「全社メール」で部下をしかり飛ばす上司

《ある上司は部下に対する厳しい叱責の言葉をつらねたメールを全社員にわかるような形で流すのだという。つまり、その部下を激しくしかりつ けるメールを送るときに、わざわざ全社員に流れるメールアドレスをCCに入れて送信するのだ。しかも、部下が反省の意を示すメールを上司に送るときも、全 社員にCCをつけたままメールしなくてはならないそうだ。》
《法律的には、ちょっと難しい言葉になるが、「不法行為」や「安全配慮義務違反(職場環境配慮義務違反)」にあたるかどうかが問題となり、それによって、「上司や会社に損害賠償責任が発生するかどうかを検討する必要があります」。》

「不法行為」「債務不履行」の条文は民法のもので、それを労働事件では解釈によって読み替える。
「不法行為」は公害事件などで適用されるように、「市民」法としての発想をもつ規定で、会社の上下関係など無関係に取り扱う。人間の行いとしてどうなのかという視点。
「債務不履行」は契約関係にある当事者間において、それぞれ権利と義務が生じており、その内容はケースバイケースである。明記されたもの以外に、その契約内容によって当然生じるであろう権利あるいは義務、上記の説明では、上司や会社に「安全配慮義務」(職場環境配慮義務)という義務があり ― 労働契約法に概念が規定されている ― 、その義務が履行されなかった即ち労務管理としてどうなのかという視点。

私は、「教師と生徒」問題と「上司と部下」問題とある程度同じ型にあるものとみている者である。教師も上司も平凡な人間にすぎず、それほど卓越しているわけでもない。また、自分が生きてきた世の中と今はかなり変化しており、したがって自分のやり方が通用するかどうか不安なのである。おまけに、生徒も部下もハナから自分のやり方とは合わないことがわかっている。しかし、どうしていいか思いつかない。
よって結論は、労務管理技術の不足ということになる。
有識者も、とりあえず法的な話に止まり、労務管理の言葉は持ち合わせていない。ないというわけではなく、管理手法は個々に適応したものであるべきで、社会的に対応したものにはならない。尤も、指導の場において、「憎しみ」が持ち込まれている点は共通するポイントであるため、社会的な言葉でも可能な要素ではあるが。
全員にある者の失敗を知らしめるということは、ナレッジマネージメントという情報の共有化であり、無理に英語を使わないとすれば、日本語で「見せしめ」「生きた教材」ということになる。ここに「憎しみ」を取り除き、「個人情報」に配慮すれば、有効で有意義なものともなろう。
なお、「憎しみ」を持ってしまい、なかなか取り除けないという人間的弱さが、パワハラをする側に顕著に見られると指摘しておく。