メンタルヘルスという言葉はどうも軽く受けてしまいがち。しかしその実体は、言葉の印象に反して、非常に重い。

自殺:原因は上司の暴言 「パワハラで労災」初認定−−東京地裁   ◇「居るだけでみんなが迷惑」「給料泥棒」


≪係長の発言について、判決は「キャリアばかりか人格や存在を否定するもの。男性のストレスは通常の上司とのトラブルより非常に強かった」と指摘。遺書に記されていたことも踏まえ、係長の発言で男性がうつ病を発症したと認定した。≫

なぜ仕事上のことで、「人格や存在」が攻撃されるのかが最重要課題。当会社が終身雇用制であり、社会ルールよりも自治ルールを優先させていた空気があったということです。ちなみに、最近リンチ事件が注目されてきてますが、現行のやり方では防げません。防ぐどころか、追い風なのです。
(自治の尊重は所謂「昭和文化」の代表的なもののひとつで、労務管理でいうところの「ザ・インフォーマル」にあたります。明治、戦後に日本は急成長を遂げましたが、それだけ日本は粛清能力の高い国だということです。ただし、この粛清は特定の指導者ではないかたち(藩閥、軍部・官僚、隣組)で行われた故に、日本にはファシズムがないと分類されていることが多いようです。それと、戦争末期において-総力戦という国際的条件もありましたが、農民や学徒等を十分な教育訓練する余裕もなく、とにかく秩序形成を早期に完成させようとしたところから「軍隊教育」=シゴキ等)がはじめられました。それまで近代軍隊であったところ、にわかに前近代的=村落共同体的な合理性に欠けた組織になってしまいました。少なくとも、近代的組織のまま戦後を迎えたであったならば、こうした後ろ向きの企業組織状態は少なく生じたものであろうと思われます。)

≪◇静岡労働基準監督署の話
 今後の対応は、判決内容を検討し、関係機関とも協議して判断したい。≫

監督行政と裁判所とでは、アプローチの仕方が異なります。監督行政は判例、学者の判断指針当に基づいて一律的な認定ができるような体制を整えていますが、裁判所は具体的な事件について審尋してあらためて理論的に組むという姿勢です(類似事件については人事制度に連なる前例主義という点もありますが)。よって、今回の判例を、監督行政の用いる判断指針に組み込む作業を検討しはじめていると思われます。