●社員の指導のために行動日記を付けよう ~従業員を指導する立場の方へ~

従業員を指導する立場にある使用者の方へ質問です。従業員との面談や人事考課は何のために行うのでしょうか?

 私はこう考えています。人事考課とは「企業の経営の意思の伝達と、そのフィードバックの作業」であると。少し難しい言い方をしましたが、要するに「うちの会社ではこういう行動を取って欲しい」とか「こういう考え方を持って欲しい」とか「こういう結果を出して欲しい」など、企業が従業員に求めるものがあって、それをきちんと伝えることであり、また一定期間後にそれらが伝わっているかどうかを確認し、もし認識にズレや誤解があれば、それを埋め合わせてゆく作業だと思うのです。
 そして会社として承認できることと、承認できないことを明らかにし、承認によってモチベーションを喚起すると共に、その望ましい行動を強化し、また逆に承認しないことによって望ましくない行動を弱化し、違う行動へと導いて行くことだと思うのです。

 しかし理屈はそうなのですが、実務上これを行うのは結構難しい。何故なら、管理者が部下の望ましい行動や望ましくない行動をきちんと指摘できないからです。何故指摘できないかというと、それは記録がなく、記憶のみに頼っているからです。確かに記憶により、一定の印象形成はできますが、望ましい行動や考え方を具体的に承認できません。

 そこで提案したいのが、社員の指導のために行動日記を付けようということなのです。このことを具体的に申し上げる前に、何故、行動を具体化する必要があるのかについて少し触れたいと思います。
 行動分析学という心理学の学問があります。ここでの人間に対する考え方は人を性格や能力という漠然としたもので捉えるのではなく、表に出ている行動に着目し、それを制御することによって、教育指導して行こうとするものです。例えば次をご覧ください。

   承認(笑顔)なし ⇒ {会議で進んで発言する} ⇒ 承認(笑顔)あり


 仮に会議で積極的に発言しない人がいたとします。会社は積極的に発言して欲しいと思っています。その人が発言をしました。すると発言することによって管理者から承認(笑顔)という反応が返ってきました。これは{会議で進んで発言する}という望ましい行動を承認によって強化したことになるのです。
 ポイントは{ }の部分です。この中に行動が入るわけで、それが望ましい行動ならその後の返しは承認(笑顔、褒める、うなずく)になり、望ましくない行動なら指導・注意となるのです。非常に単純な理屈です。

 しかし実務上難しいのが、{ }内に入る行動を具体的に特定できないことです。これが特定できないと強化も弱化もできないのです。何故特定できないかと言えば、些細なことの連続であり、印象としては残るが具体的なことは忘れてしまうからです。だから記録を残すのです。

 以下にサンプルを掲示しました。簡単で負担にならない書式で記録を残しましょう。半年分まとめて思い出すのは不可能です。毎日帰社前に、5分間、部下の行動記録をつけましょう。そして具体的事実を提示して、いい行動は翌日にはフィードバックしましょう。

 サンプル書式
    ↓
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年10月27日 | Category: General
Posted by: nishimura
勤務態度不良または能力不足で解雇したと思ったとき 
ここ近年、労使紛争が激増しています。不幸にして労働組合に加入されたり、訴訟沙汰になったりと、深刻なケースに発展することも少なくありません。中にはやくざまがいの恫喝をもって、威圧的に迫ってくることすらあり、その度に「もう人を使うのが怖くなる」という心情を吐露される経営者もおられます。
 インターネットの影響もあり、従業員が会社の労務管理の不備を知りうる状態になり、また合同労組や弁護士などへのアクセスも飛躍的に向上したことが原因としてあります。会社にとって最悪なケースは、解雇でもめて、合同労組へ駆け込まれ、解雇無効と未払いの残業代を請求されるようなケースです。相手に非があっても、数百万円の解決金を用意しなければならないことも少なくありません。その他労基署への申告、弁護士からの内容証明等があります。裁判所に在職中であるとの仮処分が認められると、その間、就労がないにもかかわらず賃金の支払が発生し、その後和解になっても更に解決金が必要ということも有り得ます。

