未払い残業代請求問題の対策を考える  その2(昨年12月号のつづき)~弁護士・司法書士による、消費者金融過払金返還請求の次に来る残業代請求バブルに備える~
H23.2月号
 皆さんも電車の車内広告やTV・ラジオCMなどで何度かご覧になったことがあるはずです。「消費者金融業者から払い過ぎた金利を取り戻しませんか?」、と弁護士や司法書士が勧誘する、あの宣伝広告のことです。
 私は昨年からその動きが関西でも露出し出すと予想していましたが、まだ顕在化しませんでした。おそらく今年中にはかなりの露出をみることになるでしょう。「あなたの残業代、私が代わって請求します!」なるような広告が・・・・・・。
 そこでかつても何度か触れてきたことですが、今後数回シリーズとして、この問題に対する対応策を考えてみたいと思います。今回は昨年12月号の続き、第2回目で、今回も無駄な残業を出さないことを主眼にしています。全部を履行するのは無理ですから、企業の実情にあった対策を選択していただければと思います。


8.事業所規模10人未満の商業・接客娯楽業は1ヶ月単位の変形労働時間制を活用する。
  以下表は1ヶ月に最低必要な休日数(休日を多く取れない場合に適合)
○○○○○○  31日 30日 28日
7時間45分    6日  6日  6日
7時間30分    6日  5日  5日
7時間       4日  4日  4日
(1日所定労働時間×7日-44時間)×1ヶ月歴日数÷(1日所定労働時間×7日)

9.タイムカードを廃止する(タイムカードは白紙小切手と一緒)

タイムカードを廃止して、出勤簿管理に切り替える。タイムカードは罪の意識なしに、時間外を印字してしまうので、出勤日に各自が認印を押印する様式に改め、残業が必要な日には上司現認のもと許可制でその時間を附記させる。特に管理監督者は自己管理方式にしないと否定されやすい。

10.36協定の上限時間を厳しくする

時間外、休日労働をさせる場合は労基署へ36協定(労使協定)の届出が必要。その際、1年変形時間制を採用している会社は1か月42時間以内、年間320時間以内の制限がある。法律上これ以上はできないので、これを逆手に取って36協定を社内に貼り出し、それ以上残業が出来ないことを公知する。

11.ノー残業デーを設ける 

週に1回、ノー残業デーを会社のスローガンにして設ける。全員が強制的に定時で帰る日を作り、定時になれば電気、機械を止め、実際の残業を少なくするとともに、意識面での改革を図り、定着してくれば他の日にも広げる。

12.終業時間に弾力を持たせる

僅かな残業が恒常的に多い人は、残業手当が生活給の中に組み込まれている側面と、そういうリズムで業務を終わらせる習慣があることが多い。とりあえず定時の終業時間にこだわることなく、業務が終了した時点で、帰宅してもいいようにする。その場合であっても通常の残業代平均(例えば2時間分)は保証する。そうすると同じ業務量でも、定時までに終了させることがある。元々定時までに終わるはずの仕事をだらだらしている職場には効果的。定時までに通常業務がこなせる実績を積み上げてから見直す。


13.所定終業時刻以降は休憩時間を入れる

就業規則に所定終業時刻後に15分程度の休憩時間を設け、時間外労働はそれ以降をカウントすると共に、15分以内の超過時間はルール上労働時間とせずカットする。恒常的に長時間労働がある職場よりも、だらだらとタイムカードを終業時刻後に押印する場合に効果的と思われる。


14.時短をTQC(コンピテンシー)で改善する

いくら経営者が笛を吹いても従業員が応えてくれなければ意味がない。従業員を巻き込んで、作業効率を改善し、労働時間を短縮するにはどうすればいいか、チームを作って改善策を立案してもらい、標準化できる案が出た場合は、そのチームに報奨金を出すことで、自発的な改善を促す。昇給や賞与の評価ガイドラインとして、「コンピテンシー」(恒常的に高業績を上げる社員の行動特性、それを行えばみんなの行動の質が変わり、惹いては会社の体質強化につながるというもの)の活用を検討する。これを労働時間短縮(残業抑制)に絞って作りこみ、全社員に開示、ミーティングや朝礼等で徹底する。定時までに効率よく仕事を済ませる人がいれば、その人をモデルに作りこみ、いなければ全社員参加でノウハウを出し合う。

15.多い年間休日を削減して残業単価を下げる

変形労働時間制の年間休日数を最低必要日数で設定する。1日8時間だと105日、7時間45分だと96日、7時間30分だと87日の休日があれば、1週40時間制を達成する。こうすることで残業時間は同じでも残業単価が下がるので、支給額は削減される。休日減になる手当としては、有給休暇の計画的付与を検討する。

16.法定休日を定めない

労働基準法上は1週1日の休日(これを法定休日という)が確保されないときに、その1日の休日出勤に対して35%増の休日出勤手当が必要になる(つまり週2日以上休みがあれば、最低1日以上休みが確保される限り、35%増の手当は不要)。但し、この法定休日の設定は任意なので、日曜を就業規則で法定休日と定義すると、同一週の土曜が休みでも、日曜に出勤すれば本来25%増でいいところを、35%増で支払わなければならないことになる。

17.60時間超えより法定休日出勤(大企業の場合)

1)夜残業より所定休日出勤
22年4月より、一定の規模以上の企業は60時間を超える残業に対して50%増で支払わなければならない。従って、場合によっては法定休日出勤の35%増で対応した方が、コスト的には安くなることがありうる(60時間の残業カウントの中には法定休日時間は入れなくてよい)。

2)土曜日を法定休日
日曜日がきっちり休める場合で、残業が60時間超えになる場合は、むしろ土曜日を法定休日とそして、35%割増支払で対応する(土曜日の時間は60時間枠内に入れなくてもよい)。
文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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