場合を除き、職務内容同一短時間・有期雇用労働者に対しても、これを実施しなければならない。


2 事業主は、前項に定めるもののほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験その他の就業の実態に関する事項に応じ、当該短時間・有期雇用労働者に対して教育訓練を実施するように努めるものとする。


(福利厚生施設)

第十二条 事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるもの(※2)については、その雇用する短時間・有期雇用労働者に対しても、利用の機会を与えなければならない。

※1 通勤手当・退職手当・家族手当・住宅手当など
※2 給食施設・休憩室・更衣室のこと


上記において、特に大事なのが、第8条及び第9条となります。次回以降詳述します。



■最低押さえておくべきこと

(1)誰と誰を比較して同一労働同一賃金でなければならないのか

この法律において比較の対象となるのは、

正社員VS所定労働時間の短い労働者(1時間でも短ければ対象となる(いわゆるパートのこと)または、
正社員VS有期雇用労働者(フルタイム有期労働者を含む)です。

場合によっては無期フルタイムパートVSパート・有期雇用労働者もあり得ます。

従って「正社員と正社員」、「パートとパート」、「有期雇用労働者と有期雇用労働者」、「パートと有期雇用労働者」、「正社員と無期のフルタイムパート」の間に待遇の相違があったとしても、この法律では関係がありません。



(2)一つ一つの待遇に差別または不合理がないか検討する

日を改めて述べますが、要するに正社員の待遇とパート・有期雇用労働者の待遇を全体的にみて、ふわっと判断するのではなく、個々の待遇ごとに判断されるということです。例えば、10ある処遇のうち、9まではパート・有期雇用労働者も正社員と同じ待遇か、或いは上回っていたとしても、残りの1つの待遇が差別的と判断されれば、是正を迫られることとなるのです。



(3)賃金だけでなくあらゆる待遇が対象となる

同一労働同一賃金の俗称から、賃金だけが規制の対象であるとの勘違いを起こし易いのですが、そうではありません。賃金だけでなく、福利厚生、教育訓練、休暇、安全衛生、解雇などあらゆる待遇が対象となるものです。また賃金も月例賃金や基本給だけでなく、手当・賞与・退職金或いは福利厚生的な慶弔金や報奨金なども対象となります。



(4)均等待遇と均衡待遇という概念があること

これは一般の方々には非常に分かりにくい概念です。これも次回以降で詳述しますが、ごくごく簡単に申しますと、

均等待遇とは・・・・ある要素が正社員とパート・有期雇用労働者で同じなら、待遇も同じにしなければならない(パート・有期雇用労働者法第9条)

均衡待遇とは・・・・ある要素に違いがある場合、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇に相違があっても良いが、不合理な差異であってはいけない(パート・有期雇用労働者法第8条)


この「ある要素」が対策を立案する上において非常に重要なものになるのですが、次回以降で詳述したいと思います。



(5)使用者と労働者間の民事上の問題であり、刑事罰は課されないこと

違反に対しては行政指導の対象とはなっても、労働基準法や労働安全衛生法にあるような刑事罰は用意されておらず、労働基準監督署は管轄外となり、同じ労働局内にある雇用環境均等部の管轄となります。この問題は、対行政というよりも、会社とパート・有期雇用労働者の間でトラブル防止という民事上の問題の方が大きいのです。


(6)損害賠償の根拠となるが、補充効はないこと

パート・有期雇用労働者法第8条の均衡待遇に違反したとして司法判断されたときは、民事上の損害賠償請求の根拠とされます。但し将来に向かって契約内容の修正を直立的に迫られる、いわゆる補充的効力はないとされています。



(7)同一労働同一賃金も、働き方改革の真の目的である労働生産性の向上に関係している

この同一労働同一賃金も、働き方改革関連法の中の一部です。そしてかねてより申し上げておりますが、この真の目的は生産性革命を起こすことであり、単なる労務問題ではなく経営課題なのです。ここを見誤っては、経営者のコミットメントが脆弱になってしまい兼ねません。繰り返し申し上げますが、生産性の高い企業を成長のエンジンとして残し、ついて行けない企業を退場させるもので、生き残りをかけた経営問題なのです。



以下次号。


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19年08月23日 | Category: General
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●2020.4月スタート 中小企業にも迫る、時間外労働の上限規制(2019.7月号)

2019年は、生産性革命を命題とする働き方改革がスタートした年となりました。中小企業では、以下のスケジュールで順次新しいルールが始まることとなり、生き残りの為にも対応が迫られることになります。