 昔から能力不足とか執務態度が悪いとかで従業員を解雇したいとの相談を良く受けます。法的には以下の2点を検討する必要があります。
1.労働基準法上の解雇手続きを踏んでいるか
2.民事上の解雇権の行使が濫用に当たらないかどうか

1.労働基準法では解雇の場合、30日以前の予告か、30日分の解雇予告手当の支払か、その両方の折半(10日前に予告して20日分の予告手当の支給など)を求めています。つまり労基署段階ではこの手続きを踏んでいれば、問題はありません。ちなみに予告手当は給与とは別で支払うことが望ましいですが、給与明細に入れるときは非課税になります。科目は退職金勘定になります。この手続きは解雇理由を問いません。仮に従業員に帰責事由があっても、踏まなければならない手続きになります。

2.ただ手続き上は上記の通りとしても、民事上有効かどうかは別問題です。いわゆる能力不足や勤務態度不良による解雇は予測可能性が困難です。一般論としては、企業の規模や職務内容、採用理由(特に職種限定採用か、管理職採用か)、勤務成績や態度の不良の程度(解雇をもって臨まなければ為らないほどか)、回数(繰り返し起こしているか)、改善の余地(指導すれば何とか為るか)、指導教育の程度(何度も警告、教育したか)、他の労働者との均衡(同様事案で不問にしている人はないか)など、総合的に判断されることとなります。

 後ほど解雇の効力をめぐって紛争に至った場合を想定して、こういった事由で解雇に発展する場合、いかに会社が常に指導、注意、警告を行なってきたかを書証で残しておくことが肝要です。例えば初めのうちは口頭による注意から始まり、改善しないときは指導書や勧告書なる文書で記録を残します。それでも従わない又は改善しない場合は更に踏み込んで始末書、減給、出勤停止等の段階をおった制裁処分により、解雇する前に様子をみます。そしてなおダメなときに初めて解雇できるくらいの辛抱が求められるのです。また制裁罰を課すときは、就業規則にその根拠規程がないとできません。
これらは、解雇に本人が納得せず、民事訴訟に及んだ場合の話です。

 また法律論だけでなく以下の点も、会社が内々に考慮しておくことがいいでしょう。
1.有給休暇の残日数をどうするか(交渉によっては買い上げもある)
2.雇用保険の受給資格はあるか(自己都合で1年、解雇で6ヶ月)
3.離職票は普通解雇扱いにするのか懲戒になるのか(退職合意書を取って本人の為にすぐもらえるように解雇扱いすることも)
4.退職金は考慮するのか(所謂手切れ金)
5.仮に解雇としても合意解約の形で文書が取れるのか(後々の為に安心)

 ここからは法律論ではなく感情論です。
同じ解雇でもモノは言い様、うそも方便。できるだけ本人の感情に配慮すべきです。例えば本人のことを慮るようにして、「今までの勤務状況をみているとこのままウチの会社で続けるのは難しいんじゃないか。このままでは、○○さんを会社は評価できないし、つまりこれ以上重要なポジションで仕事を任せることもなければ、給料も上がらない。査定も低くなる。恐らく同僚や後輩にも抜かれ、プライドを傷つけられることになるだろう。まだまだ今ならやり直しは効くと思う。残念ながらウチの会社では浮かばれなかったが、きっと広い世の中、○○さんがもっと輝いて自己実現できるところがあるだろう。今のうちにお互いきれいな形で分かれた方がお互いの為になるのではないか。じっくりよく考えてみてはどうか」なんて感じで、歩み寄り、合意解約に持ってゆければ、後顧の憂えなしです。条件を出せば応じる場合は、出すのも一計でしょう。
とにかくモノは言い様です。
 
 また、いくら従業員に非があっても、退職した従業員から反撃をくらい、そこで費やす不毛な時間、労力、金銭、精神的負担を考えると、後腐れなく分かれた方が賢明です。
労働関係のトラブル事案は私の経験上も公的統計上も、この手の離職をめぐって起こることが一番多いからです。しかもトラブルになっているときは、得てして法的な問題というよりも、「恨み」による、感情的なしこりによるものが多いのです。これは普段から鬱積してきた不満もありますからなかなか難しいものがありますが、それでも経営者は別れ際に一工夫欲しいものです。
 そこで私が常に別れ際に関して一つだけアドバイスしていることを申し上げます。そしてこれにより離職後、トラブルを拡大させることなく終了していることが多いのです。これからはいかなる事由であれ、従業員と別れるときはこのようにされてはいかがでしょうか。

