「高気密・高断熱」VS「反高気密・高断熱」はもとより、「充填断熱」VS「外張り断熱」といった不毛な論争を尻目に、時代はすでに「高気密・高断熱」後の家づくりに入っています。
 断熱にこだわりを持たない伝統的な家づくりに固執する人達は気密シートで覆われた家を「ビニールハウス」とか「ペットボトル」と言って揶揄し、高気密・高断熱派は、通気性のない新建材で覆われ、すでに伝統的とは言えない結露だらけの今の日本の家を救う道はこれしかないと高気密・高断熱理論を展開してきました。外張り断熱は軸組をすっぽり外側から断熱材で覆うことで熱橋となる部分を減らし、木材の調湿性を活かせるとしてその優位性をアピールしてきましたが、冬場、室内が過乾燥になるという欠点を補えるものではありませんでしたし、これからはできるだけ石油化学建材は使わないようにしてゆこう、という時代の流れの中ではその使用を減らしてゆく、という方向に向かってゆかなければなりません。
 高気密・高断熱は結露を防止し、高断熱を可能にする確立された理論として、あたかもグローバルスタンダードのように全国に広がり始めていますが、そういう動きに対しては必ずスローフード運動のようなその土地の持つ特性を大切にしようという反動が生まれるものです。私はそのどちらも間違ってはいないだろうと思っています。私は首都圏という温暖地においてその土地に合った高気密・高断熱住宅を追求してきた者として、今は高い断熱性能を持ちながら結露する事なく透湿する壁として「透湿断熱工法」と自ら呼んでいる断熱方法を実践しています。
 これは透湿抵抗理論に基づくものですが、理論としてはまだ確立されたものではありません。しかし、断熱について第一線で研究している人達の間では、すでに「高気密・高断熱」後の家づくりのあり方として、「断熱」と「調湿」の統一理論への思索が始まっているのです。