昭和 23年10月米國社會保障制度調査團の報告書

(占領目標)
≪社會保障制度調査團報告書は、日本國民に、社會保障の健全なる基礎を提供するための援助を行ふべく、連合軍・極東派遣軍最司令部關係各部局、並びに日本政府關係各官廳及び係官の、研究・分析のための參考文書として、受納せられた。民主々義思想に基き、國の資源の範圍に於て、日本に廣汎にして且つ適切な社會保障制度を保持する事は、承認せられたる占領目標である。≫

占領目標ということもあってか、奥行きの深い設計と感ずる。

(民主主義)
≪與論の支持に依る社會保障制度に依り、個人が、滿足し得る程度の生活標準を維持して行く事が出來るならば、政府並びに一般社會に對しての信頼は、一層強められる事になるのである。
 社會保障立法は、又、自主性を發揮し企業を盛んならしめるに適切な環境を造り出す効果を持ち、從つて、民主々義の重要な要素となるのである。かゝる立法が、豫期し得ざる出來事に際して個人を保護するが故に、個人自らの勤勞、或ひは企業の結果が保護せられる事となり、平等の立場に立つて家事し、勤勉に努力し、自らの能力と腕前を充分に發揮する事は、無駄ではないものだと感じる樣になるのである≫
≪全般に亘つて、非民主的制度に依り、與論に依るに非ずして政府の權威に依り運營せられ來つた。之等の制度を、事務機構並びに本質的給付の面から再編成する事に依つて、現存せる社會保險諸施設をより有効に使用すると共に、日本經濟を健全なる基礎に置く事の一助ともなり、且つ又、民主々義制度を確立する結果ともなるであらう事は明らかである。≫

医療給付を全額とすることや制度統合など注意すべき勧告もあるが、ここで大切なのは「民主主義」(思想)確立のために不可欠な制度だと考えられている点である。現在のアメリカは考慮しないとしても、やはり現行の日本制度にはバックポーンとしての民主主義の念押しが欠乏しているとみるべきだろう。