1.握手する
離職日には必ず社長が立ち会い、別れ際に握手をしてください。それも片手ではいけません。両手です。こちらから両手を差し出して相手の手を握る感じです(選挙の時、議員が両手を差し出して有権者と握手するイメージ)。心理学的には接触効果といわれるもので、印象の向上につながります。
2.頭を下げる
 握手の際、相手の目を見るとともに、頭を下げましょう。「今迄ご苦労さんでした。ありがとう。」の一言を添えて。
3.今後の幸せを祈念して送り出しましょう。
「(ウチの会社では○○さんの力を充分活かせなかったかもしれないが)次の会社(今後の人生)では、もっともっといい人に出会って、幸せになってくれ。」という感じで、今後の人生の成功を祈る気持ちを伝えましょう。

 ただこれだけです。特に今の経済情勢では、退職勧奨や整理解雇も増えることが予想されます。相手に特に非がない場合は必ずそうして頂きたいし、また相手に問題がある場合でもそうです。社長にプライドが有るのは分かります。むしろ社長から見て問題のあるその従業員に、文句を言いたい気持ちも分からないではありませんが、そこはぐっと我慢です。これだけのことでその後の不毛なトラブルを回避できるとしたらそれでいいではありませんか?
 
 上記の感情的配慮とともに、退職願もしくは退職合意書を必ず、残すようにしてください。これもおざなりに出来ない、別れ際の重要な手続きです。最近では「退職勧奨による退職合意書」を結ぶことをお勧めしています。これは本人から見れば、雇用保険を早くもらえるメリットがあり、会社からは解雇した実績が法的に残らないメリットがあるからで、しかも事後紛争を蒸し返さないという清算条項が入った契約になっているからです。書式の雛形は弊社のHPに用意しています。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年10月13日 | Category: General
Posted by: nishimura
採用時に退職証明書を活用して離職事由を確認しよう~意外と前職で問題行動を起こした人が、円満退職として再就職している~

 かつて私はこのメルマガ上で、今や採用活動はリスクを伴うから、出来るだけ水際で採用してはいけない社員を排除する方策を何度か検討してきました。今回は「退職証明書」を活用して、問題社員の入社を防止しようとするものです。

 退職証明書とは「退職時等の証明」として労働基準法第22条にその定めがあり、その要旨は「労働者が退職の場合に在職中の契約内容などについて証明書の交付を請求したときは、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」というものです。そして使用者が労働者の請求に応じて証明義務があるのは、次の5項目となっています。
1 使用期間
2 業務の種類
3 当該業務における地位
4 賃金
5 退職(解雇)の事由

 また上記5項目は、すべて証明義務があるのではなく、5項目のうち、労働者が請求した事項のみ証明する義務があることになっており、請求しない事項は法定項目でも証明してはならないものです。当然、虚偽の証明は犯罪になります。

 ここからが本題です。今後募集面接のとき、求人広告にこの「退職証明書」を履歴書などと同様に応募書類として求めることを明記し、面接時に持参してもらうことを推奨したいと思うのです。そして求める証明事項は「退職(解雇)の事由」です。
 面接時に履歴書を見て、前職の退職事由を質問されるケースは多いと思います。が、そのとき、仮に問題行動があって離職している場合、果たしてその事実を正直に申告していただけるでしょうか?

