16年12月08日
いよいよ 対応が迫らせる無期転換 ~有期社員を雇用している企業へ~
●いよいよ 対応が迫らせる無期転換 ~有期社員を雇用している企業へ~
(H28.12月号)
有期社員の無期転換権について、対応を検討しなければならない時期になっています。無期転換って?一体それ、何???
有期社員がいるにもかかわらず、このような認識の会社は要注意です。簡単におさらいをします。
1.そもそも無期転換とは
平成25年4月に労働契約法が改正され、有期社員の保護のために新たに設けられた制度です。ごく簡単に言いますと、5年を超える有期社員から、「有期は嫌です、私を無期契約にしてください!」というように、無期へ転換を希望する申し出があった場合、会社はそれを拒否できず、有期契約から無期契約へ変更しなければならないというものです。
2.5年を超えるとは
この5年とは、平成25年4月1日以降に締結された契約からカウントします。それ以前の期間はこの仕組みの中では通算しません。つまり最短で平成30年4月以降に無期転換希望者が発生することとなります。但し、この間に直前の契約期間の半分以上の空白期間がある場合は、通算されません。例えば1年契約ですと6ヶ月、3ヶ月契約ですと2ヶ月以上の空白期間(クーリング期間)がある場合です。
3.無期転換後の労働条件は
有期が無期に変わったからといって、パートが正社員になるというものではありません。あくまでも期間が無くなるだけであり、原則、賃金や労働時間などその他の労働条件はそのままです。
■1年契約時の無期転換のイメージ■
1年 1年 1年 1年 1年 1年 無期契約へ
――→ ――→ ――→ ――→ ――→ ――→ ――――――→
1 2 3 4 5 ↑ 7年目以降
申 込
4.実務上、対応を迫られること
大雑把な仕組みは上記の通りですが、ここからは、実務上留意しなければならない事項を解説いたします。
(1)1年契約の場合は、次の更新時にはっきりさせなければならない
25年4月以降に1年契約で更新している場合、次の更新時が「5年を超えない」契約の最終更新時期となります。つまり5年以内で収まる最後であり、その次の更新では既に5年を超えてしまうため、「無期転換」が発生する可能性があるのです。
もし、企業の対応方法として有期社員で使い続けたいというのであれば、来年29年中の更新時に、「本契約をもって最終とする」、または「通算5年を超えて更新しない」という契約を交わしておく必要が生じます。無期転換が最短で発生するのは30年4月以降ですが、このように考えると、意外に余り時間はないのです。
(2)仮に無期転換を許容する場合に、転換後の労働条件はどうなるか
先述3の通り、原則は無期転換後の労働条件は、それ以前と変わりません。しかし検討しなければならない問題があります。
A 無期転換者の就業規則はどうなるのか
有期契約であることを前提に就業規則を適用している場合は注意を要します。例えば、「この規則は有期契約者に適用する」とか、正社員の定義が「無期で雇用する社員とする」のような文言となっている場合です。前者の場合ですと、有期で無くなる無期転換者は一体どの規程の適用を受けるのかが不明です。後者の場合では、無期転換者が正社員として処遇される可能性がでて来てしまいます。そうすると退職金が無期転換者にも適用になるなど、影響が広がります。
B 定年は適用されるのか
今まで有期社員であったときは、定年を意識する必要はありませんでした。しかし無期社員になっても正社員になるわけではありませんから、そのまま正社員の定年制が適用されません。そうすると無期社員にも新たに定年制を設ける必要が生じる場合があります。
(3) 定年退職者も無期転換権があることになる
無期転換権は定年退職して継続雇用されている社員にも適用があります。つまり、一旦定年退職で有期社員になっている方も、5年を超えれば無期転換があり得るのです。しかも高齢者雇用安定法により、現在は原則65歳まで継続される仕組みとなっいます。65歳できちっと雇止めした場合は別ですが、65歳を超えて継続すると5年超となり、無期に戻る可能性があるのです。
但し、昨年4月より定年退職者に限り、無期転換権を発生させないことができる有期契約特別措置法ができており、これにより認定を受けた企業は除外されます。
(4) 有期であったことで優遇されていた条件をどう考えるか
有期契約であることから、特別に優遇されている条件(慣行)がある場合は、それをどうするかを検討する必要があります。例えば、有期社員は地域限定採用とか、職務を限定しているような場合です。こういった場合に、無期になることで、他の無期社員と同様に配転に応じてもらえるのか、といったようなことです。
時間が迫っています。有期社員を雇用する企業は、早い目に対応を検討しましょう。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
(H28.12月号)
有期社員の無期転換権について、対応を検討しなければならない時期になっています。無期転換って?一体それ、何???
