残業代ゼロ検討指示 首相「時間でなく成果で評価」

《安倍晋三首相は二十二日、政府の経済財政諮問会議と産業競争力会議との合同会議で「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい、新たな労働時間制度の仕組みを検討してほしい」と労働時間規制の緩和を検討するよう指示した。》

《産業競争力会議の民間議員は、国が年間労働時間の上限を示し、従業員の健康への配慮措置を設けた上で労使合意により対象職種を決める方式と、年収が一千万円以上で高度な職業能力を持つなど「高収入・ハイパフォーマー型」の労働者を対象とする方式の二種類を示した。》

ずいぶん前に、年収一千万という基準で議論されていたところ、それに加えて労使合意のタイプが議論に上っている。やはり議論をしている者にとって後者が本命だったんだなと思う。
正社員からパート、オルバイト、派遣といった非正規労働の活用もほぼ天井とみて、次なるコスト削減策とみる。昭和の労働分配率はかなり高かったが、今やおよそその半分くらいか。

「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい」という表現をまともに首相は受け止めているような感じなので、国内情報収集体制の劣悪さがみえてしまっている。その貧弱な情報能力で国を動かそうとするのは迷惑である。周りにいいように扱われている首相としか思えない内容ばかりなのでそうでなくなってほしい。
・多くの者がすぐに反対表明したように、現在労使関係において信頼関係は薄くなった。したがって、昭和時代のような一家状態にはない。よって「契約」が今の労使関係のすべてであり、政治的な措置で操作できうる状況ではない。
・成果での評価をどうするかは能力主義賃金において誰も解決できていない課題であるが、それを見過ごして進めようとする思考の欠陥。
・時間外賃金不払いは現在大きく占める労働問題であり、それを解決してからでなければ前に進むべきではなく、不払い制度を作って解消させようとするのは道理ではない。

一家主義の昭和時代、労働問題は方便がすべてであった。現在労使間の信頼関係崩れ、方便は否定され、私法での解決が進んでいる。司法的な考え方が職場や斯界に根付いてきつつつあるところなのだが、それに抵抗する者の運動という図式がここにあるようだ。
労働問題は、「成果」の評価の課題からいっても、政治的な問題ではありえず、職場の関係の問題に終始する。立法で決められる対象ではなく、それが政治の限界である。