初めて電話をする人に対しては、まず名乗り上げを行う。これがマナーである。

ところが、相手側は何の用件でかかってきたかに気を使っているため、用件の方が実は肝心なのである。用件を聞き、自分にどういった関係のものであるかを判断する。そして、誰からかかってきたかについてはもはや覚えていない。覚えていないというよりも記憶していないのである。
この状態のとき、相手側は電話をかけた者に対してあらためて誰何しなければならない。そういう手間をとらせる点で、やはり順序的にマナー違反が濃厚である。まして普通の感覚であれば、既に受話器を置いてしまっている後である。

したがって、最初の名乗り上げは無論正しいが、用件が済んだ後あらためてまた名乗り上げしない場合は正しくないということである。たいてい、必死の頼み事であれば確実性を期すため、「〇〇までよろしく」と最後締めくくることになろう。弱いお願いの場合、よく失敗するというのも道理である。ビジネスその他組織行動の場面では、あまり気乗りのしない企画などで、相手側との連絡関係があやふやになる可能性が高いということである。
さらに、帰属意識の問題が絡む。組織行動においての参加意識の問題である。現代日本企業社会においては帰属意識を薄くする傾向がむしろ経営側に強く、それが従業員に移っている。それで契約関係といった法律がクローズアップされてきた。さらに、労務管理理論がバブル以降の日本社会に対してついていけなくなったという反省もある。結局、今言えることは、法的関係を突き詰めて言った後、フィットした労務管理理論がぼつぼつと出てくるだろうということである。法律関係の彼岸まで見通せたら、足元を見ようとするものである。