年金制度に関する検討書である。正式に決まってないものを押さえるのは徒労でもあるが、厚労省担当者と権威者(学識者)の考え方を知るにはよいし、改正運動の流れもわかってくる。

社会保険審議会年金部会におけるこれまでの議論の整理平成23年12月26日

年金制度の目指すべき方向性と現行制度の改善項目との関係
① 働き方、ライフコースの選択に影響を受けない、一元的な制度
(パート適用拡大)(2階建て部分の一元化)(産休中の保険料免除)(第3号被保険者制度の見直し)(在職老齢年金)(標準報酬の上下限)

② 単身高齢者、低年金者、無年金者に対して最低保障機能を有し、高齢者の防貧・救貧機能強化
(受給資格期間のに短縮)(低所得者層への加算)(高所得者の年金額調整)

③ 財政の安定等
(基礎年金国庫負担1/2の恒久化)(マクロスライド)(支給開始年齢)


優先すべき事項
(1)(基礎年金国庫負担1/2の恒久化)
平成21年より1/2負担となったが、臨時財源であり、安定した財源をあてなければならないというもの。

(2)(受給資格期間のに短縮)
・おおむね10年が妥当というもの。ただし、40年強制加入は揺らがず、したがって10年だけ払えばいいという解釈を危惧するとのこと。
・改正法施行後に限り有効なものとし、遡っての適用はないとするもの。(現行無年金であるが、10年の期間はある場合、あくまでも改正法施行後から受給権が発生するということであろう。)

(3)(低所得者層への加算)
生活保護に陥らせないという観点。*「創設」部分という考えである。

(4)(高所得者の年金額調整)
年金においては財産権の制約を受ける点については異論がない。ただし、どれくらいの制約を受けるかについて慎重に図らねばならない。なお、所得補足の仕組みや年金課税についても検討し、社会保障と税共通番号制が必要である。

(5)(特例水準の解消)
物価が上下した場合、それに連動するのが年金の物価スライド制であるが、政権の政策により、過去の物価下落分通算2.5%を年金に反映されていないまま来ている。そのため、約7兆円の「払いすぎ」が見込まれる。


1.(産休中の保険料免除)
育休期間の免除を産前産後にまで拡大というもの。

2.(パート適用拡大)
かえって未適事業所が増えることへの危惧。

3.(2階建て部分の一元化)
まず、厚生年金と共済年金の制度的な差等を解消するというもの。

継続的に検討すべき課題
い.(第3号被保険者制度の見直し)
複雑になるため、まずパート適用そして配偶者控除の見直しを進めるというもの。

ろ.(マクロスライド)
保険料を上昇を抑え、人口の減少と寿命の伸びの要素から給付水準を決めるものであるが、デフレ下では適用しないこととしているため、まだ発動されたことがない。特例水準の解消を踏まえて引きつづき検討するというもの。また、名称をもっとわかりやすくするというものとか。

は.(在職老齢年金)
就労抑制として働いているかどうか、さらに分析を進める。なお、60歳前半の年金は今の世代だけのものであるという点。

に.(標準報酬の上下限)
・健康保険に比べると報酬月額の範囲を狭くしているため、所得再分配機能を狭めている。また、パート適用するにあたっての下限についても検討すべきである。なお現在の経済環境を踏まえて企業の負担増は慎重に行うべきである。

ほ.(支給開始年齢)
企業に対し高年齢者雇用確保措置をさらに強く義務付ける改正を行う。
・現状の国民の年金制度への信頼を考えれば、議論すら無理である。

その他
(遺族年金の支給対象範囲)
男女格差の解消。