社会保険労務士法改正法案の成立に関する談話

下記は抜粋、全文は上記にアクセスして確認できます。

≪1、労働組合活動の現場から、社会保険労務士(以下「社労士」)が団体交渉等に不当に介入することで正常な労使関係を損なう事態が生じているとの声があがる中、社労士の業容拡大のみを認める同法案が成立に至ったことは問題である。≫の箇所

社労士が団交の席に出る場合、代理人となることは弁護士法違反になる。
「不当介入」「正常な労使関係を損なう」については個々の事案での問題。

≪2.また、社労士の試験科目には個別労働紛争に関する科目が設けられておらず、対審構造に基づく訓練も行われていない中、特定社労士のみならず全ての社労士まで労働関係事項に関する補佐人業務を認めることは極めて問題である。≫の箇所

個別労使紛争に関する科目については、社労士試験とは別に、特定社労士に対応した研修と試験がある。そこからは個々の研鑽が中心になる。
補佐人業務については、「紛争解決業務」ではないため、特定社労士に限定されるものではない。「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項」という社労士の一般的業務についての補佐業務である。
当然、裁判所の許可を不要とした分、適正な補佐業務かどうかの注目を浴びるわけであり、また社労士のもつ実務知識が訴訟の場で展開される機会が増えるものであるから、労務管理、労働社会保険諸法令に関する実務手続きの適正化、公正化の普及に資するはずである。

まだ法律が成立したばかりのため、推移を見守るほかないが、社労士=使用者側それも使用者の手先という見方がまだ強いようだ。そういう社労士像からの脱却のためには、士業としての独立性をもち、それが公正性の担保となる。訴訟の場で補佐人として陳述するということは使用者の手先であるわけにはいかない。使用者へ指導するということを本来目的とする士業像がそこにあると考える。したがって、寧ろ、どんどん公けの場に出さなければならない資格であろう。
なお、個別紛争業務においては、労使ともに特定社会保険労務士に依頼するケースも多くなっている。使用者側の手先の社労士だけではない。また、社労士で構成する研修団体においては、労働弁護団所属弁護士も招いているし、ユニオン執行委員も招いている。これも紛争解決業務に参画できるようになってからである。そういう流れへと変化しているわけであるから、社労士=使用者側の手先というガチガチの見解はそろそろ溶いてもらいたいと願うものである。さらに、手先としてではなく、公正な手続き、労務管理の適正のために社労士と契約するという経営者も珍しいことではなくなりつつあるという変化もみられる。そういったわけで、実効的なことは何も出来ないショボい資格に社労士を閉じ込めようとすることは得策ではない。倫理の強化、紛争処理業務の研修整備など課題は無論少なくない。