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リストラ(整理解雇)をしたいと、頭をよぎったときに・・・クリアすべきハードルがある。(H21.4月号の記事)

今年に入ってから金属関係の製造業を中心に雇用調整を行う企業が増えてきています。仕事がないため、従業員を休ませざるを得ず、それに対する助成金の申請も日を追って増えています。この動きは今のところ製造業が中心ですが、早く底を打たない限り、サービス業や販売業にも波及してくるでしょう。従業員を休業させて解雇を防止するのもワークシェアリングの一種であり、これによりこの危機的状況を回避できることを望みます。
 しかしまだまだ底を打たず、この状況が一時的なものではなくなってきた場合、企業は整理解雇を選択肢に考えなければならない局面が出て来るかも分かりません。そこで今回は、この整理解雇についてその留意点を述べさせていただきたいと思います。
 そもそも解雇とは何か。言うまでもなくそれは使用者からの一方的な労働契約解除の意思表示です。これについて法律は「解雇は客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)とされています。いささか分かりにくいので簡単に申しますと、「客観的に合理的理由」とは、「解雇に値する事実があって、それが第三者にも証明でき、その事実が就業規則の解雇事由となっているか」という意味です。また法後段の「社会通念上相当であると認められない場合」とは前段要件を仮に満たしたとしても、「いきなり解雇に処するには酷に過ぎないか、他に方法はないのか」といったような意味です。このような考え方は解雇権濫用法理として判例上も確立しており(日本食塩製造事件他)、解雇を不自由なものにしています。
 通常、解雇は労働者にも何らかの帰責事由があるのが普通ですが、整理解雇においては労働者に責任がないところで解雇されることから、上記の解雇権濫用法理を更に進めて、より厳しい判断基準を日本の司法は蓄積して来ました。それがいわゆる整理解雇の4要件と呼ばれるものです。その4要件とは①人員整理の必要性、②解雇回避の努力、③人選の合理性、④労使の誠実な協議、のことでこの4つのハードルをすべて飛び越えないと、その整理解雇は解雇権の濫用とされているのです(最近は少し違う考え方も登場しているがここでは割愛する)。それぞれ簡単に解説を加えましょう。

①経営上の人員整理の必要性
これは企業に経営上の危機が存在する必要があります。この危機は必ずしも倒産必至の状況までは要求されず、将来の危険に対する予防的措置という場合もあります。しかしいずれにしても、人員整理をしなければならない経営上の事由を従業員だけでなく、第三者にもきちんと説明できる事情の存在は不可欠です。
②解雇回避の努力を尽くしたこと
これは解雇する前に、他の努力をしたかが問われます。その努力とは例えば、配置転換、残業削減、新規採用の停止、昇給停止、一時金削減、希望退職の募集、経営上の経費削減などですが、これらすべてを行う必要はなく、こういったことをしてきてもなお、余剰人員を解雇せざるをえないという証明が必要なのです。
③人選の合理性
通常、整理解雇は、一部の人間を指名解雇するものであるため、その指名された人選に合理的理由があるかということです。例えば、基幹社員より臨時社員をまず検討するとか、解雇しても生活への影響が少ない者とか、あるいは出勤成績が悪い者、帰属性の薄い者などその選定に納得のできる説明ができる必要があります。
④労使の誠実な協議があったか
これは整理解雇せざるをえないやむを得ない事由を、誠実に説明義務を果たしたかということです。当たり前のことといえば当たり前ですが、この協議過程も重要な判断のモノサシになります。

このように見てくると、経営が厳しいからと安易に解雇するのは法的にも高いハードルのようです。また中小企業は大手のように経営指標から判断して、従業員の顔や家族を見ずに、ばっさりやることは出来ないのではないでしょうか。また一度経験者がいなくなると、その後回復したときに、後継者を直ぐに採用するのは至難の業でしょう。
また身を軽くしたい思いでやったことが、深刻な労使紛争に発展し、かえって時間、手間、コストと精神的負担を要することもあります。やはり慎重に考えるべきでしょう。
それでも他の従業員、得意先その他のことを考えて、生き残るためにはやはり必要であるとの高度な経営判断に基づくものならば、それはれそれで尊重いたしますが・・・・。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月24日 | Category: General
Posted by: nishimura
口下手でもいい、経営者は「一言(ひとこと)」を大切にしよう!(H21.3月号の記事)

 ここ近年、労使紛争が激増しています。不幸にして労働組合に加入されたり、訴訟沙汰になったり深刻なケースに発展することも少なくありません。中にはやくざまがいの恫喝をもって、威圧的に迫ってくることすらあり、その度に「もう人を使うのが怖くなる」という心情を吐露される経営者もおられます。
 本当に人を使うのが難しい時代になりました。でも人を使わずして、経営を行ってゆくことはできません。どうしたらもう少しスムーズな労使関係が築けるようになり、100%紛争を回避することは不可能だとしても、その確率を減らすことができないものでしょうか。
 私がこの問題を考えるとき、大きな視点では①如何に不良社員の入社を水際で防ぐか、②今いる社員に不満が鬱積しない労務管理を如何に行うか、にかかっていると思うのです。それには以下3つのポイントがあると考えています。そのポイントとは、
1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)
2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)
3.おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること(特に雇い入れのルールを曖昧にしない)ということです。以下それぞれ解説します。