(1)年5日の有給休暇の取得を企業に義務付け(2019.4施行)
(2)労働時間の客観的把握の義務付け(2019.4施行)
(3)フレックスタイム制の拡充(2019.4施行)
(4)高度プロフェッショナル制度の創設(2019.4施行)
(5)産業医・産業保健機能の強化(2019.4施行)
(6)勤務間インターバル制度の促進(2019.4施行 努力義務)
(7)残業時間の上限規制(2020.4施行)
(8)不合理な待遇差の解消(2021.4施行)
(9)月60時間超の残業の割増賃金率引上げ(2023.4施行)


独断ですが上記のうち、(3)のフレックスタイム制の拡充、(4)の高度プロフェッショナル制度の創設、(5)の産業医・産業保健機能の強化は中小企業ではほとんど関係がないため、それ以外の項目で対応が必要ということとなり、(1)の年5日の有給休暇に関しては、すでにこのメルマガでも触れ、対応中の企業も多いかことかと思います。


今後、順次その他のテーマにつき対応策を検討して参りたいと思いますが、今回取り上げるのは(7)の残業時間の上限規制です。
簡単に言うと、今まで青天井で残業をさせることが出来ましたが、来年の4月からは残業に罰則付きで上限が設けられるということです。

1.まずこれまでのルールを確認しましょう。


そもそも労働基準法では、原則として時間外労働を罰則付きで禁止しています。

(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

罰則:6か月以下の懲役または30万円以下の罰金


よく、今回の改正が罰則付きとして説明されますが、もともと残業は禁止されており、これに反すると罰則があるのです。


但しこの罰則が、いわゆる36協定を締結することで、刑事免責される効果があります。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条(中略)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。


そしてこの36協定に記載できる残業時間が、今までは無制限に記載することが可能だったわけです(ただ限度基準が示されていたので、この基準の範囲内で記載するよう行政指導は行われていた)。


2.来年4月以降はどうなるのか

a.残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間(1年変形制の場合は月42時間、年320時間)
 月45時間は、おおよそ1日当たり2時間程度の残業に相当

b.臨時的な特別の事情があって年6回まで特別条項を使う場合でも、
・年720時間以内
・複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
・月100時間未満(休日労働を含む)  を超えることは不可。
 ※月80時間は、おおよそ1日当たり4時間程度の残業に相当


ただこの理屈は非常に複雑で、これを個人ごとに管理するには、よっぽど高価な勤怠管理システムを導入しない限り、現実的には不可能です。従って、中小企業で残業させることができるリミットは、以下のように考えるべきです。


1ヶ月42時間が6回まで(1日2時間以内) 及び   1ヶ月78時間が6回まで(1日4時間以内)  

(42時間×6回)+(78時間×6回)=年間上限720時間

つまり年6回は毎月42時間がリミット、あとの年6回は毎月78時間がリミットとして管理します。

ところで、当面はこの数字を意識して管理するとしても、2023年4月からは60時間超の残業代の割増率が25%から倍の50%に跳ね上がります。

しかも現在、賃金の請求時効を2年から5年に延ばすことが検討されています。そうすると、60時間超の残業代コストはかなり上昇し、不払い額がある場合は相当膨らむリスクも高くなります。

そのように考えると、前記の78時間は60時間と読み替えて(年間では612時間)、今から管理して行った方が良いと考えています。

月42時間を6回まで、月60時間を6回まで。

これからの生き残りをかけた時間管理です。


(注)自動車運転の業務、医師、建設事業は5年間の猶予措置があります。

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19年08月23日 | Category: General
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new.jpg●まだまだ改善余地がある  ハローワーク求人 (2019.6月号)


空前の人手不足です。このメルマガでも再々、効果的な求人方法に関して取り上げてきましたが、今回はハローワーク求人を取り上げます。古くからある無料で利用できる全国最大の求人ネットワークでありながら、まだまだ利用にあたり改善の余地があるからです。
これから申し上げることは一つ一つは、小さな秘訣かもしれませんが、できることは全部やる!!、それくらいでないとこの求人難は勝ち残れません。
以下、改善ポイントを申し上げます。



1.文字数を最大限に活用する


ハローワークの求人申込書や事業所登録シートには、マス目がある項目とない項目があります。マス目がある項目は、そのマスに沿って、文字を埋めて行くことになります。「事業内容」や「職種」がその典型欄で、「事業内容」は90文字、「職種」は28文字分のマスがあります。

これとは別にフリーで記載できるマス目のない項目があり、その典型欄は「仕事の内容」、「求人条件にかかる特記事項」、「備考」欄です。実はここで差を付けるべきであるのに、余り有効活用されていません。

