試用期間の基準を明確にしよう(H20.8月号の記事)

 多くの会社で試用期間が設けられています。これを明確に定義した法令はありませんが、一般的には「採用にあたり一定の期間内におけるその者の勤務状況によって人物、性格、能力、経験等についてその者が真に正式従業員とするにふさわしいかどうかをテストする」ものとされています(労働用語辞典)。そしてそれは1ヶ月から6ヶ月程度の範囲でなされ、3ヶ月としているところがい多いようです。 またこの試用期間中は正式採用した後よりも民事上広い解雇権が認められ、労働基準法上も14日以内の場合は解雇予告も予告手当の支払いも必要ないとされています。つまり本採用前に、使用者には広い許容範囲の権利が認められているのです。
 しかし実務の現場では、この試用期間が漫然とやり過ごされていることが多いように思います。つまり本採用されるためには会社として何を重視し、それが満たされないと会社が判断したときは、本採用へ移行しないという基準が、労使共に明確になっていないことが多いのです。 これではいくら会社が試用期間と言っても、応募者はテストされている期間と認識せず、結局本採用されている状況と変わらないこととなってしまいます。そこで雇用契約書を交わすときに、きちっと試用期間の意味について説明し、次のように明示してはいかがでしょうか。これは当事務所で行ってるサンプルです。

試用期間:平成○年○月から平成○年○月○日
本採用移行するための条件:試用期間中の執務態度(特に協調性と従順性及び別紙「守るべき5か条」)を勘案して判断する。本採用するときは再度労働条件を見直す。

別紙 守るべき5か条

1.分からないことは聞く。
分からないことは多分こうだろうと勝手に推測してやるのではなく、遠慮なしに尋ねること。

2.見直し。
一度作成したもの、入力したものでも、間違いがないか必ず見直しすること。

3.メモする。
忘れるかもしれない、覚えられないかもしれないことはメモして書きとどめておくこと。

4.報告
お客さんの所で何かあったとき、特に悪いことがあったときは必ず報告すること。

5.周りの皆と協調する
小さな職場では周りとの協調的な執務態度がとても大切。和を乱す、自分勝手は厳禁。


 このようにしておくと、少なくともこういったことがテストされていることが分かり、意識付けにもなりますし、使用者としてもこれを重点的に指導してゆくこととなります。
 ただ一つ勘違いがないようにお願いしたいのは、試用期間と期間契約とは法的性格が異なります。試用期間が満了しても期間契約でないため、その期日をもって自動的に契約終了はできません。本採用へ移行しない場合は、本人との合意がない限り、改めて解雇予告するか予告手当が別途必要です。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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