有期社員がいるにもかかわらず、このような認識の会社は要注意です。簡単におさらいをします。
1.そもそも無期転換とは
平成25年4月に労働契約法が改正され、有期社員の保護のために新たに設けられた制度です。ごく簡単に言いますと、5年を超える有期社員から、「有期は嫌です、私を無期契約にしてください!」というように、無期へ転換を希望する申し出があった場合、会社はそれを拒否できず、有期契約から無期契約へ変更しなければならないというものです。
2.5年を超えるとは
この5年とは、平成25年4月1日以降に締結された契約からカウントします。それ以前の期間はこの仕組みの中では通算しません。つまり最短で平成30年4月以降に無期転換希望者が発生することとなります。但し、この間に直前の契約期間の半分以上の空白期間がある場合は、通算されません。例えば1年契約ですと6ヶ月、3ヶ月契約ですと2ヶ月以上の空白期間(クーリング期間)がある場合です。
3.無期転換後の労働条件は
有期が無期に変わったからといって、パートが正社員になるというものではありません。あくまでも期間が無くなるだけであり、原則、賃金や労働時間などその他の労働条件はそのままです。
■1年契約時の無期転換のイメージ■
1年 1年 1年 1年 1年 1年 無期契約へ
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1 2 3 4 5 ↑ 7年目以降
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4.実務上、対応を迫られること
大雑把な仕組みは上記の通りですが、ここからは、実務上留意しなければならない事項を解説いたします。
(1)1年契約の場合は、次の更新時にはっきりさせなければならない
25年4月以降に1年契約で更新している場合、次の更新時が「5年を超えない」契約の最終更新時期となります。つまり5年以内で収まる最後であり、その次の更新では既に5年を超えてしまうため、「無期転換」が発生する可能性があるのです。
もし、企業の対応方法として有期社員で使い続けたいというのであれば、来年29年中の更新時に、「本契約をもって最終とする」、または「通算5年を超えて更新しない」という契約を交わしておく必要が生じます。無期転換が最短で発生するのは30年4月以降ですが、このように考えると、意外に余り時間はないのです。
(2)仮に無期転換を許容する場合に、転換後の労働条件はどうなるか
先述3の通り、原則は無期転換後の労働条件は、それ以前と変わりません。しかし検討しなければならない問題があります。
A 無期転換者の就業規則はどうなるのか
有期契約であることを前提に就業規則を適用している場合は注意を要します。例えば、「この規則は有期契約者に適用する」とか、正社員の定義が「無期で雇用する社員とする」のような文言となっている場合です。前者の場合ですと、有期で無くなる無期転換者は一体どの規程の適用を受けるのかが不明です。後者の場合では、無期転換者が正社員として処遇される可能性がでて来てしまいます。そうすると退職金が無期転換者にも適用になるなど、影響が広がります。
B 定年は適用されるのか
今まで有期社員であったときは、定年を意識する必要はありませんでした。しかし無期社員になっても正社員になるわけではありませんから、そのまま正社員の定年制が適用されません。そうすると無期社員にも新たに定年制を設ける必要が生じる場合があります。
(3) 定年退職者も無期転換権があることになる
無期転換権は定年退職して継続雇用されている社員にも適用があります。つまり、一旦定年退職で有期社員になっている方も、5年を超えれば無期転換があり得るのです。しかも高齢者雇用安定法により、現在は原則65歳まで継続される仕組みとなっいます。65歳できちっと雇止めした場合は別ですが、65歳を超えて継続すると5年超となり、無期に戻る可能性があるのです。
但し、昨年4月より定年退職者に限り、無期転換権を発生させないことができる有期契約特別措置法ができており、これにより認定を受けた企業は除外されます。
(4) 有期であったことで優遇されていた条件をどう考えるか
有期契約であることから、特別に優遇されている条件(慣行)がある場合は、それをどうするかを検討する必要があります。例えば、有期社員は地域限定採用とか、職務を限定しているような場合です。こういった場合に、無期になることで、他の無期社員と同様に配転に応じてもらえるのか、といったようなことです。
時間が迫っています。有期社員を雇用する企業は、早い目に対応を検討しましょう。
小規模企業の賃金制度、管理職研修を得意としています。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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