08年01月01日
■賢い経営者は、“機会損失”的な発想ができる
●“機会損失”で考える経営者は伸びる
発想がやや頑固なケーキ屋さんが、商売不振で仕方なく、Kさんの助言に従った。
「餡(あん)に、泡立てた卵白を練り込みなさい。それをカステラ生地で巻くんです。巻いたら表面にパン粉の細粉を振りかけ、バーナーで焼き上げます。こんがりと焼きます・・・」
仕上げてみたら、しつこい甘さを避ける客までが、「餡がとてもソフトで・・」といって、じつに評判がいい。口コミで次第に売上は、上昇ラインを描くようになり、1年もすると、対前年比で、“売上高は450万円も上乗せ”になるという結果が証明された。
そこでケーキ屋さんははじめて、人の話を聞くことの大切さを痛感した。
しかし残念ながら、このケーキ屋さん、まだまだ思いが浅い。
貴重な教訓として、今後の経営に前向きに生かす人なら、このように考える。
「Kさんは3年前から、同じことを言ってくれていた。もし3年前に実行しておけば、借金を作ることもなく、少なくとも3年前から、いまの売上高を確保できたはず。
そういう意味では、毎年450万円ほどは得られたはずの儲けを、3年前から損してきたのと同じではなかろうか・・」
この考えを、“機会損失(チャンスロス)”と呼ぶ。
しかし多くの場合は、「自分は、こうやって儲けてきた」と思う人が多く、「あの方法を取り入れていたら、毎年○百万円に近い損失を出さずに済んだかも・・」という、チャンスロス思考の人は少ないものである。
●“機会損失”は賢者の経営法則
“機会損失”(チャンスロス)の考え方は、謙虚さと反省心の乏しい人には、多くの場合望めない。
優れた経営者は人の知恵を生かし、次に優れた経営者は、自分だけの知恵で仕事をする。限界に早々と突き当たる経営者は、人の知恵を排し、自分の汗で作業をするものである。頭を使わず体力を使うような経営は、早々にダメになる。
ある会社では、役員でもある主要支店長のT氏が、しょっちゅう外出をする。外出そのものはいいが、連絡がとれない。
だから事務所では、これまたしょっちゅう、「支店長はあいにく留守でして・・」と困惑応対をくり返す始末。非常に次元の低い、機会損失を続けている。
この種の機会損失は、損失の原因が自分にあると気づかないから、非常にタチが悪い。
甘い2代目のぼんぼん社長が、先代社長(父親)が遺した遺産で、ホームセンターを開業した例もある。朝の開店前にセンターに行き、びっくりした。
出入口に近い、買い物に便利な駐車場7,8個所に、すでに駐車した車がいる。
調べると従業員のものだ。驚いて、「従業員は駐車場は、いちばん遠い端っこだ。ここはお客さま専用だ・・」と、叱るようにして指導したが、肝心の社長は、このことを知っても、従業員になにも言わない。
お客さまからは“購買チャンス”を奪い、結果としてセンターは、“機会損失”を招いているという自覚が、無いのである。
こんなセンターが、お客さまから支持されるはずはない。