これらの欄、実は意外に書き込むことができるのです。

「仕事の内容」(297文字)
「求人条件にかかる特記事項」(216文字)
「備考」(208文字)


マス目がなく、手書きでフリー記載となる上に記載欄が小さいため、どうしても文字数を多く余らせてしまっている求人票が多いのです。これは勿体ない。
リクナビにせよ、マイナビにせよ、民間の求人広告では掲載価格と文字数(枠の大きさ)は相関関係にあるため、文字数を無駄にすることは少ないのですが、ハローワークの求人票は構造上、空白の無駄が生じやすくなっています。

何を書き込んで差別化するかは、過去に触れており、ここでのテーマではないので省略しますが、基本的には情報量が多い方が有利です。きちんと最後まで書き込んで、掲示しましょう。




2.「職種」(28文字)、「仕事の内容」(297文字)が最重要。特に最初の行に注力する

今はネット(スマホ)の時代。ハローワークの求人といっても、ハローワークインターネットサービスを始め、求職者はさまざまな民間のまとめサイトに引っ掛けて、検索しているものと思われます。


ハローワークインターネットサービスの場合、仕事内容や就業場所など様々な検索から「求人情報一覧表示」を表示させ、そこから気になった情報をさらにクリックして詳細情報を見る形式になっています。

「求人情報一覧表示」には、「職種」「雇用形態/賃金(税込)」「就業時間/休日/週休二日」「産業」「沿線/就業場所」のみが、一覧として表示され、企業の特徴をアピールしたい「仕事の内容」、「求人条件にかかる特記事項」、「備考」欄はこの段階では表示されません。
一覧からさらに個別にクリックしてもらって表示されるのです。


そうすると最も注力すべき項目は「職種」です。実際この項目が一覧表の中で最も見られているというデータも有ります。先ほど28文字まで記載可能と申しましたが、この文字数すべてを一覧の段階で表示させることができます。つまりここで差別化を図らないと、詳細まで見てもらうことすらできません。
この28文字を使い切るつもりで、表現を工夫する必要があります。

またハローワーク窓口端末で出る「求人情報一覧表」の「仕事の内容」は297文字中、最初の72文字しか表示されません。ハローワークインターネットサービスだけでなく、民間のまとめサイトで表示される「職種」や「仕事の内容」は、その文字数分が全部表示されず、一部であるものがあります。従って、「職種」であれば最初の14文字、「仕事の内容」であれば出始めの72文字程度で最低限、伝えたいことを入れ、詳細をその後に入れる方が検索では優位と言えます。




3.画像情報

今の時代、文字情報だけでなく画像情報を入れるのは必須と考えるべきでしょう。ハローワークの求人票にも、画像掲載が可能です。社屋、職場風景、先輩社員、レクリエーションの様子など、多角的に画像で伝えることが可能なのです。
残念ながら、現在のシステムではハローワークインターネットサービスでは見られず、職安の窓口端末でしか開示されません。また画像情報の取り扱いもハローワークごとに異なるので、事前確認が必要です。

できればハローワークの求人票から自社のホームページへリンクさせ、もっと潤沢な情報を見える化しておくべきです。横道にそれますが、今の時代、自社のホームページに採用専用のページは必須条件です。ハローワークの求人票では表現できない事項も含め、かなりの工夫が自社のHPでは可能です。興味が沸いたらすぐに応募できるように、応募フォームも必ず付加しておきます。




4.避けたいNGワード

「求人条件にかかる特記事項」、「備考」欄を有効に活用すべきであることを先述しましたが、ここを有効に活用せず、文字数を余らせると、ハローワークの職員が勝手に以下のような文言を書き込むことがあります。

「応募にはハローワークの紹介状が必要です」


これはよく書き込まれる文言です。

これに対応できる求職者とは、いったいどんな人でしょうか?おそらく現在失業中で、直接窓口端末をたたいて検索をしている応募者でしょう。しかし今はネット検索の時代。在職中で、スマホで検索している求職者は、この文言で諦めないでしょうか?
確実な実証はありませんが、この文言で応募が減ることはあっても、増える見込みは皆無でしょう。むしろ邪魔です。


「ハローワークからのおしらせ」

全く不要です。まれに「求人票は契約内容ではないので、応募条件は契約書で確認して欲しい」趣旨の文言がこのお知らせとして挿入されることもありますが、大きなお世話です。あたかも相違があることを予測させるような余計な文言です




