パワハラに関する調査報告書

このところ、厚労省はパワハラに力を入れている。確かに、セクハラというのは本来、痴漢もしくは強制わいせつというのが本質であり、条例違反もしくは軽犯罪として扱われるべきものがたいていである。したがって、それは業務とまず無関係な内容である。それは、組織における上下関係を奇貨として生じる性関係でしかない。そして、会社はかつてほど性犯罪者に対して、幇助しなくなってきた(というか、「性犯罪者」という見方自体が日本の会社が変化したというものである。)。よって、「セク」の部分はそれ自体独立させて解決すればよく、会社では、残りの「ハラ」という問題について扱うことになる。

たぶん、セクハラの事件が、「ディスクロージャー」(映画)のように、女性上司によるセクハラが提訴され、また同性どうしによるセクハラが提訴されだしてからが、セクハラのイメージが修正され、かつパワハラという言葉が巷で呼ばれて、そしてセクハラがパワハラの一形態に収まった経緯であると思われる。環境型セクハラという間接的な認識の仕方がセクハラにはあるが、この認識は専ら会社の配慮義務に落とし込む作業に必要なものであるから、直接のハラスメントというイメージからやや遠い。

さて、調査報告では、表7の内容に関心が行った。セクハラと異なり、パワハラは業務遂行の過程で行われることがたいていである。私が書いたシナリオがあるが、それは万年、成績の悪い部署へ、社長がキレ者の部長を異動させたところ、その部署の社員の一人が半年後に自殺したという内容である。表7では、コミュニケーション不足と軟弱な若者という項目が該当する。なお、たいてい自殺する者は転職したことがなく、学校卒業後自殺するまで同じ会社で勤務している者のように感じられる。
整理解雇やリストラなどの噂が立つ会社では、同僚を含め、自分は免れようと、全員が敵となる。仲のよかった者どうしも反目するものである。こういうところに毎日勤務することは相当なストレスである。無論、だからといってこの段階では労災事案にはならないものだが(皆が皆その危険を現実化しているものではない。したがって特定の出来事がない限りは難しい)、そうした環境ではパワハラが繰り広げられるだろう。


犯罪被害者の方々のための休暇

見慣れないものであるが、こうしたものについて経営者はうんざりするのがたいていである。またひとつ新たな要求が出てきたかと。あたかも団交項目に対するかのように。
具体的には、個々の会社とその従業員との関係により、実現したりそうでなかったりするもので、難しい分野である。「権利ばかり主張するようになった」のと逆に「負担ばかり要請する」ということであろう。
厚労省は戦中に内務省から独立した機関であるが、タテワリ行政と相俟って、象の皮膚を撫でるにとどまり、それ以上踏み込むには今ひとつ変革を要する。
かつて国家が労務管理に介入した論理は、武器等の製造や銃後生活のための「産業兵士」という概念をもとにするものであった。せめて「平和目的」という概念によってでも、労務管理に踏み込めるという機関である必要がある。そうでないので、会社は「負担の要請」としか受け止めない。なお、かつては国家が、軍事会社に限るが、間接的に経営に介入した。よって、現行は、会社と従業員の個々の関係において如何となる。しかし、少なくとも、地道に国民と会社と国家との関係の調査、その分析、そしてグランドデザインその他の蓄積は用意しておくに越したことはない。