事例1 ある業界で転職を繰り返しており、職務経歴書からは相当の技術が想像される方がいました。場合によっては即、責任者を任せられるような経歴です。即戦力が欲しいA社としては、期待をこめて採用しました。ところがこの人物、採用してみると極めて素行が不良で、問題発言や行動を繰り返す始末。たまりかねて解雇を告げると、待ってましたとばかりに労基署やあっせん機関への申し立て、訴訟と手際よくA社を攻撃してきました。後で分かったことですが、この人物、今までから行政の窓口でも度が過ぎた申告を繰り返す人物として有名な、いわば常習者だったのです。

事例2 私は裁判外紛争解決機関において、あっせん委員を勤めております。先日処理した紛争事件は、会社の金銭横領事件でした。あっせん申立人は会社であり、その使い込みをした労働者に返済を求める内容です。ギャンブルのために使い込んだらしく、断定はできないものの常習性を感じます。事件としては横領事実に争いがないため、その金額の確定や返済方法が主な争点でした。その労働者は当然解雇されていたのですが、あっせんをしている当時、大手のスポーツ用品販売ショップB社に再就職をしていました。事件とは関係がないことですが、このB社、ちょっと心配です。

 たとえば上記二つのケースで、仮にA社B社とも、前職の退職証明書を求めていたらどのようになっていたでしょうか。持参した退職証明書に記載された事実を見ればとても採用は出来ないでしょう。またそもそも円満に退職していない状況下において、前の会社に退職証明書を求めること自体ができるでしょうか。恐らく持参できないと思います。
 企業には営業活動の自由があり、採用の自由もその中に含まれます。持参できない方を、採用しない自由もあるのです。

 一応申しておきますが、勿論、問題行動があったとしてもそれは過去の事案であり、今後将来に向かって真面目に"更正?"してくれる可能性もあり、一概に排除することに異論がある方もおられるかもしれません。しかし、採用後に課せられる使用者の労働法上の義務の重さや経営環境の厳しさとを比較考量するとき、そういった方を積極的に採用しなければならない理由はないはずです。

※上記でいう退職証明書は応募者の前職会社で任意に出してもらうものですが、参考までにモデル書式を以下に掲出しておきます。
http://www.nishimura-roumu.com/cgi-bin/nishimurashakai/siteup.cgi?category=4&page=5

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
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10年09月01日 | Category: General
Posted by: nishimura
年収500万円は、今やエリートなのか?
~これでいいのか?日本の賃金・・・。まさにデフレだ!!~

 今、日本のサラリーマンはどのような給与水準で暮らしているのでしょうか。
いくつかの統計資料を使って、皆様と一緒に考えたいと思います。私の簡単なコメントは付しておりますが、多くのコメントは控えます。
年収の相場はいくらなのか、毎月賃金の相場はいくらなのか、今春の賃上げ状況はどうなのか、この夏のボーナスはどうなのか?統計情報
をご提供します。
 まさに賃金デフレだと思うのですが、経営者の皆様はこの数字を見てどのようにお考えになられますか?


■平均年収(全国) 事業所規模別 ■ (国税庁 民間給与の実態調査結果 平成20年)

従事員10 人未満  344万円(男性432万円、女性239万円) ※内、賞与は19万円(5.9%)で男性21万円(5.2%)、女性17万円(7.7%)
従事員30人未満  408万円(男性486万円、女性279万円) ※内、賞与は38万円(10.1%)で男性43万円(9.7%)、女性29万円(11.5%)
従業員100人未満 406万円(男性490万円、女性264万円)※内、賞与は50万円(14.2%)で男性61万円(14.1%)、女性33万円(14.3%)
従業員500人未満 430万円(男性520万円、女性286万円)※内、賞与は72万円(20.2%)で男性90万円(20.8%)、女性44万円(18.3%)
従業員1000人未満 473万円(男性583万円、女性300万円)※内、賞与は93万円(24.6%)で男性120万円(26%)、女性51万円(20.3%)
これ以上、略。

<概要コメント> 10人未満と10人以上で大きな階差が見られるが、10人以上500人未満までは月給水準はほとんど大差がなく、おおよそ男
性で430万円台である。規模が大きくなるとボーナスの比率が少しずつ上がっているのが分かる。500人を超えると月給と賞与を含めた年収
水準自体が上がる。


