●鯉のぼりは経営の知恵
 サンフランシスコの街で低層ビルだがおもしろい建物があるという。
 どんなビルかというと、1年365日、1日も欠かさず屋上に、鯉のぼりが揚がるビルというのだ。でかい鯉のぼりが赤と黒の2匹、4階建ビルの屋上で天空に舞っている。
 このビルのオーナーが日本を訪れ、鯉のぼりを見て惚れた・・というのである。
 さて、愛媛県下の、ある自動車整備工場のことである。
 この工場の、奥の土手側を除く三方の敷地には、約15本の鯉のぼりが、天空にはためいている。もちろんそれらの鯉のボディには、<○○○自動車整備工場>の文字が描かれている。
 いつの間にか周囲は、「鯉のぼりの整備工場」と噂するようになった。
 そして、こういう口コミが広がるにつれて、持ち込まれる整備車両も増えていった。当然売上高も増え、商売繁盛という結果に結び付いたことは言うまでもない。
 やがて、連れられてやって来た子供たちにあげる≪ミニ鯉のぼり≫が提案され、いまは小ちゃい≪ミニ鯉のぼり≫が宣伝効果を押し上げている。
 いつの間にかこの工場の特色は“女性ドライバーの客が多い工場”ということになっている。ということは、軽自動車の整備が多い、ということである。

●ランドマーク戦略は、応用範囲が広い
 ある日、整備工場の以前からの客である八百屋の旦那が、工場の社長に相談を持ちかけた。
 「あんたんとこの敷地は広い。あの隅っこでいいから、“生産農家の直販・朝採り野菜”という看板を出させてもらえんかね・・」
 たしかに敷地は広い。空き地のまま遊ばせておくよりいいかも・・。そう思った社長は了承した。準備万端整え1週間もすると、工場敷地の一角に野菜の即売所も営業開始。
 いまでは主婦たちに大人気で、野菜を買うだけのためにこの工場にやって来る主婦も多い。
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 この“鯉のぼり作戦”を普遍化して、≪ランドマーク戦略≫と呼んでいる。ランドマークとは、“陸標”のことだが、簡単に言えば“陸上の目じるし”ということである。
 御社が小売り業やサービス業だったりしても、この≪ランドマーク戦略≫はお役に立つはずである。
 要するに、「いつも鯉のぼりが揚がっている会社の前で・・」というように、何かの目じるしに使われるようになれば、それはとりもなおさずパブリシティ効果に繋がったのだ。
 (★パブリシティ=広告宣伝費をかけないのに、広告宣伝的な効果が現れること)
 ≪ランドマーク戦略≫、なかなか応用範囲は広い。ご活用を工夫なさってはいかがですか?