5.地図を馬鹿にしない

ハローワークの求人票で唯一、手書きのまま掲示される個所があります。それは地図です。勿論、印刷されたものを貼り付けても構いませんが、手書きで出す場合は注意を要します。
皆さんは手書きで書かれた履歴書で応募を受け付けることがあるかと思いますが、その文字が汚い、雑、見にくいとしたら、それだけで採用意欲が減退しませんか?
応募者もそのような地図が記載されていれば、その企業へのイメージが下がることとなりかねません。たかが地図、侮るべからずです。



6.週末登録のすすめ

原則、新規求人は上位表示され、ネットでも検索され易いのですが、日々、新規求人が登録されるため、どんどん順位が後退して行くこととなります。但し、運よく金曜日に登録された求人票は、月曜日に新規求人が登録されるまでの土・日・月の間、上位表示されることとなり、訴求効果が上がります。

ただ大阪などの都市部では求人数が多いため、こちらの思惑通りに金曜日に持ち込んでもその日に登録されないことがありますので、確認が必要です。



7.リクエスト求人、企業説明会の利用


求職者情報一覧の中から、気になる求職者へ直接アプローチできるシステムです。またハローワークでは無料の企業面接会ブースを設置しているところもあります。いずれも所轄のハローワークでご確認ください。



8.あながち馬鹿にできないハローワーク職員との人脈


ネットの時代になったとはいえ、馬鹿にできないのが対面による人脈の構築です。誰と構築するかといえば、それはハローワークの紹介部門の職員です。顔なじみになり、人間関係を構築しておくと、優先的に紹介を回してくれることがあります。
定期的に足を運び、関係を構築しておくことは決して無駄にはなりません。



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19年05月30日 | Category: General
Posted by: nishimura
人手不足の採用難で、判断ハードルが下がり気味・・・

~採用が厳しくとも、妥協不可の3点セットを忘れないようにしよう(2019.5月号)

平成の世が終焉を迎えた今、バブル景気で沸騰していた平成元年を上回る人手不足状態が続いています。2018年の年間での有効求人倍率は、バブル景気最高潮の平成2年を超えています(2019年2月現在1.63倍)。

また失業率も完全雇用に近い2%台という低水準で推移しています(2019.2月現在2.3%。3%未満は完全雇用状態とされている)。


特定の業界においては人材募集が極めて厳しい状況下にあり、求人を打っても応募すらないことも多いでしょう。

そういったこともあって、ややもすれば最近、採用のハードルが下がり気味になっているのが少々気がかりです。応募がなく、求人を急いでいる状況下では、焦りから、どうしても目が曇りがちになります。


いくら厳しいからといっても、最低、以下の3つの要素については、事前にきちんと確認しておくようにしましょう。いわば妥協不可の3点セットです。

1.健康状態
2.退職事由
3.出産・育児・介護・看護の有無

以下順に解説します。

1.健康状態

何よりも最優先で確認すべき事項です。労働契約の本旨は非常にシンプルで、

使用者の義務は賃金を支払うこと、
労働者の義務は労務を提供することです。


この等価関係で成り立つ契約です。そして使用者の義務である賃金の支払いは、遅らせたりカットしたりすることはできません。これは契約論以前に労働者を保護するためにある労基法弟24条違反になるからです。

一方、労働者から提供される労働力ですが、これも本来、不完全なものであってはいけません。まずは健康な状態で労務を提供する義務があります。これを規律する実定法は存在しませんが、契約の解釈上、または付随義務として当然の帰結といえます。


つまり労働力とは、能力や技術や知識や経験を期待する前に、完全な労働力を提供する必要があり、これはすなわち健康体で労働に従事する意を含みます。健康な状態で働くことは当たり前ですよね。


しかし、採用時において健康状態を労働者の方から、開示申告する義務まではありません。個人的には信義則上、労務に支障が出る状況があれば、事前に申告すべきとは思うのですが、申告しなかったからと言って、責めを負うものではないのです。この情報は、使用者の方から積極的に取りに行かないといけないのです。


例えば・・
・長時間同じ姿勢を繰り返す業務や重量物を扱う業務なら、腰痛は大丈夫か?
・自動車運転や、危険物を扱う業務では、パニックや意識障害を起こすような持病はないか?
・業務遂行に支障が出る薬物投与は受けていないか?