■年収分布(全国) 事業所規模別 ■ (国税庁 民間給与の実態調査結果 平成20年) 単位:%

規模/年収  100万円以下   100~200万円    200~300万円    300~400万円   400~500万円    500万円以上

10人未満  11.6(男4.3) 22.1(男13.6)  21.6(男19.9)  16.2(男20.4)  11.5(男16.2) 17.1(男25.6)
30人未満    8.1(男3.4)  14.5(男7.4)   19.0(男15.2)   21.0(男23.5)  14.6(男19.1)  22.9(男31.6)  
100人未満 6.9(男2.3)  14.4(男7.0)   18.9(男14.4)   20.3(男22.2)  15.4(男20.1)  24.0(男34.2)  
500人未満 5.8(男2.1)  13.0(男5.6)   16.1(男11.1)   19.4(男19.2)   15.9(男19.5)  29.9(男42.5)
1000人未満 7.0(男2.1)  11.6(男4.6)   12.1(男7.6)    15.4(男13.9)   15.5(男17.8)  38.4(男53.9)
これ以上 略。

<概要コメント> 100人未満の中小企業で暮らす従業員は、年収400万円未満で6割以上、500万円未満で7割以上の人たちが暮らしており、
500万円以上の稼ぎのある方は全体の2割(男性だけで見ても3割)そこそこである。約5割の人たちが、200万~500万円の間で、約4割くらい
の人たちが300万~500万円で生活している。一番多い層は300~400万円でその次が200~300万円である。


■年齢階層別の平均年収(全国) 全規模■ (国税庁 民間給与の実態調査結果 平成20年)

   19歳以下 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳  40~44歳 45~49歳  50~54歳 55~59歳 60~64歳  65~69歳

男  154万円  264万円  378万円 453万円  530万円  617万円  663万円  670万円  630万円 514万円  402万円   
女  112万円  232万円  294万円 301万円  290万円  288万円  290万円  276万円  256万円 228万円  207万円
計  134万円  248万円  343万円 398万円  447万円  494万円  511万円  506万円  479万円 405万円  327万円


<概要コメント> 平均給与を年齢層別に見ると、男性では55歳未満までは年齢とともに高くなり、50~54歳層がピークになっている。女
性では年齢による変化はあまりない。おそらく結婚退職、パート労働が多いためだと思われる。従って女性でも正規雇用なら男性レベルで
考えるべきである。60歳以上になると8割から6割くらいにダウンする。


■年齢階層別の平均給与(大阪 産業計) 10人~99人規模■ (厚生労働省 賃金構造基本統計調査 平成21年) 単位:万円
 
男女計    月額総額(男)      内所定内分(男)     年間賞与(男)     勤続年数
19歳以下   182.8(184.7)       176.4(177.4)       84.5(91.7)      1.2
20~24歳   217.0(223.5)       206.5(211.7)      244.1(231.3)      1.9
25~29歳   250.5(266.1)       236.7(250.0)      427.8(463.1)      3.7
30~34歳   293.6(314.2)       277.5(294.1)      579.1(596.6)      6.1
35~39歳   322.4(342.8)       303.6(321.6)      673.9(729.3)      8.9
40~44歳   342.7(378.6)       325.2(358.3)      747.3(830.0)      9.7
45~49歳   358.8(392.0)       343.1(373.3)      813.9(842.1)      12.2
50~54歳   352.8(381.4)       336.2(362.5)      706.5(769.0)      15.1
55~59歳   349.9(367.9)       336.5(352.4)      673.5(710.8)      17.3
60~64歳   292.4(308.6)       285.3(301.0)      497.9(515.3)      18.3
65~69歳   238.3(246.5)       234.1(241.6)      397.6(455.3)      16.3

<概要コメント> これを見る限り、大阪の中小企業で働くほとんどの人たちは、残業代を含めて40万円未満の給与しか得ていない。所定
内給与の年齢層のピークは55~59歳であるが男は45~49歳であり、ピークが若干早い。また勤続年数も20年続くことは非常にまれである。


■中小企業における2010年の賃上げ状況  大阪府下■ (大阪市信用金庫)

○賃上げ実施状況 ( )は昨年
         1.賃上げ実施    2.据え置き     3.賃下げ
<業種別>
製造業      11.2 ( 9.9)     73.5 (63.5)    15.3 (26.6)
卸売業      14.7 (11.0)     73.3 (75.9)     12.0 (13.1)
小売業      11.0 (16.4)     80.8 (74.0)     8.2 ( 9.6)
建設業      10.5 ( 5.7)     75.1 (75.4)     14.4 (18.9)
運輸業      8.0 ( 6.5)     73.3 (59.7)     18.7 (33.8)
サービス業    11.5 (10.9)     82.8 (69.8)     5.7 (19.3)

