◆馴れない仕事をやると、疲れがひどい人
 「馴れない仕事をやると、とても疲れる」という人は意外に多い。Nさんという人が、嘆いていた。「馴れない仕事をしているから、疲れて疲れて…」
このNさんのように、「馴れない仕事は疲れる」という人は、たぶん“変化を好まない人”ではなかろうか。
 ということは、オフィスの机や椅子のレイアウトを変えられても、落ち着かないので疲れる。人事異動が行なわれ、メンバーの一部が入れ替わっても、新しい組織の空気に疲れる。
自宅でとっている新聞も、もう5年以上同じで、読み馴れた新聞を替える気はない。
 ある会社で、本社の係長から支店の課長に転勤になったKさんという人がいた。そのK課長が、「私は本社で長い間、社会保険を担当してきました。あの保険関係の仕事を、今後も続けたいのです。会社も私のように、仕事に馴れた者が担当したほうがいいと思います。
このKさんなどは、馴れない仕事は疲れるどころか、“馴れない仕事には手がつかない”というタイプだったみたいである。
 結論として、“馴れない仕事は疲れる”という人の多くは、“新しいことをやると疲れる”ということではないのか。そういう人に、創造力が働き、開かれた未来が訪れるのだろうか。果たして、そういうことでいいのだろうか。

◆新しい仕事だから、“幸せ”を感じる人
 先に紹介したNさんやKさんのように、馴れないことは疲れる、ということは、新しいことには興味や関心は向かない、ということではないか。言い方を変えれば、過去の価値観のみで現代を生きている、ということになりはしないか。
 以前、俳優の児玉清さんが語っていた。「ぼくの仕事というのは、過去に経験しない新しいことが多いでしょう。この、いつも新しい仕事がやれる幸せ、これがありがたいんです。ほんと幸せなんですよね!」
 「馴れない仕事をやると疲れる」ということを、よく感じる人の思考は、“退廃的な思考”と言える。
ある会社の50歳以上の採用面接で「自分はこんな仕事をしてきたので、似たような仕事を希望する」と、ほとんどの人が語ったそうである。「心機一転、青年の気概で何でもやります…」。こんな気概人間はゼロだった。
 何ができる、というのではなく、何をやるべきかを語る人が、めっきり少なくなったように思われる昨今です。