特に最近では精神疾患で困惑することが多発しており、健康診断結果のみでは分からないことが多くなっているのです(先の例もそうです)。

但し健康情報は非常にセンシティブな情報であり、無原則に行えるものではなく、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱い指針」(厚生労働省 30.9.7公示第1号)において、取得や管理に関するガイドラインが示されています。

この解説はさておき、ここで私が申し上げたいのは、民間企業においては採用活動の自由が保障されており、そのための合理的な範囲内での情報収集は認められており、不完全な労働をあえて受領しなければならない義務まではない、ということなのです(但し障がい者は傷病者と違い、一定規模の企業には法定雇用率が定められている)。


まずは健康な状態で労働が提供できるのかどうかを確認しましょう。


2.退職事由


実際に私のクライアントであった事例をご紹介します。

労働者 甲野太良(仮称)。ある業界で転職を繰り返しており、職務経歴書からは相当の技術が想像される方がでした。場合によっては即、責任者を任せられるような経歴です。即戦力が欲しいA社としては、期待をこめて採用しました。ところがこの人物、採用してみると極めて素行が不良で、問題発言や行動を繰り返す始末。たまりかねて解雇を告げると、待ってました、とばかりに労基署やあっせん機関への申し立て、訴訟と手際よくA社を攻撃してきました。後で分かったことですが、この人物、今までから行政機関の窓口でも度が過ぎた申告を繰り返す人物として有名な、いわば常習者だったのです。


もし、甲野太郎の退職事由が分かっていれば、果たして採用していたでしょうか?


他にもクライアントさんから、「彼(彼女)は前の会社でも、同じことをやってきてたようだ」とのお話を伺うことがよくあります。
 
先述の通り、企業には営業活動の自由があり、採用の自由もその中に含まれます。同様の行為を繰り返す蓋然性が高いと判断したならば、それを採用しない自由もあるのです。

一応申しておきますが、過去に問題行動があったとしてもそれはあくまでも過去の事案であり、今後将来に向かって真面目に"更正?"してくれる可能性もあり、一概に排除することに異論がある方もおられるかもしれません。しかし、採用後に課せられる使用者の労働法上の様々な義務の重さや経営環境の厳しさを比較考量するとき、そういった方を積極的に採用しなければならない理由はないはずです。

やはり退職事由も重大な関心をもって面接時に確認すべき事項と考えています。

3.出産・育児・介護・看護の有無


これは採用後、すぐに長期間にわたって職場を離脱する可能性があるかを探るものです。出産・育児・介護・看護に関しては、育児介護休業法ほか関連法により、労働者の権利として認められ、保護されているものであり、世の中の流れもこういったことに対して寛容に受容していかなければならないことは理解できます。

しかしここで私が想定しているのは、日本の大部分を占める中小企業、とりわけ小規模企業です。中小企業庁が発表している中小企業白書2017年版によると、企業規模と従業員数の関係は以下の通りとなっています。


大企業の労働者    0.3%
中規模企業の労働者  14.6%
小規模事業者     85.1% ※小規模事業者とは、製造業で20人以下、卸小売・サービス業で5人以下の規模を言う。

つまり世の中の99%以上が中小企業であり、20人以下で経営する事業所が85%もあるのです。


出産・育児・介護・看護に優しい社会の理念は充分に理解できますが、実際問題として小規模企業において長期離脱者が出ると、かえって周りの労働者の負担が増大し、業務に著しい支障が出かねない現実を無視できないのです。長年企業に貢献している社員なら何とか継続してもらえるような工夫を施す余地はありますが、入社して直ぐに離脱するなら、他の人を優先的に採用する選択肢があったはずです。

ここまで申し上げたことに関し、いちいち面接時に口頭にてお聞きするのはし難い事柄ですし、聞き漏れも生じやすいことから、私共ではシートを使って自己申告してもらう方式をご提案しています。面接時に応募者本人にアンケートのような形式で記入してもらうものですが、強制にならないように留意して説明します。

例えば、

「私共では面接にお越しいただいた方全員に、この申告書にご記入いただくようお願いいたしております。これは採用後に何らかの配慮事項があるのかを事前に確認するもので、あなたの健康状態や退職事由などを尋ねているものです。内容にセンシティブな事項も含まれていることから、ご記入は任意にお任せしております。もし何らかの事情でお書きいただき難いようでしたら、空欄でも結構です。宜しければご協力ください」

このようにご説明すると、ほとんどの方は記入してくれます。記載内容を採否の判定にどう活かすかは企業の判断です。また万が一書いてくれなかった方をどう判断するかも企業の自由です(私共ではこのシートもご提供しています)。


求人情勢が厳しいと、どうしてもハードルを下げざるを得ません。しかしこの3点セットの確認は必ず行っておくことが、その後のリスクやトラブルを回避する最低限の予防策だと考えています。またリスク回避のための採用判定方法はは他にもありますが、ここでは最低限のことを記しており、かつリスク回避が目的であり、有能人材の判定は考慮から除外していることを念のため、付言しておきます。

小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
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19年05月08日 | Category: General
Posted by: nishimura
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