「名ばかり管理職」というやや字余りの奇妙なネーミングが取り上げられている。
「労働基準法第41条第2項管理監督者」問題として社会保険労務士なら、空で処理してしまえる労働問題の定番である。かつて銀行において横行していた不正慣行である。

深刻なのは、大手一流企業が敢えて法違反に走っているということなのである。大手企業の従業員の質が落ち、そして貧民根性から(大手がまかり通るなら我も‥‥)という悪循環である。

最善の問題処理は、経営者相当にふさわしい高給を与え、労働時間に関し裁量を与えることでしかない。そのような処遇を与えるべき者が実際多いようである。

確かに、「労働者」と「経営者」との境界のクロスゾーンは広くなっている。身分としては労働者だが、職務内容はほぼ経営者といってもよい者が増えた。一つの職場でランクアップする人事環境なので、上役が定期的に変更するような欧米型もしくは公務員型とは異なり、クロスゾーンは自然と広まる。年功型風習も健全なだけに、実際の経営者も彼らが頼みである。

ただ、このことと裁判の仕方とはまったくスリ合わない。
「従業員としての地位確認」「月額賃金50万円の支払いを求める」という趣旨の請求は、なかなか広いクロスゾーンの者にとって抵抗がある。こういうものと割り切るしかない。労務管理の方の流れとしては、労働者という身分は重視せず、契約内容を重視する傾向が強まっている。
その会社の昇進昇格人事、勤務期間の長短、入社経緯、仕事内容の性質、などから「労働者」の定義を個々個別に出していかなくてはならない。