江戸商人を作った西川如見の「商人嚢」は、永久の鑑。原文のまま紹介しよう。参考にどうぞ。
●長者二代なし
長者二代なしというは、必ず一代にてほろぶというにあらず。
一生辛苦を積み、やうやく富むといえども、子孫に至りそれは華奢風流になり行き、奢る心出できて、財宝を失うをいうなり。
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ある所に〇〇商店があった。商店の称号にかかわらず、商売は大きく発展し、いち早く「生コン」の時代を見抜き、この地方のゼネコンにも幅を利かせていた。
しかしこの社長は、息子だけには目がなかった。
東京のM大学に入った息子は、勉強そっちのけで、遊びに夢中になり、人の道は何も学ばず、人の心を踏みにじるようなことばかりを身につけ、やがて学業を終えた。
時は不運を運び、先代の社長が急逝した。
あとは黙っていても、社長の椅子が息子に回ってきた。
それから十年。〇〇商店の名はない。倒産したのだ。いや、この馬鹿息子が食い潰したのだ。ちょうど三代目だった。
「売家と唐様に書く三代目」にぴったりである。