<規模別>
10 人未満     7.9 ( 6.3)     78.6 (72.5)     13.5 (21.2)
10~19 人   10.4 (11.2)     75.8 (68.2)    13.8 (20.6)
20~49 人   23.2 (16.2)     66.7 (57.3)    10.1 (26.5)
50 人以上   34.1 (28.3)      50.0 (52.1)     15.9 (19.6)
全 体      11.5 ( 9.8)     75.2 (68.6)     13.3 (21.6)

<概要コメント>今春賃上げを実施した企業は僅か11.5%。引き下げが13.3%もある。大半の企業は据え置き。


○平均賃上げ率   (  )内は賃上げを実施した企業での割合
          2010年4月      2009年4月
<業種別>
製造業      ▲0.47 (2.85)    ▲1.28 (2.80)
卸売業      ▲0.01 (3.13)    ▲0.24 (3.14)
小売業      ▲0.05 (3.19)     0.01 (3.58)
建設業      ▲0.28 (3.29)    ▲1.04 (1.61)
運輸業      ▲0.60 (2.83)    ▲1.76 (1.90)
サービス業     0.11 (3.46)    ▲0.66 (2.46)

<規模別>
10 人未満 ▲0.38 (3.25) ▲1.02 (3.01)
10~19 人 ▲0.33 (3.54) ▲0.80 (2.38)
20~49 人 0.21 (2.66) ▲1.04 (2.93)
50 人以上 ▲0.05 (2.40) ▲0.47 (2.77)
全 体 ▲0.28 (3.06) ▲0.94 (2.77)

<概要コメント>今春の前年対比での賃上げ率は、全体ではマイナス0.28%。引上げした企業の平均で3.06%。



■中小企業の夏季ボーナス支給状況  2010年 大阪府下■ (大阪市信用金庫)

○ボーナス支給企業割合の推移と企業規模別割合
           98年  99年  00年  01年  02年  03年  04年  05年  06年  07年  08年  09年  10年
「支給する」企業   93.8   76.4   70.3  72.1  62.9  64.0  65.8   68.4  68.5  68.5  65.6  56.7  51.0(%)

        1.支給する   2.支給しない (少額手当)(全くなし) 
20 人未満     46.5         53.5    (36.3) (17.2)
20~49 人     69.0         31.0    (19.3) (11.7)
50 人以上    88.9         11.1    ( 8.3) ( 2.8)
全 体      51.0 49.0 (33.0) (16.0)

<概要コメント>かつては7割以上支給していたボーナスが、今夏、支給企業は僅か51%。50人以上はほとんど支給しているが、20人未満で
は5割を切る。但し寸志程度は出していることが多い。


○ボーナス支給額 平均
<業種>
製造業    247,701 円
卸売業    270,334 円
小売業    281,311 円
建設業    258,564 円
運輸業    223,648 円
サービス業  246,055 円
全 体     253,559 円

<規模>
20 人未満    247,630円       
20~49 人   260,765円        
50 人以上   320,698円 

<概要コメント>中小企業ではボーナス平均25.3万円。企業規模が小さくなるほど支給額は低くなっている。


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もっと詳しくご覧になりたい方は、以下をご参照ください。
① http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/minkan2008/minkan.htm(国税庁 民間給与の実態調査結果 平成20年)
② http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011429(厚生労働省 賃金構造基本統計調査 平成21年)
③ http://www.osaka-shishin.co.jp/houjin/keiei/pdf/2010/2010-07-01.pdf(大阪市信用金庫 中小企業における2010年の賃上げ状況、
夏季ボーナス支給状況)

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
10年08月03日 | Category: General
Posted by: nishimura
労働条件(特に賃金、労働時間)を不利益に変更する場合の留意点

1.労働条件の不利益変更とは何か?

