4、労働基準行政の機能不全

《もともと労働基準法は、違反事業に刑事罰を課すことで法定最低基準の実現を図るものだが、予防的効果は別として、具体的な労働者の救済としては事後救済にとどまる。最低基準の遵守、とくに長時間労働の根絶や労働安全の徹底には労使協力による現場における理解と納得の促進が決め手となる。労働基準監督署によるチェックには限界があり、企業内で労働組合が機能していなければ、違反の根絶は不可能である。》

労働基準監督署は言ってみれば労働警察署であり、企業内の労務管理コンサルタント的役割をもつものではない。また、刑事罰を課しただけでは、民事問題や労務管理の問題は根本的に解消されるものではない。
そのため労働契約法において当初労使協議制が懸案されていたが、実現せずに終った。
《実効性のある実施のメカニズムが脱落したところで、法規制をいくら強化しても現実は変わることはない。この穴を埋めるには、CSR(企業の社会的責任)など民の発想によるコンプライアンスの推進が必要となってくる。》

私は労使協議制が法定化されたとしても、それだけではまだハコの状態であり、ハンドルもエンジンもタイヤも駆動軸もミッションも何もないのでやはり実効性はなきに等しいだろうと考える。
花見氏の語=民の発想による労務管理の推進のためには、本格的なテコ入れが必要であろう。