1.経営者も労働法に無頓着ではいられないこと(ある程度労働法を知る必要がある)について

 今の労働者は、今までのように会社にも非があるけれども、自分も足りないところがあるから文句を差し控えよう、なんて謙譲の心を示す人の割合が、相対的に少なくなっています。ある労働基準監督官と話をしていても、「今の労働者には問題がある人が多いですね。他の事は棚に上げて、労働基準法上の権利だけは主張される。諌めようとするとある労働組合からは、労働基準監督署は経営者寄りだと非難を受けている始末です」とおっしゃています。
 経営者に悪意がある場合は論外として、知らずに法違反を犯し、それを知っている労働者から指摘を受けるケースがあります。今の時代は知らなかったでは許されない不寛容な時代になっています。せめて専門書とは行かなくとも実務書レベルの労働基準法に関する書物は一度お読みいただければと思います。その上で、我々社会保険労務士とか弁護士とか専門家を傍において、使いこなしてもらえれば、相当程度の紛争は未然に回避できます。自ら勉強し身近な相談相手を作ることは是非行って欲しいものです。

2.人の感情や心理に配慮した人間関係を心がけること(場合によっては演じる役者のセンスがいる)について

 私はかねてより、労務は感情、労務は心理学と訴えてきております。これは現在働いている従業員との関係において、むしろ前述の法律よりも非常に重要な観点です。にもかかわらず、総論的に申し上げて経営者の方が苦手にしている分野ではないかと推察するのです。例えば人を褒めることの効用は誰でも聞いたことがあるはずですし、感謝する心が大事だとか、相手の話を否定せずよく聞くだとかは良好なコミュニケーションにはいいことだ!!とものの本には書いてあります。でもコーチングだとか実際やるのはちょっと難しい。だったらもっと簡単な方法はないものでしょうか。そこで思いついたのはたった一言の癖付けです。
 例えば・・・・
褒めるというのに抵抗があるなら一言         「さすがやね」「すごいわ」
ありがとうと感謝するのが気恥ずかしいなら一言  「すまん」「助かるわ」「わるいなあ」
期待を込めるのが上手く言えないなら一言     「ほな、頼むわな」
相手の人格を認めるのが苦手なら一言  (話しかけるとき)「ちょとええかな」(話を聞き終わったとき)「よし分かった」

 関西弁は非常に便利です。いかがでしょう。これくらいならすっと言えないでしょうか。すでに自然に出来る方や、これ以上のコミュニケーションを取れている方には蛇足だったかもしれませんが、もしご参考なるなら是非お試しください。その際一番良いのは心から言うことですが、せめて必死に演じる努力はしたいものです。
3つ目のポイント「おざなりにしている手続きや仕組みをきちんと整備すること」については次回以降に譲りたいと思います。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月24日 | Category: General
Posted by: nishimura
中小企業緊急雇用安定助成金(H21.2月号の記事)
従業員をしばらく休業させれば、ピンチを乗り切れる可能性がある企業へ!!

景気が本格的に悪化してきました。昨年秋までは、まだ顕著な影響はみられませんでしたが、年が明けて、急速に受注量が落ち込む企業が散見されるようになっています。そんな時、どうしても考えてしまいますのが、希望退職の募集、整理解雇などのリストラです。しかし、もし解雇を回避するために、しばらく従業員に休んでもらって賃金を減額して皆で痛みを分かち合い、交代でワークシェアすることにより乗り切れる可能性があるなら、「中小企業緊急雇用安定助成金」を活用する方策があります。この助成金は従来からある同趣旨の雇用調整助成金を昨年12月から中小企業向けに要件を大幅に緩和して、実施されているものです。

その概略は以下の通りです。
◎概要
景気変動により企業業績が悪化したために生産量が減少し、事業活動の縮小を余儀なくされた中小事業が労働者を一時的に休業させた場合に、その間に支払う休業手当の一部を助成する制度(労基法では会社都合で休業させると、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが義務となっている)

◎支給要件(1または2のいずれかを満たすこと)
1.最近3か月間の月平均生産高(売上)が前年同期に比べ減少していること(前期決算等の経常利益が赤字であることが必要)
2.同期間の生産量が5%以上減少していること(赤字であることの確認は不要)

◎支給額
休業手当に相当する額の5分の4(ただし、1名1日当たり7,730円が限度)
助成対象は雇用保険被保険者に限る

◎受給期間
原則1年以内で雇用保険被保険者数×100日までが限度

◎事前計画の届出
休業を開始する給与締め切り期間の初日までに実施計画を提出することが必要

◎その他原則的に必要なこと
1.就業規則及び賃金規程を作成していること
2.完全週休2日制でなければ変形時間労働制の協定を労基署へ届け出ていること
3.従業員をきちんと雇用保険に加入させており、労働保険料も納めていること
4.賃金台帳、出勤簿、決算書、生産高(売上高)集計票などの帳簿がきちんと整備されていること

※もちろんこれらのほかにも細かな要件があります。

なおこの助成金関連の資料のアドレスは以下の通りです。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/pdf/koyouiji.pdf
(中小企業緊急雇用安定助成金パンフレット)
http://www.worknavi.niigata-roudoukyoku.go.jp/sanjo/雇用調整助成金パンフ.pdf
(拡充前雇用調整助成金のパンフだが、大枠は同じで、具体的書き方見本など参考になる)

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年03月24日 | Category: General
Posted by: nishimura