 今まで行われてきた労働条件を、会社が一方的に不利益に変更することは、既得権の侵害として原則許されないという考え方が確立されいます。特に賃金や労働時間などの重要な労働条件の変更に関しては、出るところへ出て判断を仰ぐこととなると、かなり厳格な要件が求められます。
 これは長らく判例法理の世界で処理されておりましたが、平成20年3月から施行された「労働契約法」第9条、10条において、実定法の中に条文化されました。おおよそ簡単に言うと、以下のモノサシに基づいて、その有効性が判断されることになります。

1)労働条件の変更によって労働者が被る不利益の程度

 特に賃金に関して、生活を脅かすような著しい減額になっていないかということです。私見ですが通常の勤務を続けて、10%以上減額になる場合は、よっぽど合理的な理由がなければ厳しいでしょう。勿論、10%以内ならOKというわけではありません。

2)会社側の変更の必要性の内容・程度

 直ちに倒産の危機が迫っているなどの緊急かつ重大な事由がないといけないというものではありません。要するに第三者から見て、誰もが一応納得できる理由がなければなりません。非常に予測可能性が低い部分です。

3)変更後の労働条件の内容自体の相当性

 つまり変更内容自体が、あまりに無茶じゃないか、ということです。例えば、頑張り次第では今までより倍の給与になるが、普通の勤務なら最低賃金程度の給与にしかならない、というような制度にした場合などが分かりやすいでしょう。いくら上がる可能性もあるといっても、少し無茶ですよね。

4)代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況

 これは例えば、確かに賃金は下がるが、その一方で労働時間が短縮されている(代償措置)とか、変更後の制度から5年以内は新旧制度の有利な方を採用するなど(経過措置)を取っていれば、不利益性が弱まるということです。比較的判断がしやすい部分です。

5)労働組合または労働者との交渉の経緯

 ある日いきなりバサッとやるのは駄目です。仮に合意に至らないまでも、ある程度の時間と手間を掛けて、労使が真摯に話し合い、説明をし、納得させる努力をしてきたかが問われ、これも比較的判断がしやすい部分になります。

6)他の労働組合又は他の従業員の対応

 不利益な変更を受けない者、または受けるとしても甘受している者など、要するに紛争になっている労働者以外の者は、どのような対応を示しているかということです。当然、会社に理解を示してくれている状況が望ましいです。

7)同種事業に関する我が国社会における一般的な状況

 例えば、業界の水準に比較して会社の経営を揺るがすような過度な待遇を是正するとか、時代の要請に合わせて年功賃金を能力主義賃金に変更する必要があるとか、世間の状況と比較してどうかという視点です。

 非常に荒い説明ですが、これらは個別にクリアしなければならないという個別要件ではなく、あくまでも判断要素であり、総合的に判断されることになります。つまりある要素を満たしていなくても、他の要素で大きくカバーすることも可能ということです。


2.不利益変更には3つの方法がある

 一般的に以下3つのやり方があります。

1)労働組合と労働協約を締結して行うこと

 労働組合の執行部と合意して、協約化できれば、その組合に所属する労働者は例え、個別に異議を唱えても、包括的に拘束されます。ことさら特定の個人を差別するようなものでなければ個別同意を取らずに、一気に不利益変更ができます。

2)個別同意を取る

 一番安全なやり方です。当然、書面で同意書を取ります。

3)就業規則等で一方的にやる
 
 もともと会社に一方的な制定権のある就業規則を改定して、労働条件を使用者サイドで変えるもので、これがいわゆる不利益変更法理に照らしてどうかということで問題になりやすいケースです。勿論、個別の従業員が同意(納得)していないで、紛争状態になったケースのことですが。逆に言えば、文句が出なければ、強行法規違反(最低賃金を割るとか)でない限り、問題にならないとも言えます。しかし、表面的に不満を表明しないから不満がないと考えるのは尚早です。不満は放置すると、蓄積するものだからです。

 経済情勢の厳しい折、どうしても誘惑に駆られることもあるでしょう。しかし、悪魔のささやきが聞こえたら、是非ご相談ください。慎重な対応が必要です。

文責 特定社会保険労務士 西村 聡
もっと見る :http://www.nishimura-roumu.com
10年06月30日 | Category: General
Posted by: nishimura
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