第二節 職務を行い得ない事件の規律
(職務を行い得ない事件)
第二十七条 弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
四 公務員として職務上取り扱った事件
五 仲裁、調停、和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手続実施者として取り扱った事件
(同前)
第二十八条 弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同意した場合、第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。
一 相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹又は同居の親族である事件
二 受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件
三 依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
四 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件

以上の規定は、各隣接士業がそれぞれの領域の紛争解決についての代理権が付与されるにあたり、各士業の規定において類似の規定が置かれるに至る影響を与えたものである。
言葉遣いが難解で混乱を来たすものであるが、要は一方の秘密を知る者は、もう片方の味方になれないということである。信頼されなくなるためである。図式そのものを禁じたという点で慎重である。

ところで、法律上の債務者、債権者というのは無数にあるわけで、よほどのことでなければ、両当時者双方に関わることもあるまいと思われるが、労働事件に関してはそうでもない。特に使用者側、労働者側の団体に参加していない者であっても、いざ当事者の企業名などチェックすれば、たいてい相談を受けられないという状態が多い。したがって、やはり使用者側、労働者側いずれかの依頼に偏らなければやっていけないということである。労働事件という性質そして絶対数が少ない上にさらに扱う者が少ないわけであるから、偏らなければ「行い得ない事件」ばかりになってしまうわけである。確かに社労士の活用が急がれるが、社労士はあともう少し民亊訴訟法等の補強が必要である。